『34』
小倉は幸子へ強引に身体を押し付けた。
余力の残っていない幸子は踏ん張る事ができず、その勢いでドンッと壁に押し付けられてしまった。
前には小倉、後ろには壁があり幸子に逃げ場は無かった。
小倉は腰に廻していた腕を解放すると大きな手を利用し片手で幸子の両手首を掴んだ。
身体の前で両手首を拘束されグイグイと身体を押し付けられる幸子、もはや万事休すだった。
「さて、どうしようか。・・・そうだ。まずはその生意気な口にお仕置きしないとなぁ」
小倉が始めに目を付けたのは唇だった。
張りがあり量感も十分で程よく厚めな唇は極上の感触に違いない。
小倉はその唇に自分のいきり立った剛棒をくわえ込ませればどんな快感が待っているのだろうという興奮に酔いしれた。
耐える事をやめた小倉はもう一方の手で幸子の両頬を掴んだ。
指が頬に食い込み幸子の唇は突き出す形になっている。
小倉はゆっくりと顔を近付けた。
気持ちではまだ抵抗しているが、やはりどうにもならなかった。
このまま小倉に犯されてしまう。
(あなた、ごめんなさい)
そんな幸子の中に、ある人物が現れた。
もちろん、幸子の最愛の人である由英だった。
由英の笑顔、家族との団欒の日々、その光景が浮かび出してきた。
その瞬間、幸子はまだ諦めてはいけないと再び気力を持ち直したのだった。
火事場の馬鹿力なのだろうか、体力は残っていないが気力だけは失っていなかった。
(あなた、晶・・・)
そんな幸子の心情どころではない小倉は標的の唇に夢中だった。
どんどん唇に近付き、お互いの鼻が当たる距離まで来た。
強烈な女臭が小倉を襲い、もう我慢出来なくなり小倉は強引に唇に吸い付こうとした。
だがその瞬間、小倉の体に激痛が走った。
「ぎゃあ!」
あまりの痛みに思わず幸子から離れた。
突然の事で驚いたが激痛の箇所はすぐに確認した。
それは予想だにしない箇所、足の甲だった。
何と、幸子は気力だけで足を振り上げると小倉の足の甲へ踏みつけたのだった。
いくら革靴を履いていても尖ったヒールに踏みつけられたら無事で済むはずはない。
家族への想いが乗った幸子の起死回生の一撃で状況は一変した。
二人とも息遣いは荒いが睨み合っていた。
幸子はここからどう逃げ出すか、小倉はどう拘束するか、二人は次の一手に悩んだ。
すると、その緊迫した空気にある人物が入り込んできた。
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