『3』
「何だ幸子、もう寝るのか?」
「えっ?・・・えぇ、今日は少し疲れたわ」
「そうかぁ、じゃあ俺もそろそろ寝ようかな」
そう言うと、由英は電気を消しに居間へと向かった。
幸子は、寝室に入るとベッドに横たわった。
それからすぐ、由英も寝室に入ってきた。
寝ている幸子の隣へ横たわる由英。
幸子は、由英に背中を向けて寝ていた。
本来であれば、こうして由英と添い寝する事も拒みたかった。
だが、そんな幸子の事情を知らない由英は、意外な行動に出た。
後ろから幸子を抱き締めたのだ。
「えっ?ちょっ・・・あなた、何してるの!?」
「いいだろ?最近お前が忙しくてご無沙汰だったじゃないか。せっかくお前がこっちに戻ってきたのに、ろくにこんな事もしてないんだぞ」
確かに由英の言う通りだ。
幸子が戻ってきてから約一年、由英と夜の営みをしたのは数回程度だった。
あまり積極的ではない幸子、更に仕事が忙しかったのが理由だ。
しかし、今夜はそのどちらでも無い。
幸子は淫獣の淫攻を受け続け、解放されたばかり。
心身共に限界だった。
ましてや、淫獣に汚された身体で由英と愛し合うなど出来るはずが無い。
「あなた、ごめんなさい!・・・今日は疲れたの。だから、もう休ませて」
「そうか・・・そうだよな。お前の事、もう少し考えてやらなきゃ夫として失格だな。こっちこそ、いきなりごめんな。・・・おやすみ、幸子」
由英は、幸子の頬に優しく口付けをすると幸子から離れた。
幸子は、由英に対して申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
こんな日々が、いつまで続くのだろうか。
由英が寝静まった後も幸子はしばらく寝付けず、一人悩乱の夜を過ごした。
「ジリリリッ!ジリリリッ!」
目覚まし時計が鳴った。
由英と幸子の寝室の物だ。
由英は時計を止め、隣を見た。
幸子の姿は無い。
しかし、いつもの事だった。
幸子は毎朝、誰よりも早く起きて朝食の準備をしていたのだ。
寝室を出た由英は、愛する妻がいる台所へと向かった。
「おはよう、さち・・・。あれ、どこにいったんだ?」
そこにいるであろう幸子の姿は、どこにも無かった。
「ん?」
由英は、台所のテーブルの上にある一枚のメモ用紙を見つけた。
それは、幸子が書き記したものだった。
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