「あ、あの、この間のVIPRoomでの」かおりの言葉が終わらぬうちに神代さやかはニッコリ笑い、iPadに触れた。
「施術風景ですね」
「ハッ!」かおりに差し出されたiPadの画面に自分自身が映っていた。さやかは青冷めるかおりを見ながら、「感じてらっしゃいましたね一ノ瀬様」
(やっぱりあの噂は本当だったわ)
「これ!どういうことですかッ…盗撮じゃないですか」かおりは小刻みに震えながら神代さやかを睨んだ。
「エステの参考に撮影しています。外に出る映像ではありませんから」
「だって、洋服も着ていないのに」
「一ノ瀬様、スタイル良いですね」さやかは話をはぐらかすように言った。「とにかく、この映像は消して下さい」かおりは緊張で額に汗をかいた。さやかはハンカチでその汗を優しく拭いた。かおりは顔を背けハンカチを払い退けた。
「うふ、映像はもうお店のホームページにアップされています」
「エエッ!」
かおりは絶望的な目でさやかを見た。「一ノ瀬様の裸、もう何百人に見られたかも」さやかは小悪魔のように笑った。さやかはSっぽい視線でかおりを見たまま、さらにいたぶった。「エステのお客様だけじゃなく、エロい動画を探してるネットオタクな男性も、うちのホームページチェックしてるんだって」
「イヤッ神代さん。こんな動画を主人に知られたら…消して下さい」
(そろそろかな)淡いピンク色のブラウスを着て上品な人妻を落とすのは、さやかの密やかな楽しみでもあった。
「動画のアップはお店の営業活動ですから、それを削除するには一ノ瀬様にもお店の仕事を一部協力して頂かないと」
かおりは友人から聞いた風俗の言葉を思いだした。(駄目とてもそんなこと出来ない)
「来週の金曜日、午後2時にまたご来店下さい」さやかは言うとiPadの電源を切った。「消してくれるんですか?」かおりがすがるようにさやかに言った。
「来週ご来店頂いた時に。失礼します」
一ノ瀬かおりは不安な気持ちのままエステスペース華を出た。スーパーマーケットの駐車場に停めた車に戻るとかおりはスマホを取り出し、エステスペース華のホームページにアクセスした。さやかの言った通り施術風景の動画がアップされていた。但し会員登録しなければ見ることは出来なかった。(アァここに自分の裸が載せられているかも)かおりは会員登録することも出来ず、不安に苛まれた。
※元投稿はこちら >>