火曜日の夕方、夏子の自宅を訪れた。
古い団地の建物の2階、呼び鈴を押すと、玄関の重い戸が開き夏子が笑顔で迎えてくれる。 もう、ここを訪れるのも10回は越しただろうか。
靴を脱ごうとすると、女物の履物が揃えてあった。
「あっ 春子が 来ているの」と夏子は何気なく言う。
(夏子と二人じゃ なかったのか)
キッチンに置かれたテーブルの向こうに春子は座っていて春子のほうから挨拶され、私も挨拶を返した。
こちら側に夏子と私がすわる。
コーヒーを飲みながら「春子さんは・・・・・」と言う私の声を遮り、夏子が口をはさんだ。
「実は 私と 春子は 双子なの」
以下は夏子が往った要約である。
『双子で生まれた二人の名前を、親はあわてて、逆ではないけれど、姉の私を夏子、妹を春子と役場に届けてしまった。 その後、それぞれ結婚し、私は娘二人を生んで結婚させた後、夫はすぐになくなった。 それが6年前、それからずーっと一人でこの団地に住んでいた。
一人だということで、未亡人だということで、男性から声を掛けられたことは何度となくあったが、その都度丁寧にお断りしてきた。
春子の前でこんなこと言うのはなんだけど、私はあちらの欲が普通の女性より強くて、お断りしながらその逆にフツフツ欲が湧き出てきて、こまってしまった。
もうそんな頂点の時、貴方に逢ったの。 亡くなった夫からのプレゼントと思ったの。 春子にもこのことを言ったの。
しかし、春子はダメっと言われたの。 だって、貴方には家庭があるからって。 そうね、考えてみれば。 しかし、私は貴方の家庭を壊すことなく、貴方とお付き合いをしたくなって。
ごめんなさいね、こんな長い話。 春子も、抱き込んでしまって』
改めて50過ぎた夏子を見ると、私は年下ながら可愛いと思い、つい春子が目の前にいるのに、抱きしめてしまった。
「これからも 何かあったら なんでも いいですから 言って下さい
春子さんも 同じですよ」
「貴方 これからも いいの」と言う夏子を、もう一度横抱きにした。
「さあ ご飯の前に 貴方 お風呂を 浴びてきて
春子も 一緒に」
※元投稿はこちら >>