『92』
何故、こんな事になったのだろう。
朦朧としていた幸子は、由英からの電話によってようやく状況を理解出来る様になった。
ほんの数時間前までは、いつもと変わらない日常だった。
朝、由英と晶を笑顔で見送り自分も仕事へ向かった。
夕食は何にしよう、そんな事を考えていた矢先の出来事だったのだ。
由英と晶の笑顔が頭から離れない。
この後、一体どんな顔で家族と会えばいいのだろう。
そして、これからの日々に、どんな地獄が待ち受けているのだろう。
映像を撮られ、弱味を握られてしまった為に幸子にはどうする事も出来ない。
散々、幸子を犯すだけ犯した典夫は最後にこう言った。
「これから毎日楽しませてもらうからな。俺から逃げられると思うなよ」
その言葉に、これから幸子の生活には地獄しか待っていないという事が現れていた。
絶望感に襲われた幸子の目から、涙が溢れ出てきた。
人一倍気の強い幸子は、人前で涙を見せた事は無い。
一人の時でも滅多に泣く事は無かった。
しかし、今はその涙を抑える事が出来なかった。
「うっ・・・うっ・・・うっ・・・」
幸子の泣き声が事務所内に響き、そんな幸子を満月の明かりが優しく照らしていた。
第二章 完
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