『42』
二人は晶と同じ一年生でクラスメート。
名前は内田孝(うちだたかし)と青山祐平(あおやまゆうへい)。
百キロ近くありそうな方が内田。
痩せているが、髪が長くて邪魔そうな方が青山。
共通点は目付きの悪さだろうか。
この二人は幼なじみらしいのだが元々、出身地はここから遠く離れた所なのだとか。
では何故この高校へ来ているのか、恐らく学力に乏しいからだろう。
敷居の低いこの県立高校は遠くからの生徒も受け入れていた。
その為に、近くには寮があるらしい。
だが、この二人には悪い噂もあったのだ。
万引き、窃盗などの犯罪を繰り返しているという事だ。
そのせいで、わざわざこんな田舎の高校に来なければいけなかったのではないかと専らの噂らしい。
しかし、それはあくまで噂であって真実かどうかは誰も知らない。
とはいえ、そんな噂が出るのも当然だった。
目付きの悪さや態度もふてぶてしい、それに何だか不気味な雰囲気があり印象が良くない。
晶が苦手と言うのも納得出来る。
さっきの不良達同様、晶とは対象的だ。
そんな話をしていると内田と青山が立ち上がり、幸子達の方へ歩いてきた。
周りも、あまり関わりたくないのか二人とは距離をとっている様だ。
そして、二人が幸子達を通り過ぎようとした時だった。
何気無く目をやった先にいた幸子に気付いたのだ。
幸子は、思わず身震いした。
その瞬間の二人の視線は、他者とは比べ物にならなかった。
先程の不良二人と外見は同じようだが、全く違う。
暗闇に包み込まれたかの様なこの感覚は、淫獣以外に考えられない。
まさか高校生、それも自分の子供と同い年の者達に淫獣の気配を感じてしまうとは。
だが、今まで信じてきた自分の勘を疑う事も出来なかった。
一瞬だけ目が合った内田と青山は、何事も無かったかの様に通り過ぎた。
(まさか、あんな子供達が・・・)
幸子にしか分かるはずがない。
「幸子、どうした?」
由英の声で、幸子は我に返った。
「な、何でもないわ。行きましょ」
この一日で、一体何人もの淫らな視線を浴びせられただろう。
それから校内をしばらく散策した後、幸子達は自宅へ戻った。
ようやく獣達の卑猥な視線から解放された事で、幸子は疲れながらも安堵の表情を浮かべていた。
自宅を覗く典夫の存在には気付かずに。
※元投稿はこちら >>