「32」
それから数週間が経った。
幸いにも智子は妊娠することなく,今は毎日ピルを飲み続けていたが、そのことは夫婦間で話し合って決めたことだった。
近頃の聡史は膣内射精が癖になってしまったようで,避妊具を使わないようになった。
しかも以前よりもずっと頻繁に智子の身体を求めるようになっていた。
それは智子にとっても良いことなのだが,最近の夫がするセックスは,以前とは比べものにならないほど荒々しい。
以前の優しいセックスではなくなっていたのである。
夫がこうなったのは,智子が大崎と関係を持ち始めてからであった。
(ま・・まさか,あの男とのことを・・)
智子は夫がなんとなく感づいているのかもしれないと不安だった。
しかし普段の夫はいつもと変わらず接してくれている。
むしろ夜の営みが増えたこともあるのだろうが,以前よりも夫婦間で会話を交わすことも多くなっている。
(ピルを飲んでるから妊娠は大丈夫かもしれないけど・・でも・・。このままじゃ私・・)
智子は一抹の不安を抱えていた。
二十九歳になって初めて覚えたセックスの良さではあったのだが,それだけに大崎との濃厚な不倫セックスの深みにハマりこんでいる自分が恐ろしかった。
大崎は夫である聡史と毎週金曜日の昼間だけ智子を抱いていいという密約を交わしていたが,智子の身体の素晴らしさを知った大崎が週一で我慢できるはずが無く,平日は毎日のように智子の身体を抱いていた。
当然のことながら,以前智子と交わした「あと二週間だけ」という約束は守られていない。
平日はいつものように裕美の小料理屋でパートに出勤させていることにしているが,実は夫と娘を送り出した智子を大崎は迎えに行き車に乗せ,すぐさまラブホテルに直行していた。
智子がどうしても自宅での行為は嫌だというので,毎日のようにラブホテルに連れ込んでいるのである。
普段はおおよそ二時間ほどの交わりで解放されるが,大崎の都合がつく時には娘が帰ってくるギリギリの時間まで抱かれることもあった。
男を喜ばすフェラチオや浴室でのローションプレイなど,智子は大崎から徐々にテクニックを仕込まれていた。
初めの頃は夫を裏切っているという背徳感に悩まされた智子であったが,避妊薬を飲み始めた安心感もあってか,今となっては大崎の命令を素直に従うようになっていた。
しかしそれでも,智子にはまだどうしても受け入れられないことが二つあった。
一つはアナルセックスであり,そしてもう一つは大崎のアナルを舌で奉仕することである。
潔癖症の智子は排泄器官に対する嫌悪感をどうしても捨てきれず,泣きながら大崎に許しを求めたこともあった。
昼は大崎に抱かれ、夜は夫に求められる。
そんな背徳の日々がしばらく続いていた。
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