第二十八章
_彼女は体を入れ替えて私のほうを向きなおすと、乱れたシーツの上に女座りをした。
「私は里緒にひどいことをした。内緒でつきまとったり、里緒の体が目的であの交流サイトに誘ったり、おまけに手錠でつないだりして。それでも、こんな私でも抱いてくれるの?──」
「私、誤解してた。由美子はいつも綺麗で明るくて、どう見たって子供がいるママには見えない。だからセックスにも不満はないと思ってた。でも、さっきの由美子の話を聞いて思った。私とおなじだって──」
「おなじ?──」
「うん。私は出産してからしばらくは旦那にも相手にされなくて、ずっとセックスレスだった。出産に立ち会った旦那は一緒に泣いて喜んでくれたけど、出産の一部始終の光景がショックだったみたい。だって血まみれだもの、無理もないよ──」
「そうだったんだ。結婚とか出産だけが女の悦びだって勘違いされてるんだよね。ほんとうは、いちばん女を感じる瞬間がセックスだってわかって欲しいのに、男はわかってくれない。だから女性の人格まで無視して痴漢とかレイプとか平気でできるんだよ。私もあんなことがなかったら、もっと普通に人を愛せたのに──」
_彼女の目の力がまた弱々しくなっていく。
「由美子の傷、私が舐めてあげるから。私が愛してあげるから──」
_女性が女である以上、どんな時でも男の目を意識してしまうものだ。私はもうずいぶん前から夏目由美子を意識していたような気がする。それがどういう意味なのか、性を越えた愛がそこにありました。
_二人きりの空間。裸の女の体が照明を浴びて白く浮かび上がっている。彼女は私の手足から手錠をはずして、ようやく自由になった私と向かい合わせになりました。
_ベッドの上に二人でへたり込むように座って、互いの肩を引き寄せていく。
「由美子──」
「里緒──」
_生まれ持った美貌を惜しみなくさらけ出して、どちらが先というわけでもなく、紅く膨らんだ唇にむさぼりつきました。
_甘い砂糖菓子が口の中で溶けていくような、そんな口づけでした。髪の毛束を揉み合い、鼻先が曲がるほど顔を押しつけて、舌と舌を絡ませるたびに愛しさが膨れ上がった。
_私は夏目由美子を愛していた──。
_昼か夜かもわからない閉ざされた部屋で交わる女ふたり。
_そんな私たちの知らないあいだに、世界中のどんな場所にも平等にクリスマスが近づいていて、街には赤や緑のクリスマスカラーの電飾が灯りはじめる。
_やがてそれは、ワイルドガーデンズとスクエアガーデンズにもやって来るのでした。ジングルベルと足音を鳴らして。
「由美子の乳首、こーんなに起ってるっ」
_私はわざと遊び心を込めた感じで、人差し指に唾をつけて彼女の乳輪に円を描いた。
「やっ……んん……」
_由美子は下唇を噛んで、私のいたずらに耐え喘いでいる。そこに追い討ちをかけて、性的な緊張でかたくなった乳首を舌ではじいていく。小さいながらも私の舌を押し返すほどかたい乳首。
「んっふ……もうだめ……下も舐めて……里緒……」
_耳がくすぐったくなるほどの甘い声で私にねだる。今度は彼女が下で、私が上になって、シックスナインの体勢に移る。
_淫らに胴体をしならせる二匹の女豹。私はそのまま彼女の股のあいだをのぞき込んだ。
「由美子のここ、じゅくじゅくして、おいしそう……」
_甘酸っぱい匂いに引き寄せられて、由美子の秘部を口いっぱいに頬ばった。
「いっ……」
_彼女は、しゃっくりのような引き気味の声をあげて、ひらいた両脚を閉じかけた。その太ももが私の耳たぶに触れる。
_ちゃぷちゃぷ……ちゃぷっ……。
_植物性の蜜とは違う、野性味あふれる動物性の蜜に舌を叩きつけて、夏目由美子という名の「名器」を味わいました。
_いつのまにか私は蜜の味に酔っていました。
_彼女のほうも私のお尻を両手で抱え、生暖かい絞り汁を舌で受けとめていた。紅く腫れたクリトリスを舌先で跳ねあげられ、私はそのまま由美子の幼顔に腰を沈めていった。
_もはや口は口ではなく、クンニリングスの為だけにありました。
_我慢しなくてもいいんだよね?
_気持ちいいなら素直に「気持ちいい」って言えばいいし、イきそうになったら恥ずかしがらずにイけばいい。
_私が由美子を受けとめるから、由美子も私を受けとめて──。
_まだ挿入もない前戯だけのはずなのに、上りつめてしまいそうな感覚を子宮直下に感じていました。
「いい……いぅ……ゆみこ……あいい……いく……い……ん……」
_快感に狂っていく自分じゃないみたいな自分。そんなもう一人の私が「幽体」となって分離していく感覚の中で、由美子の白い肌だけがスローモーションの残像のように映っていた。
_絶頂したい──。
_私の「天井」が近いことに感づいたのか、彼女の舌がはげしくうねりはじめた。
_膣への侵入を何度も試みて、半びらきの入り口のぬめりを掃除していく舌先。しかし拭いきれない。
_舐めれば舐めるほど、ぬめりは性器に膜をつくる。
_それでも彼女は舌先をとがらせて膜を突き破り、私の中に入ってきました。
_腰の骨が抜け落ちていくみたいに、膣と子宮が産気づいている。一瞬にして体中の穴という穴がひらいた気がした。
_そして私は……快感のかたまりを産みました。
_生理の時にいつも痛みを感じるあたりも、今は快感だけを感じる。
_裸の膣が溶けていく。ゆっくり溶けて、産後の余韻が私を優しく包み込んでいきました。
_私が産んだ膣内容物は、由美子の綺麗な顔を汚していました。
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