「21」
事の始まりは,先週の水曜日のことだった。智子がパートで務めている料理屋で昼の部が終わった午後,智子は裕美と二人で店に残っていた。この時間帯に他のパート従業員はいない。裕美からマッサージが得意だから少し残ってと言われ,智子は丁重に断ったのだが,強引に二階へと連れて行かれたのである。いつものお礼と言われては智子も無理に断ることもできず,少しだけならと了承した。マッサージを始める前に何かのお茶を飲まされ,アロマの蒸気が充満した部屋で上下の下着だけを残して裸にされた。その後三十分ほどをかけ,じっくりとマッサージをされた。薬とアロマの効果で意識が朦朧とし始めた智子は帰ろうとしたが,その時,突然あの男が部屋へ入ってきたのである。智子を残し裕美が部屋を出て行ってからは,智子もあまり覚えていない。男に抵抗すれば殺すと脅されてからは,恐怖で動けなかった。智子は一時間ほどかけて二度の膣内射精を受け,ようやく解放された。男との交わりの一部始終をビデオカメラに撮られていたため,警察に通報することもできなかった。その晩,疲れて帰宅した夫に相談しようともしたが,結局何も言い出せぬままだった
。その後,男からの命令でパートは今まで通り続けること,そして次の水曜日の午前十時にまたあの部屋に来いと言われた。そして今日の水曜日。雨の降りしきる中,向かったあの部屋で男の精液を三度にわたって受け入れてしまった。しかも最後は自分から男の射精を求めていたような気がする。夫を裏切ってしまった罪悪感が強く,その晩は夫と顔を合わすのも辛かった。
男の名は大崎(おおさき)とだけ聞いている。裕美の現在の彼氏だと聞かされ,以前に店内で紹介されたことがある。その後,店での仕事の合間に大崎から声をかけられ,二人で食事に行かないかと誘われたことがある。智子は当然断ったのだが,まさかこんなことになるとは思っていなかった。大崎は夫の聡史とは正反対であり,智子が苦手とするタイプである。その鍛えあげられた全身からは,獰猛な野性味を感じさせる。年齢は夫よりも若い三十代前半だと聞いている。
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