最終章
_同年代の女、三人が全裸のままベッドの端に並んで座っている。
_私は由美子のふくよかな胸に体をあずけ、両脚をひらいて朋美さんに向かって局部をさらしました。
_朋美さんがバイブレーターのスイッチを入れると、ごつごつとした黒いシリコンの塊が音をたててうねった。
_あれが中に入ってきたら私はどうなってしまうのか、想像しただけで鳥肌がたってしまって、体は受精の準備をはじめて濡れました。
「女同士のセックスなら避妊する必要もないし、思う存分たのしめるでしょ?」
_朋美さんが私の耳に唇をつけてそうささやくと、耳たぶのピアスがふるえていた。
「がまんできない……はやく……」
「三月さん、ちゃんと言わないとダメじやない」「バイブを……入れてください……」
_左右に首を振るバイブレーターの先端が私の太ももに触れ、焦らすようにゆっくりと濡れた入り口との距離をつめていく。
_膨らんだ陰唇の外側を撫でていって、膣口からクリトリスに向かうぬかるんだ道を愛撫する。
「は……あ……」
_私の体がのけ反り、由美子の乳房に押し返される。由美子の両手は私の乳首をまさぐって、同時にうなじや頬へのキスを繰り返す。
_バイブレーターにまとわりついた粘液ですべりを良くして、それは回転しながら膣口をほぐし、やがて中へと入ってきました。
「んぐ……んんん……はあ……はあ……」
_バイブレーターの機械音が小さくなった。私の体内で音がこもっている。太くて長いものが根元まで私の膣に飲み込まれていました。
_やさしい異物感、先端が子宮口にあたる、胴体に埋め込まれていたのは真珠?その粒々がちょうどいいところを突き動かして、気持ちいい。
_ちょっとやそっとの刺激じゃ満足できなくなっていた私が、こんな子供騙しの玩具にもてあそばれるとは、なんて生意気なやつ。
_私の反応を見守るふたり。
「今の三月さんがいちばん可愛い。体は嘘をつけないでしょ?女は男とちがって何度でもイケるから、溜まったものぜんぶ出していいよ」
_私の股間から水しぶきがあがる。朋美さんの目の前で私は潮を噴いた。
_お尻の穴までびしょ濡れにしている自分に恥ずかしくなりながらも、興奮した体はさらに激しく燃焼していった。膣が焼けるように熱い。
「終わらせてあげる」
_朋美さんがバイブレーターを操る。ふやけた膣から黒い棒を引き抜き、勢いをつけてふたたび私の中に突き挿した。ずしんと下から突き上げられる。子宮が揺れる。性器の割れ目から悦びの悲鳴が聞こえる。
_最短距離で出し入れが繰り返されて、嬉し涙が溢れる。
_性的なストレスを味わって痙攣しているのに快感が終わらない。
_私はイったことにも気づかず、何度もイかされていました。
_何時間も分娩台に乗せられているような、なにもかも垂れ流したままの下半身。
_由美子と朋美さんから代わる代わるクンニリングスを受け、子宮だけじゃなく卵巣までしゃぶられているような感覚がつたわってくる。
_互いの貝割れ肉を重ね合ったり、三人がそれぞれの唇をむさぼり、首をふたつ持った玩具で性器同士をつなげてみたり、それはもう女としての役目を果たすかのように快楽の限りを尽くしました。
──数時間後。
_いつのまにか私たちはベッドの上で全裸のまま眠っていました。
_目を覚ました私のとなりで寝息をたてる庭朋美。部屋の中を散らかしているものを見て、さっきまでの出来事は夢じゃなかったんだと、私は大きく息を吐いた。
_電池切れのローター、乾いた体液で汚れた何本ものバイブレーター、産婦人科医療の器具、三人分の下着やその他の異物、それらすべてがそれぞれの仕事を終え、無造作に散らかっていました。
(あれ?由美子がいない)
_部屋の中に夏目由美子の姿がありません。
_その時どこからか雨の音が聞こえて、私が音のする方へ行ってみるとそこにはバスルームがあり、カーテンを引くとガラス越しにシャワーを浴びる人影が見えました。
「由美子──」
_バスルームのドアを開けるとシャンプーの香りがする湯気が頬を撫でて、その向こうに由美子の姿があった。
「里緒、おはよう、目が覚めた?」
「おはようって、今、何時だっけ?」
「たぶん……6時前ぐらいだったと思うよ」
「そっか……いつのまに寝ちゃってたのか全然おぼえてない」
「ねえ、里緒──」
「なに?」
「一緒に洗いっこしようか?」
「いいよ。……あ、ちょっと待って」
_学生旅行でお泊まりに来ているようなウキウキした気分で、私は一度バスルームを出て、あるものを持ってまたバスルームに戻りました。
「これもバイブだっけ?」と、手にしたものを由美子に見せると、「これはディルドだよ、またしたくなった?」と、可愛い笑顔が返ってきた。
_二本のディルドの表面をボディーソープで洗い流して、それぞれ一本ずつ握りしめた。
「こうやって握るとほら、私の指じゃ届かないくらい太いよ」
_猫じゃらしを与えられた猫のような気分で、私は由美子の目の前で握ってみせた。
「里緒はさっき何回ぐらいイった?」
「そんなのいちいち覚えてないよ。由美子は?」
「ん……と、なんかわかんないくらいイったような気がする」
_照れ笑いするその笑顔が私は好きだ。
_私たちはタイルの床にディルドを立てて、内股でそこにまたがり、ゆっくり腰を沈めていった。
_物言わぬ弾丸が陰唇を突き破って体に穴を開けていく。
「あ……あん、あ……あん」
_泣き声に似た喘ぎ声と、じゅぷじゅぷという挿入音がバスルームで共鳴していた。
