続き
その頃の俺は、部屋で落ち着かなくなってしまい、
タイ子さんの事を観察するようになっていた。
出勤前のタイ子さんとはよくお茶を飲みお菓子を食べた。
ふっくらした唇はセクシーで、お菓子が口に運ばれるたびドキッとした。
あぁタイ子さんにとにかく触れてみたい。そんな欲望が強くなった。
しかし意外な落とし穴があり、タイ子さん男勝りの性格とは裏腹に俺を近づけさせなかった。
ある日、間接キスを狙い、タイ子さんの使ったティーカップをターゲットにした。
「ねぇタイ子さんのお茶のほうがおいしそうだから飲ませて!」
「どっちも同じよ~」当時からハスキーボイスだったタイ子さんは笑顔で断った。
ならばと、タイ子さんがキッチンに行った瞬間にカップを狙ったが、
あっさりと取り上げられた。「だから同じだってー」
タイ子さんは潔癖症なのか俺をある一線から入れようとはしなかった。
しばらく経ち、タイ子さんと俺はさらに仲良くなった(気がした)。
そこでプロレスをしたいと駄々をこねた。プロレスならタイ子さんに触れる。
しかし相手にされなかった。だが、ある日とうとうタイ子さん折れ、渋々付き合ってくれた。
実際にやってみると大人の力で抑えつけられ何もできなかった。
しかし、どさくさで胸も少し触れた。細身であまり胸はなかったが十分満足だった。
最後に「キス攻撃ー!!」と冗談半分でタイ子さんのセクシー唇を狙ったが、
「ハイ終わりー」と避けられ一方的に終わりを告げられた。
更にしばらく経って、今度はストレートに「タイ子さんキスしてー」と無邪気を装い頼んだ、
しかし、「この、お・ま・せ・さん!」とデコピンで返された。
無邪気な子供のイタズラを装ってもダメだった。
俺の想いは大きくなるのに、タイ子さんは決して胸やらキスといった一線は越えさせなかった。
そんなある日、俺は自宅で父親が録りためた邦画を興味本位でこっそり見た。
そして俺は驚愕した。画面では男女が裸になり唇を重ね、その後は男が女の胸に吸いついていた。
そして最後は男女が股間を重ね合わせたのだ。
大人はこんな事するんだ・・・
俺は驚いたと同時に、タイ子さんにしてみたい想いに駆られた。
他の男がタイ子さんとこんな事をしてるなんて許せなかった。
そして俺は意を決しある日を迎えた。この日は学校で授業を受けている状態から落ち着かなかった。
ソワソワしながら帰宅し、そしてタイ子さんの家にお邪魔した。
その日は、俺がお菓子を食べて、タイ子さんはテレビを見ながら洗濯物を畳んでいた。
なんか落ち着かない。どのタイミングで実行しようか悩んでいるとテレビが助け船を出してくれた。
テレビでは恋愛ドラマの再放送がやっていて、ちょうど男女が向き合っているところだった。
それに合わせ、俺は後ろからタイ子さんに甘えるように背中にくっついた。
そして画面では濃厚なキスが始まった。それに合わせて俺も勢いよくタイ子さんの唇を狙った。
「タイ子さんチューしよ!!!」
しかしタイ子さんはいつものようにガードが固く、「おいたはダーメ!!!」と顔を背けた。
この日の俺はそれでも諦めずに執拗に唇を狙った。あ、いけるそう思った。
その時「あ、お母さんが迎えに来たよ!!!」とタイ子さんが叫んだ。
え?思わず母のことを出されて怯んで離してしまった。
・・・してやられた。タイ子さんのほうが何枚も上手だった・・・。
母に見られたくないという心理をうまく突かれた。そして焦った姿をした俺を見てタイ子さんはニヤリと笑った。
それ以来、俺はタイ子さんに無茶をすることはなくなった。
タイ子さんには俺の欲望を見透かされているようで、急に恥ずかしくなった。
そして俺が10歳の頃、父親が転勤になり俺はこの街を離れた。
タイ子さんに対する淡い想いも欲望も心に閉じ込めたまま。
そして15年後の今、成長を遂げ、悪知恵もつけ、俺はこの街に戻ってきた。
俺の想いを砕いた初恋の人にリベンジを果たすべく戻ってきたんだ。
続く
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