『41』
幸子が何を言えばいいか考えあぐねていると、由英が先に口を開いた。
「・・・幸子、お前我慢してたろ?」
「えっ?」
まさか、先程二人が言っていた事を信じているわけではないだろう。
「俺に迷惑がかかると思ってあいつらに何を言われても抑えてたんだろ?普段のお前なら黙ってるはずないからな」
確かにその通りだった。
本来なら、もっと強気にいけたはずだ。
「学校で問題を起こせば俺だけじゃなく、晶にまで迷惑がかかると思ったんだろ。・・・でも幸子、それでお前が危ない目に遭ったら何にもならないだろう。前にも言ったけど、何があっても俺がお前を守る。お前は自分の思う道に進めばいい」
思わず、泣きそうになった。
身の危険を感じた今だからこそ、改めて由英の愛を強く感じた。
幸子は、由英の胸に飛び込まずにはいられなかった。
「・・・ごめんね、あなた」
由英は優しく抱き締めた。
「まぁ、あんなガキでもお前に魅力を感じてるって事だな。俺も夫として鼻が高いよ」
「もう、あなたったら」
由英はそんな冗談を言い、幸子を笑顔にした。
「あれ、こんな所で何してるの?」
良い雰囲気の場に、声を掛けたのは晶だった。
晶が丁度いいタイミングで現れ、更に幸子は笑顔になった。
「ここから先は行き止まりだよ」
「分かってるわ。行きましょう」
幸子達は、来た道を戻った。
「あの辺は三年生の不良達がいるから近付いちゃ駄目だよ」
晶の何気無い話で分かった事だが、あの不良二人は三年生でもうすぐ卒業らしい。
校内でも有名なワルで、卒業できるかも微妙だったらしいが何とか単位を取れたのだとか。
恐らくもう会う事も無いだろう。
元の廊下に戻ると、人通りも増えてきた。
すると、晶はいきなり立ち止まった。
「どうしたの?」
幸子の問い掛けに、晶は指を差して答えた。
その先には、廊下の備え付けの椅子に座っている二人の制服を着た生徒がいた。
「・・・苦手なんだよね」
晶はそう言うと訳を話した。
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