第3話
3人がタクシーを降りたのは、ある高層マンションの前だった。どこかの飲食店かカラオケにでも連れて行かれると思っていた麻衣は、怪訝に思いながらも真由美たちの後についていった。真由美は入口のオートロックを解除すると、そのままロビーに入っていった。
「裕子さん、ここって誰かの自宅ですか?私、カラオケとか居酒屋に行くのかなって思ってました」
「麻衣さん、心配しないで。真由美さんのお友達が借りているお部屋があって、夜の会合はいつもそこを使わせてもらっているの。カラオケだってお酒だって何でも揃ってるわ」
そこは、麻衣が思わずためらうほどの高級マンションだった。自分たちが住んでいるマンションとは明らかにグレードが違う。エレベーターに乗り15階についた3人は、ある1室に向かった。真由美が鍵と暗証番号を解除し、部屋の中に入る。とりあえずリビングに入った3人は荷物を降ろすと、真由美が台所へ向かった。
「すごい・・。私、こんな広い部屋、初めてです」
麻衣は驚きの声をあげた。とりあえず近くにあったソファに座ったが、これ以外にも幾つものソファがある。テレビやその他の家具も含め、部屋全体に何ともいえない高級感が漂っていた。麻衣と裕子が2人で話していると、そのうち真由美がリビングに戻ってきた。
「麻衣さん、好きなものがあったら何でも言ってね。ここにあるのは、美味しいものばかりよ」
その後、3人はワインやシャンパンを飲みながら1時間ほど談笑した。ここには様々な種類のお酒から、ハム・チーズ・キャビアなどの食料品まで取り揃えられており、いずれも高価なものばかりであった。しかし、真由美からここでの費用は一切不要と聞き、麻衣は少し気が楽になった。麻衣は昔からお酒が好きだったこともあり、真由美に勧められるまま、つい普段より多くのアルコールを口にしていた。そして、夕方5時半を過ぎた頃、真由美に1本の電話があった。すぐに会話を終えた真由美は、麻衣に向かって話し出した。
「麻衣さん、あのね・・。今からお友達がここに合流するんだけど、いいかな?」
「あ、はい。私はいいですけど・・。もしかして、ここの家主さんですか?」
「今から来るのは家主さんじゃないけど、もしかしたら、その人も後で来るかも・・」
その僅か10分後に部屋に入ってきたのはスーツ姿の2人の男たちだった。当然、女性が来るものだと思っていた麻衣は、驚きを隠せなかった。
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