_由美子の肩が快感でふるえている。愛しい彼女を両手で抱き寄せ、乳房をこすり合わせて唇を奪った。そのまま腰を上下に動かしながら互いを求め合う。
「由美子の愛液を私の中に出して……」
「里緒の子どもを妊娠したい……」
_一本のディルドの両端からそれぞれフェラチオして、もう一本の両端を互いの膣に挿入して腰を交わらせる。
_奥深くまで導いてあげると、ディルドの姿はふたりの体の中に消えていった。
_分厚い陰唇の皮がめくれ上がるほど、淫らな赤身を重ね合わせ、ふたりで悦びの声をあげて果てた。
_ぐったりとした膣から異物が抜け落ちて、粘り強く白い糸を引いている。
_その直後、快感の余韻にひたっていた私に、とどめの一撃がきた。
_由美子はディルドを握りなおして、私の穴の真ん中めがけて押し込み、子宮を連打した。
「いい……やあああ……だめだめ……あああ……やめ……あっ……」
_内臓が揺れるほど突き上げる衝撃に犯される。私にレイプ願望があることを知っているからこそ、由美子はわざと乱暴に私の性器を扱ってくれていた。
_失禁しながら3回ほどイったあたりでようやく異物が抜かれ、由美子はやさしく私の恥部を舐めてくれました。
「もう……由美子……やりすぎ……」
「こんなに濡らしておいて、やりすぎはないでしょ」
「あのさあ、由美子……」
「なに?」
「またこんなふうに二人でセックスできるかな?」
「それは里緒しだいだよ」
「え?それじゃ私、由美子に会えない時は毎日オナニーしてる。由美子が言う物ならなんでも入れてあげるし、バイブ入れたままスーパーで買い物とか、ローター入れて保育園の送り迎えだってできるよ。だから……」
「可愛い奥さんはスーパーのキュウリをどんな目で品定めするの?美人のママは園長さんにどんな顔で挨拶するの?」
「由美子も一緒にやってみる?」
「ふたりだけの秘密で……ね?」
_夜明けが近いバスルームで体中の汗を洗い流し、生命の源から湧き出した匂いを消していった。
_これでもう女を愛した証拠はなにも残されていない、私はそう思い込んでみました。
_私と夏目由美子がバスルームから出てきた時、部屋に庭朋美の姿はありませんでした。
_なにもなかったように片付いた室内で着替えを済ませ、それぞれの部屋で帰る準備をした後、本館のワイルドガーデンズの食堂で合流した。
「──でさぁ、あの店の服がすごく可愛くて、今度行ったらぜったい買おうと思って」
「あれ可愛かったね。由美子、服の趣味いいから私も真似して買っちゃおうかな」
_夕べの雪はすっかり止んで、窓の外の朝陽は真横から私たちを照らしていました。
「おはようございます」
_かつぜつの良いはっきりした口調で挨拶をしてきたのは、庭朋美でした。
_スタッフの制服に身をつつんだ清潔感のあるその姿は、夕べの名残などまったく感じさせていませんでした。
「あ、朋美さん、おはようございます。今日も綺麗ですね」
「照れるからやめてください。そんなことより、二人とも朝食はどうします?」
「じゃあ、私トースト。里緒はどうする?」
「和食にしようかな、白いごはん食べたいから」
「オッケー、クラムチャウダーもおまけしときますね。ちょっと待っててください、すぐ持ってくるから」
_朋美さんのまわりだけ空気が濁っていない、そんな透明感をふりまいている。こんな山奥のホテルに閉じ込めておくにはもったいない、そう思った私は朋美さんを引き止めた。
「あの、朋美さん──」
「はい?」
「機会があったら一度、私たちのところにも遊びに来てください。由美子もそうして欲しいって……ね?由美子」
「え?ああ……朋美さんさえ良ければ」
「いいですよ、シーズンオフになったら休暇もとれるし、都合ついたらまたメールしますね」
_私はなんだかときめいた。デートの約束をしたような甘酸っぱい気分。
_知り合って間もない頃のノブナガに恋していた気持ちに嘘はなかった。
_あれから色々あったけど、今もあの頃の気持ちのまま変わらない。
_ありがとう、あなたに会えてよかった。
_年が明け、まだまだ春が遠い玄関先の正月飾りをくぐり抜けて、嬉しい便りがとどいた。それは庭朋美からの年賀状でした。
_年始の挨拶の背景には、私たちがワイルドガーデンズを離れる前に撮った写真がプリントされていました。
_三毛猫のマサムネを抱きかかえた庭朋美さんが真ん中で、その両脇で私と夏目由美子が半月型に目を細めふざけて笑っている。
_あの日の出来事がまるで昨日のことのように目に浮かぶ。
(はやく由美子に知らせなきゃ)
_夫も知らない下着に履きかえ、薬指から結婚指輪をはずして、私は由美子に会いに行く。
_自分の妻が空白の時間にどんなサイトにアクセスして誰と会って何をしているのか、知らないほうが幸せなこともあると思います。
_もし、何かのはずみで妻の携帯電話を覗いてしまったら、その時は警鐘が鳴らされることでしょう。
_そして私自身が知らないほうが幸せなこと、それは夏目由美子が私に近づいたもうひとつの目的。
_彼女がまだ多感な高校生だった頃の痴漢体験、そんな陰湿で卑怯な行為をくり返していた痴漢のひとりが、私の夫であるということ。
_つまり、最愛の妻である私を寝取ることで、夏目由美子はあの頃の復讐を果たしたのでした。
「由美子……待った?」
「里緒……服を脱いで、こっちに来て」
おわり
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