『70』
金的は完璧に決まり、典夫は苦痛に顔を歪めるとたまらず床に転げ落ちた。
意表をついた攻撃に、典夫は悶えている。
これぞ、起死回生の一撃だった。
幸子は起き上がると、急いで入口へ向かった。
本来ならビンタどころか、拳で殴りたいほど典夫に対して怒っていた。
しかし、とにかく今はこの場から逃げなければという事しか考えられなかった。
外に出て、助けを呼べば確実なのだ。
「まっ、待て!」
逃げる幸子に気付いた典夫は叫んだ。
典夫はまだダメージがあり、起き上がるのでやっとだった。
そんな典夫の叫びを聞き入れるはずもなく、無情にも幸子は入口に辿りついてしまった。
典夫は、今度こそ完全に終わってしまったと覚悟した。
幸子は入口のドアノブを掴むと勢いよく開け、勢いよく外に出た。
だが、外に出た瞬間、幸子は何かの衝撃を受けた。
「キャア!」
幸子は後ろに倒れ込み、事務所の床に尻餅をついた。
一瞬何が起こったのか分からなかったが、幸子はすぐに理解した。
衝撃の原因、それは人だった。
人が立ち塞がり、ぶつかってしまったのだ。
しかもその人物は、この状況では間違いなく救世主とは呼べない者だった。
しばらく見ていなかったが、忘れるはずがない。
ダサいジャージを着て、体つきは百キロを越えているであろう肥満体。
また、とても年下とは思えない風貌。
更に、幸子を見つめる卑猥な視線。
隣に住む無職の淫獣、西尾佳彦に間違いなかった。
何故この男がいきなり現れたのか、やはりこの男も関わっていたのかと幸子は思った。
しかし、驚いたのは典夫も同じだった。
むしろ、典夫は西尾の存在すら知らなかったのだ。
では何故、西尾が現れたのか。
それは、西尾がこの事務所で行われた一部始終の様子を覗いていたからだった。
初めて幸子を見た時から、西尾はいつかこんな日が訪れる事を願っていた。
いつかチャンスが来る、そう思い続けて毎日事務所での幸子の様子を部屋の窓から覗いていたのだ。
一体どれだけ待ち、どれだけの精液を放出させただろう。
何度自身の剛棒を慰めても、幸子に対する卑猥な感情が収まる事はなかった。
直接この手であのいやらしい肢体を味わう、そうしなければ満足は出来ない。
西尾は、常に幸子を視姦し続けた。
そんな時、西尾はある事に気付いた。
幸子と同じ事務所で働く男、典夫の存在だ。
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