そんな頃、百合は初めてお寺のお手伝いとして境内の掃除から住職の食事の支度まで休む間もなく働いていた。
信者は全国に数百人と聞いていたが実態は不明、しかしお布施らし物が郵便で届けられていた。
百合は慣れない仕事を終えて満長との二人だけの夕食をとっていた。
「お努めご苦労様でした、今日は湯に浸かってゆっくり休みなされ」
「はい、そうさせていただきますが住職様は・・・」
「後からでいい、気を使わなくてもいいぞ」
百合は洗い物を済ませると
「住職さま、お先に失礼します」
と言葉を残して浴室に続く廊下に出た。
そこを進むと洗濯場があり汗の染み付いた作務衣はそこに脱ぐのである。
そして下着姿で浴室に入るのである。
浴室は広く特に浴槽と洗い場は豪華に見えた。
満長は暫くして書斎に入り雅子からの電話を待った。
しかしいっこうに電話がかからない
昨夜、雅子に耳打ちした用件が気がかりであった。
そして二日後の晩、公衆電話から雅子のか細い声で連絡が入った。
「雅子殿、ご主人の様子はどうじゃ」
「ええ、・・・状態はあまり・・・」
「あの件は・・・・」
「やはり無理です、龍さんが可哀想・・・」
「荒治療じゃがそれでご主人が発奮されることもある」
「・・・・・」
「お前様は知らぬふりして休んでおられよ、被害者を装えばよい」
「・・・・・」
エロ坊主の満長は何を企んでいるのか電話口で不穏な笑いを浮かべた。
そしてその深夜、雅子の住む長屋へ車を走らせた。
黒いジャージ姿と黒い覆面、手にナイフ
似ても似つかない格好で満長は鍵の掛かっていない玄関から忍んだのである。
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