『68』
「キャア!助けてぇ!」
さすがに、典夫もこれには驚いた。
こんな強姦現場が誰かに見つかれば事件として扱われ、確実に家族にも知れてしまう。
盗撮等とは比べ物にならないほどの出来事だ。
家族への強い愛と気丈な性格の幸子であれば、こんな行動には出ないと思っていた。
それだけ典夫という淫獣に、ただよらぬ身の危険を感じているという事だ。
田舎町とはいえ、ここは道路沿いで現在は帰宅時間だ。
このままでは誰かに気付かれてしまう。
「誰かー!たすけ・・・んーんー!」
典夫は、幸子の口を手で塞いだ。
これで外に漏れる心配は無い。
だがその代償に、片手を離して両腕で抱き締められなくなったせいで拘束の力は弱まってしまった。
必死なのは幸子だけではなく、典夫も同様だ。
やはり幸子の抵抗力は並の女以上だった。
先程よりも動ける事を確認した幸子は、力を振り絞って抵抗した。
ここがチャンスだと女の勘が言うのだ。
そして、幸子は閃いた。
この状況は、あの小倉と対峙した時とそっくりではないか。
あの時、絶対絶命だった状況を打開した起死回生の一撃を思い出したのだ。
典夫は革靴だが、尖ったヒールには成す術もないはず。
幸子はそれに賭け、様子を窺った。
わざと体勢を崩してデスクに手を着き、踏ん張りが利く様にスタンバイした。
すると、典夫の足の甲が丁度踏みつけやすい位置にきた。
幸子は今しかないと足を上げ、狙いを定めた。
そして、目一杯の力を込めて足を振り落とした。
しかし、なんと典夫はこの起死回生の一撃をあと一歩の所で交わしたのだった。
寸前の所で足を引っ込められ「カツッ!」とヒールが床に当たった音が響いた。
「えっ!?」
まさか交わされるとは。
幸子はその動揺で一瞬、抵抗力が弱まってしまった。
その隙を見逃さず、典夫は幸子をデスクの上に押し倒した。
「あっ!」
幸子もすぐに対応しようとしたが、一瞬だった為に仰向けになるので精一杯だった。
典夫は間髪を入れず、幸子の上に覆い被さる様に乗った。
身体が重ね合わさる様に男の体重が上から乗っかってしまっては、さすがに幸子も身動きがとれない。
更に両手は顔の横に置かれ、典夫が上から手首を押さえ付けている為に動かせない。
足を動かそうにも、典夫は幸子の太腿の辺りを跨ぐ様に足を開いている為、思い通りに抵抗できなかった。
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