それでも、この人物は幸子の声を聞き逃す事はなかった。
「おかえり」
いつもの優しい声で幸子を出迎えてくれる夫、由英だ。
後ろめたい気持ちとは裏腹に、由英の優しく包み込んでくれる様な空気感に、幸子はやはり頼らざるを得なかった。
「毎日ご苦労様。最近、残業続きで大変だな。晩御飯出来てるけどどうする?」
気遣ってくれる優しい言葉、そして本来なら自分がやらなければいけない家事も率先してやってくれる。
幸子は、再び申し訳ない気持ちになった。
今、これ以上由英と一緒にいる事は許されないと思った。
「ごめん、先にシャワーを浴びてくるわ」
そう言い、幸子は浴室へと向かった。
由英には素っ気なく感じたかもしれないが、今の幸子にはこれが精一杯だった。
それと、先にシャワーを浴びたい理由もあった。
全身にこびりついた典夫の精液を、早く洗い流さなければいけないからだ。
衣服を身に付けていても悪臭が漂い、由英に気付かれるのではないかと心配だった。
何より身体にベタついている感触は、耐えられるものではない。
幸子は、脱衣場に着くなり脱ぎ始めた。
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