「2」
「くそっ・・。もうあの店でのパートは辞めさせてやる。だから最初から反対だったんだ・・」
聡史は歩きながら思わず呟いていた。初めに智子が昼の部だけでいいから働きたいと言い出したとき,聡史はすぐに反対した。聡史は結婚して九年が経つ今でも妻のことを溺愛していた。妻の智子は現在二十九歳であり,聡史より八つ年下である。高校の時からずっと付き合っていた智子が二十歳になった時に結婚をし,すぐに一人娘が産まれた。智子の両親から金銭の援助を受けながら念願のマイホームを手に入れ,家族三人で幸せに暮らしていた。娘が小学校に入ってからは少しでも働きたいと何度も言っていた智子だったが,聡史はそんな妻の申し出をいつも却下していた。聡史は妻に対する束縛心が非常に強く,外で自分以外の男に言い寄られるのをひどく嫌ったのである。
「着いたぞ・・。ん・・?」
店の前に着いた聡史は扉の前にかかっている札に目を見張った。「店主不在のため,今週はお休みします」という手書きの札がかかっていたのである。
(智子はそんなこと言ってなかったぞ・・。まさか本当に・・)
聡史は自分の心臓の鼓動が急激に高まるのを感じていた。その時,突然目の前の扉がゆっくりと開き,あの女店主が顔を出した。年のころは三十代か四十代に見える。顔は少し派手できつい感じもするが比較的美人なほうであり,ムッチリとた全身からは異様なほどの色気が感じられる。
「入って。音を立てないよう静かに」
聡史は戸惑いながらも店の中に入っていった。この店には何度か来たことがある。妻が働く店として安全かどうかを確認するため,ここで何度か食事をした。店主もパートの従業員も女性ばかりであり,安心したこともあって智子が働くことを許したのである。女店主の後ろを歩きながら,聡史の緊張はますます高まっていった。
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