『12』
幸子に近付くには弁護士になるしかなかった。
しかし、そんな不純な理由で弁護士になどなれる訳がなかった。
それから数年経ち、さすがに諦めかけた矢先の事だった。
典夫は、地元に新しい弁護士が来て事務所を立ち上げるという噂を耳にした。
それが長年追い続けてきた、まさかの牧元幸子だった。
しかもスタッフの募集まで始めたと知り、すぐに動いたわけだ。
(親父に頼んで正解だったな。この女なら俺みたいな男は警戒して選ばなかったはずだ)
もちろん、清蔵に真実を話してはいない。
だが典夫の狙い通り幸子は顧問弁護士の話を承け、スタッフとして雇われる事になったのだった。
(どんな理由でこんな田舎に事務所を建てたのか知らないが有り難い事だ。どうやら運は俺に味方したようだな。・・・しかし、本当にいい女だ)
典夫は改めて、幸子の美貌に舌を巻いた。
(あの生意気な顔、舐め回して涎だらけにしてやればどれだけの屈辱を味わわせてやれるんだろうなぁ。胸も尻もたまんねぇ。あぁ幸子~早くメチャクチャにしてぇ!・・・まぁ焦るな。この女は一筋縄にはいかない。動くのはじっくり計画を練ってからだ。失敗すれば全てが水の泡になるんだからな。なぁに、これからは常に俺の目の前にいるんだ。楽しんでいこうじゃないか、なぁ幸子?)
受付台のおかげで隠れているが、典夫の股間に棲む剛棒は不気味なまでに硬直していた。
典夫が、そこまでおぞましい事を考えているなど幸子は思いもしなかった。
そんな典夫とは対照的に、幸子は仕事に打ち込む楽しさを思い出していた。
その幸子の弾む心に呼応するかの様に外では青空を見せ、窓から太陽の光が射し込んでいた。
(いい天気ね)
幸子は、窓に掛けてあるブラインドを上げた。
すると、太陽の光は更に事務所内を照らした。
(太陽も祝福してるんだわ)
幸子はクスッと笑うと、思わずストレッチのように両腕を上に伸ばした。
だが、爽快な気分だった幸子はある場所に目が止まった。
それは事務所の窓の向かい側、隣にある一軒家の二階の窓だった。
日中で、しかもこんな晴天な日にカーテンが閉め切っていたのだ。
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