第二十九章
_私はまた美しいものを汚してしまった。その光景に欲情して、私は由美子の可愛らしい割れ目に思いきり吸いつきました。
「あ……あい……りお……い……いい……」
_肉体を舐めているのか液体を舐めているのか、わからなくなるほど由美子は濡れていました。
「さっきの由美子のオナニー、すごくエッチだったよ」
_そうささやいて、私は親指と小指以外の三本の指を由美子の中に挿していきました。
_なんの抵抗もなく根元まで入っていく指。そのまま手首をくるりとまわして、膣の肉を揺らすように掻き回した。
_陰唇の形がぐにゃりと歪む。
「里緒のオナニーも、可愛かったよ」
_彼女は喘ぎながらもそう言って、私の中に指を入れました。
_さっきイき果てたばかりで過敏になった部分がまた熱くなって、予測できない指の動きに身悶えました。
_互いの穴に指をはめ込み、女自身のどこがどう感じるのか知り尽くしているからこそできる愛撫で、女の悦びを分かち合いました。
_私たちは上りつめて、膣を痙攣させた。
_破水したように濡れるシーツ。はあ……はあ……と、鼻から抜いた荒い息づかいだけが互いの耳に届いていました。
_そして二人で体を起こして、ベッドの上を見まわした。
「由美子ったら、こんなに濡らして、ナプキンの夜用でも間に合わないよ」
「そう言う里緒だって、ほら、タンポン入れておかなきゃびしょびしょだよ」
「そういえば、タンポン買う時って恥ずかしくない?レジの人が男の人だと、すごい気まずい」
「私は平気。なんかレジの子が童貞くんぽい子だったら、わざとそっちに行って買ってみたりして」
「由美子って、男の人ダメなんじゃないの?」
「草食系の童貞くんなら大丈夫かも。エッチな妄想とかいっぱいしてそうだし、なんかイジメたくなっちゃう。里緒と私で童貞くん襲ってみよっか?」
「それいいかも。こどもの作り方、教えてあげる……とか言うわけ?」
「そうそう。で、アソコの写メとかいっぱい撮られたりして、オナニーしてるとこも見てもらうの」
_そんなふうに女同士の会話をしているうちに、私は──。
「ねえ、由美子」
「ん?」
「あれ……なんていうか……私、バイブが……」
「経験してみる?」
「ん……うん……」
_私はなんだか急に恥ずかしくなって、両手でアソコを隠しました。そんな私の仕草を見て、彼女はイタズラっぽい笑みを浮かべた。
「なんか里緒、処女みたいだね」
「ぜったい痛くない?」
「うん、すごく気持ちいいよ」
_彼女との会話を重ねるうちに、私はふとあることを思い出しました。それはノブナガとのメールセックスのやりとり。
_私はまだ、いちばん大事なことを確かめていないことに気づきました。
_それは──。
「由美子だったんだね」
「え?なにが?」
「あの交流サイトで私が知り合ったノブナガが由美子だったなんて、意外」
_私がそう言い終えると、妙な沈黙がふたりの間に流れて、小さなえくぼを口元につくって微笑んだ彼女はこたえた。
「ちがうよ──」
_たしかに彼女はそう言った。
_あまりにも期待はずれな彼女の言葉に、正直とまどった。
「ちがうの?私はてっきり由美子がノブナガだと思ってた。オリオンのこともよく知ってるし、ノブナガしか知らない私のことだって──」
「私はノブナガじゃないけど、ノブナガさんのことはよく知ってるよ。ほんとうの名前は千石さんでしょ?」
「え……まさか……。じゃあ、由美子と千石さんはどういう関係なの?」
_まったく、なにがなんだかわからない事だらけ──。私のあたまの中はそんな状態だ。
「どういう関係だと思う?」
_そう言う彼女のいたずらな笑顔が、無邪気な少女のように若返って見えた。
「そういえばほら、もうすぐクリスマスでしょ?」
「そうだけど……、それと千石さんとどんな関係があるの?」
「千石さん……ていうかノブナガさんて、里緒も知ってる人だよ」
「え?でも私、メールアドレスしか知らないし、まだ会ったことないよ……」
_その時──。
コンコン……
_誰かがドアをノックした。この部屋には裸の女が二人きり。こんな所にいったい誰?と、彼女に視線を送ると、突然の訪問者にひるむことなく彼女はドアのほうに近づいて私に言いました。
「来たわよ、サンタクロース」
「……?」
_私は言葉もなくドアと由美子の顔を交互に見ていた。
_ドアの前でしとやかに立つ全裸の彼女をあらためて目にした時、大人の女性の肉体の生々しさが匂ってくるようでした。
ガチャ──。
_部屋に響く、ドアの鍵を解除する金属音。
_私にとっては招かれざる客である訪問者を、夏目由美子は招き入れようとしていた。
_とっさに毛布をたぐり寄せて素肌に巻きつけた私でしたが、血流が青すじをたてて火照った体は無防備であることに変わりはなかった。
「誰なの?」
_毛布の中で肩をすくめたまま由美子にたずねてみても、彼女はそれに答えずドアにもたれかかるようにして、そのドアを……開けた。
_細長い隙間からドアの向こうの様子が見えてくる。
_そこに感じる人の気配。
_息づかい、体温、感情までも見えてくるようでした。
_部屋中に充満していたセックス臭を外に逃がした代わりに、新しい風が吹きこんでくるのを感じた。
_ドアが完全に開け放たれた時、そこに居たサンタクロースとは──。
_昼間、自室で眠ってしまった時に見た悪夢の光景がそこにあった。
_逆行の中に人影の輪郭だけが見えて、得体の知れない「存在」が部屋の中に侵入してきた。いや、実際にはそう見えていただけでした。あの悪夢の印象が強すぎて、私に錯覚を起こさせていたのです。
_その人物の顔がはっきりと見える。
「まさかあなた……あなたが千石弘和……ノブナガ」
「やっと会えましたね、三月里緒さん。それとも、オリオンさんと呼んだほうがいいですかね」
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