次の日、珠巳は、どう出てくるかわからない、松原が気になって仕方がなかつた。
松原の方も、なんか珠巳を避けいて、目が合いそうになって、慌てて反らせたりした。それでいて、時々注いでくる視線を、珠巳は感じることが有った。
「松原先生・・・ご相談したいことがあるんですが・・・」
気まずさと、恐ろしさから、珠巳は、遂に、松原を呼び止めた。
「何ですか・・・」
ぎこちなく、松原が答えた。
「ちょっとだけ、お時間、頂けます?・・・」
戸惑いを露にしていたが、結局は、松原も納得して、同意した。
「話、って、何ですか?・・・」
学校の屋上で、松原がたずねた。
「驚かれたでしょ、昨日のこと・・・」
「ええ、・・・」
「これまでの、経緯を説明しますわ・・・」
珠巳は、そう言うと、去年から、今までのことを、かいつまんで話した。
息子の万引きをネタに脅され、教え子だった、隆と関係を持ったこと。隆が録画したロムを、伊藤卓治に握られ、関係を持ったこと。卓治が転校した後で、二人の秘密を知った清水に関係を迫られ、それを中川に盗撮されたこと。後は、中川に脅されて、今に至ったこと、を・・・
「それじゃ、稲田先生は、息子さんを守る為になさったんですね?・・・」
「ええ・・・でも、間違いでしたわ、最初に、毅然とした態度を取っていたら・・・」
そう言うと、珠巳は、眼下に目をやった。
下校していく、中学生達が目に入った。
「これから、どうするつもりです?・・・稲田先生・・・」
松原が言った。
「もう、どうしようもありませんわ、松原先生・・・」
珠巳は答えた。秘密を守る為に、ヅルヅルと続けていくしかない。
「それで、いいんですか?」
「他に、方法がありますか?・・・」
諦めた、そんなふうに、珠巳は言った。
「最初に、対応を誤った、私の責任ですから・・・」
「どんな結果になったにしろ、その最初は、全て善意から来ていた、か・・・」
松原が呟いた。
「はあ・・・」
「中川とは、何とかならないんですか?あいつだつて、公になれば、困る筈だ」
「無理ですわ・・・息子のことを考えたら・・・」
都合よく、息子を使っているな、と、珠巳は思った。
「これからは、私を抱きになればいいわ、先生も・・・」
平然と口に出せてのが、珠巳も以外だった。
「何を言っているんですか!あなたは・・・」
「秘密を共有する方法が、他にありますか?・・・」
そう言つて、珠巳は、松原を見つめた。
※元投稿はこちら >>