中川が亡くなってから、一月経とうとしていた。
現在のところ、珠巳の秘密が、露見した形跡はない、だが、不安に思うことが、一つだけ有った。というのは、全裸の珠巳を描いたデッサンを、珠巳は見つけられなかつたからだつた。中川の遺品を家族に渡す、という名目で、珠巳は進んで整理を買って出た。だが、準備室の私物の中には、目的のモノは、見つからなかった。
中川のマンションは、既に片付けられていて、珠巳にはどうだったのかわからなかつた。松原のいう通りなら、家族の者も、世間体を憚って、公にしなかつた。と、思うしかなかった。
そうしているうちにも、入学式、新学期が巡ってきた。慌ただしい日々の中、松原は、改めて、珠巳にプロポーズしてきた。珠巳の返答は、NOだった。秘密を守る為に、肉体関係は続けても、人生を共にする気には、とてもなれなかつた。諦めきれないのか、松原は、珠巳を抱く度に、結婚を迫るようになった。
「何故なんですか?・・・稲田先生・・・」
「ああ・・・だめです・・・」
珠巳を貫き、激しくオマンコを掻き回しながら、熱ぽく語る松原に、珠巳はそう繰り返す。
「あなたのここは、僕のことを嫌っていないのに・・・」
松原には、珠巳が、何故断るのかわからなかつた。
でも、珠巳は気づいていた。清水が教えてくれたのだ、松原が、中川のマンションに出入りしていたことを、中川が死んだ夜、一人でマンションに入り、コツソリと荷物を持って、出てきたことを・・・
「いいわ!・・・でも、一緒にはいられない・・・」
喘ぎながらも、珠巳が言った。
『共有するには、大きすぎるわ・・・』
珠巳は、心で呟いた。現在はいい。しかし、一緒になったなら、きっとお互い、負担に耐えられなくなる。お互いが、心の闇を抱え合って、生きて行かなければならなくなる、珠巳にはわかっていた。
『こうするのが、一番いいのよ、松原先生・・・あなたでしよう、中川先生が持っていた、私の秘密を、消したのわ・・・』
珠巳は呟いた。
『もしかしたら、中川先生は・・・いや、違うわよね・・・』
松原の動きが激しくなり、もうすぐ射精が近いことを告げていた。
『私を抱くといいわ、松原先生・・・でも、それは、秘密を共にするため、私を縛ることはできないのよ・・・』
珠巳は、それ以上考えることをやめた。今は、自分も、満足して絶頂う、そう思い、セツクスに集中した。
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