それから、幾日か過ぎた。珠巳は、その日も、中川のモデルになっていた。
「中川先生、今日は、お聞きしたいことがあるんです」
「何ですか?」
思い切って、珠巳は切り出した。
「先生は、水泳部の部室を、盗撮しているんじやありません?・・・」
「何を、言い出すかと思ったら・・・」
「誤魔化さないでください!」
はぐらかすような、作り笑いを浮かべる中川に、珠巳は、毅然といい放った。
「私、てっきり、清水君の仕業だと、思っていました。・・・でも、おかしいんですよね、清水君は、携帯を使った、とは言っても、盗撮は、してないと言うんですよ・・・」
「それがどうしたと、言うんです?」
「まだあります。清水君は、スケッチブックに、私の裸なんて、描いたことないと言ってます。私とのことも、・・・伊藤君のことも・・・話したことはないとも・・・」
「そんなことを信じるんですか?」
呆れた、と、言いたげに、中川が言った。
「ええ、あの子は、嘘は言っていませんでした!」
「そうですか・・・」
中川は、そう言いながら、目を細めて、珠巳を見つめた。
「じや、誰が、伊藤君の家に、写真を送ったのか?誰が、私が、・・・伊藤君や清水君とのことを、先生がお知りになったのか・・・」
息苦しさを覚えながらも、珠巳は続けた。
「先生が、部室を盗撮していたとしたら、・・・全て、辻褄が合うんです」
「ふふふ、鋭いですね・・・」
中川は、不敵な笑みを浮かべた。
「まあ、何時かはバレたんでしようがね・・・」
「それで、先生はどうするおつもりです?」
からかうような、他人事のように、中川が言った。
「おおっぴらになったら、困るのは、先生だと思いますがね・・・」
「・・・」
痛いところを突かれて、珠巳も口ごもった。
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