「22」
その大崎から次の連絡が来たのは,木曜の深夜だった。携帯に明日の午前十時に来いと大崎からメールがあった。二度目の不貞を犯してしまったのが,まだ昨日のことである。大崎はよほど智子のことを気に入ったようだった。このままでは堕ちるところまで堕ちてしまう。この幸せな家庭を壊すことになりかねない。夫には絶対に知られるわけにはいかない。智子は様々な思いを胸に不安な一夜を過ごした。
翌日,智子は夫と娘をいつも通り送り出した後にきちんとメイクを済ませ,身なりを整えてからいつものパート先へと向かう。今日は白のブラウスに水色のスカートにした。清楚な人妻という雰囲気を醸し出しており,道行く男性の何人かが智子の姿へ目を向ける。店に着いた智子であるが,今日まで臨時休業であるため当然お客はいない。今週のパートが休みであることは夫に黙っていた。
「おはよう智子さん。今日も綺麗ね」
出迎えてくれた裕美に挨拶をすると,智子は静かに階段を登っていった。ノックをして部屋に入ると,そこはいつものようにアロマの香りで充満していた。まだ朝の十時であるというのに,部屋はカーテンが引かれ暗い。スタンドライトの赤い光が,今から行われる激しい交わりを予感させる。ベッドの中央にはすでに大崎が下着一枚で座っていた。大崎は立ち上がると智子のほうへ近づき,コップの水と共にいつもの媚薬を手渡す。
「お・・,お願いがあるんです・・」
智子は媚薬を飲む前に大崎に話しかけた。今日だけは全てを受け入れる代わりに,もうこれっきりにして欲しいこと。このことはお互い他人へ話さず,もう自分とは関わらないで欲しいことを告げた。しかし,大崎の答えは智子の淡い期待を裏切るものだった。旦那や近所にバラされたくなかったら,言うことを聞けと。そしてこれからしばらくは裕美と共に俺の女になれということを大崎から命令された。そんな提案を受け入れられるはずも無い智子は,うつむいて下を向いたままだった。そんな智子の肩に手をかけ,大崎は優しく声をかけた。
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