「30」
時刻は,その日の夜七時。
智子の夫である聡史は,自宅近くにある駅を降りた。
ここから自宅までは自転車で十分ほどの距離である。
金曜だから飲みに行こうという会社仲間の誘いも断り,いつもより二時間ほど早く退社した。
駅前のロータリーに目を向けるとすぐに黒いワンボックスカーを見つけ,ゆっくりと近寄っていく。
聡史は車の中にいる人物を確認すると,助手席に乗り込んだ。
「とりあえず駐車場に。話はそれからだ」
運転席に座っていた大崎が聡史にそう言った。
聡史は大事な話があるからと大崎に呼び出されたのだ。
大崎は先日あの二階の部屋で聡史が覗いていたこと,そして階下では聡史と裕美が関係を持っていたことも知っていた。
大崎の呼び出しに素直に従うべきか少し迷った聡史だったが,選択の余地は無かった。
助手席に座った聡史は自分の横にいる大柄な男を見た。
この野獣のような男が自分の愛妻を抱いたのだ。
しかし不思議なことに,今はこの男を憎む気持ちは少ない。
車はそのまま駅の駐車場へと移動した。
そしてそれから二時間以上をかけて,二人はじっくりと車内で話し込んだ。
そしてその中で,男たち二人は三つの約束事を決めた。
一 このことは絶対に他言しないこと。
二 大崎が智子を抱くのは週に一回,金曜日の昼間だけにすること。
三 智子が嫌がることをしないこと。
大崎はそれ以外にも,聡史が妻の浮気現場を覗きたい場合には出来る限り協力すると言った。
実は聡史は妻の浮気を目撃して以降,それを思い出しながら自慰行為を繰り返していた。
それは妻との普通のセックスでは決して得ることのできなかった快感を聡史にもたらしていた。
そんな聡史の様子を敏感に察知した大崎は,今日の昼間に智子を抱いたことを告白した。
様々な体位で何度も交わり,最後は智子のほうから膣内射精をねだってきたことも聞かされた。
智子の身体にはまだ昼間の余韻が残っているはずで,今晩抱いてみれば必ず智子が狂ったようになるとのことだった。
話し合いを終え,大崎の車から降りた聡史は駅から自宅に向かう途中,今夜は必ず妻を抱くと心に決めた。
その晩,聡史が帰宅したのは夜の十時過ぎである。
娘を寝かし終えた智子が,いつものように夫を出迎えてくれた。
「あなた,お帰りなさい。ご飯はどうします?」
聡史には,この優しい妻が昼間浮気をしていたとは思えなかった。
大崎から聞かされていなければ疑うことすら無かったはずである。
「ああ。少しだけ食べようかな。それより,智子・・」
聡史は台所に立つ智子に近づくと,今晩智子の部屋に行くことを告げた。
それを聞いた智子はかなり驚いた様子だったが,了承してくれた。
聡史は急いで食事と入浴を済ませると,自分の部屋に保管してあった高価な精力剤入りドリンクを一気に飲み干した。
しかしそれを飲む以前から聡史の股間は勃起していた。
帰宅していつもと変わらぬ様子の妻を見ているだけで,どうしても興奮を抑えられなかったのだ。
準備を整えた聡史は,急ぐように愛する妻の待つ寝室へと向かっていった。
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