『67』
もしかしたら単なる脅しでは、典夫はそう思ったがどうやら幸子は本気の様だ。
このままでは全てがおしまいだ。
盗撮程度なら軽犯罪という事で大きな問題にはならないはずだが、幸子を手込めにする事が完全に不可能になってしまう。
幸子という女の魅力にどっぷりと浸かってしまった者にとっては拷問の様なものだ。
(くそ、終わりなのか!?ここまできて終わるのかよ!?・・・いや、このまま終わってたまるか)
眼が鋭く変わり、意を決して典夫は立ち上がった。
典夫に背を向けた状態の幸子は、典夫の動きには気付いていない。
『プルルッ、プルルッ・・・ガチャ!』
「はい、〇〇警察署です。どうしましたか?」
「もしもし、盗撮です!盗撮被害に遭いました!今すぐ来てください!」
「落ち着いてください。まずはあなたの居場所を教えてください」
幸子は怒りのあまり、冷静さを失っていた。
「あっ、ごめんなさい!場所は牧元さち・・・」
『ガチャ!・・・プーップーッ』
何と、居場所を伝える寸前で電話がいきなり切れてしまった。
原因はすぐに分かった。
いつの間にか典夫がすぐ後ろまで近付き、電話から配線を抜いてしまったのだ。
「ちょっ、何して・・・キャア!」
幸子が怒りをぶつけようした瞬間、典夫は後ろから幸子を抱き締めたのだった。
正に、捨て身の覚悟だ。
「はっ、離しなさい!ちょっ・・・何をしてるか分かってるの!?」
「あぁ、分かってるさ!何としてもお前を手に入れるには、もうこうするしか無いんだよ!幸子、大人しく俺に犯られるんだ!」
とうとう典夫が、淫獣としての本性を露わにした。
警戒してはいたが、最も起きてはいけない事態が起きてしまった。
幸子は絡みついた腕を振りほどこうと、もがきはじめた。
その衝撃でデスクの上にある書類や電話、それに家族の写真が入った写真立てなどが「ガタガタッ」と床に落ちていく。
一方、こんな一か八かの瀬戸際にも関わらず、典夫はこの状況に興奮していた。
初めての幸子との密着、身体の感触を確かめる以前にそれだけで典夫は陶酔していた。
それは、臀部に押し当てられた硬い突起物によって、幸子にも確認出来た。
小倉の時と同様、おぞましさだけが幸子を襲った。
早くこの状況を打開しなくては取り返しのつかない事になる。
幸子は抵抗を強めると、更に大声を出しはじめた。
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