第六章
_きれいに清掃された個室内を見回して、上着とバッグを扉のフックにかけました。備え付けのサニタリーボックスも清潔感があり、良い印象を受ける。
_私はスカートの裾を捲り上げ、レギンスに指をかけて、じりじりと膝下まで下ろした。
_そこに現れた白い太ももを見下ろせば、明らかに異性を誘ういやらしさを漂わせていた。
_次にショーツに指をかけて、体温を保ったままのそれをするりと下ろしていく。
_脱いだばかりのショーツを見た私は、はぁ…と悩ましくため息をついた。
_なぜなら白い生地のそこにはっきりと、粘り気のある染みが付いていたからでした。
_バッグから携帯電話を取り出して、シャワートイレの便座に腰かけた。
_そして、交流サイトにアクセスする。
_今、私の下半身の貝割れしたその部分だけが裸となり、分泌された液体にまみれて異臭を漂わせていることでしょう。
_ここから確認できなくても、湿気をふくんだ微熱を感じている。
_オリオンの掲示板を埋めつくす男性からの「つぶやき」を読みふける。
しだいに紅潮していく体を悟って、ついに「ビデ」のボタンを押した。
_小さな機械音とともに、ちょろちょろと水のしたたりが聞こえ、その存在は「私」に狙いをさだめる。
_過剰なまでに身構えてしまっていて、こわばる全身。
──次の瞬間。
「!!…」
_日常の中の非日常的な刺激が、私をおそった。
_思わず、しゃっくりのような声を発してしまっていた。
_唇は半開きになり、太股をすり合わせて快感に浸った。
_さらに自ら腰を動かして、陰核から陰唇、陰唇から陰核へと、期待を裏切らない快感を求めていった。
_かすかに、壁の向こうの男子トイレから、水を流す音やエアータオルの音、足音も聞こえる。
──たった壁一枚の距離。そこから男性器の矛先がこちらに向けられているかもしれない。
そう思うと、頭の中まで熱くなった。
_あいかわらずネットの中の私は、普通の主婦の仮面をかぶって、みんなに愛想をふりまいている。
_でも、あなた達の知っているオリオンは、そんな女じゃない。ノーマルなセックスだけではもの足りず、異常な自慰行為に手を染めた、ふしだらな女。
_そんなことを思いながら、私は昇りつめようとしていた。
_すでに目の焦点は合わない。うつむく先にぼんやり見えるショーツの染み。
_前兆の、かるい痙攣のあと、それは一気にきました。
_膣の筋肉が、きゅきゅっ…と引きしまり、何度か収縮する。
_ジェル状の内容物は膣口から糸をひいて、したたり落ちた。
_私は、しばらくそこから動けませんでした。
_帰りの車の中。興奮状態が冷めていくと、自慰行為をしたことへの罪悪感が私の体を犯していました。
──こんなところまで来て──私、どうかしてる。
_もやもやしたものが晴れることなく、けだるい帰り道を車は走っていきました。
_でも、いちど味をおぼえてしまった体は、罪悪感さえも上回る性欲をどうすることもできない。
_一度目の自慰行為から3日とたたないうちに、私はショッピングモールへと車を走らせていました。
_以前から「大人のおもちゃ」には興味があったが、恥ずかしさからなかなか買うことができずにいました。
_ショッピングモールに着くと、トイレに行くまえに100円ショップに立ち寄りました。
_複雑に割れた陰唇の奥に生暖かい湿気を感じながら、できるだけ男性器に近い雑貨を探しました。私に見初められた雑貨たちが次々とカゴに入れられていく。
_違う意味での「大人買い」だ。
_そしてレジを通るとすぐにトイレに向かって、いちばん奥の個室にこもった。
_私のあとに続いて誰かが入ってきたが、そんなことも気にせずに、不機嫌な膣に異物を突き刺していったのです。
_その行為は30分以上もつづいた。
_今思えば、あの頃から、実体のない視線のようなものを感じていたような気がします。
_その正体を知るには、まだ早すぎると言わんばかりに、気配だけが私のそばで冷たく笑っていた。
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