夏子から、夏子とは藤沢さんの下の名でこの頃は「夏子」と二人の時は呼び捨てにしている。
夏子から電話があり、貴方に逢わせたい人がいる、出来ればこの人とも付きあって欲しい、とのことで今晩また、夏子の団地へ向かった。
薄汚れている団地の建物の2階の、夏子の部屋のベルを押す。
「はーい」と夏子の声が聞こえ、すぐにドアが開く。 玄関には、女物の履物がきちんと置かれていた。 相手の人は来ているのか、今日逢うことになっていたかなぁと思いながら、夏子の後をついて、いつもの居間に入る。
相手の人は座卓に座っていて、夏子と年齢も体形も似ていて、私も座って挨拶をして目を上げると、顔も似ている。 双子かなぁと思うほどであった。
この人春子さんというのだけれど、おしゃべりしているうち、貴方の事をしゃべってしまったの、そして紹介してと言われ、貴方に相談せずに、今日になってしまって、ごめんなさいと言う。
相手がいる事で何も言えないでいると、春子さんが口を開き「ご無理を 言って ごめんなさい」と謝られ、いえいえと言うしかなかった。
春子さんには、まだ旦那さんが健在で、しかし夫婦関係はもう全然無しという事であった。 夏子も追いかけるように、私もそうだった、この人に逢わなければ、女の歓びを知らずに死んでいくところだったと、言う始末である。
女性も、50才を過ぎると赤裸々に直接言うものかと、二人の顔を見る。
座卓を挟んで、私が一人、夏子と春子が二人で話しているのだが、急に夏子は立ち上がり私のそばに座り直すと「貴方 キス して」と言い、私の頬を挟むとチュッとしてくる。
「春子さんも こっちへ 来て したら」と春子へ声を掛ける。
「私は いいわ」
「なに 言ってるの そのために 来たんでしょ」
今までの、あの上品な夏子には合わない、行動と言葉であった。
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