第二十六章
_そこまで言い終えて、悲しみに歪んだ夏目由美子の顔にかげりが見えた。引きつるような声で泣きながら、何かを否定する素振りを見せて、首を横に振る。
_どんな時でも明るかった彼女の姿が、今はとても小さく見えて、愛しい。
「それでも私は……それ以上、旦那に抱かれたくなかった……。やっぱり怖いの……」
「それ以上、言わなくてもいいよ。私も女だからわかるよ、夏目さんの気持ち……」
_はかり知れない彼女の悲しみに触れて、目頭が熱くなっていくのを感じた。
_そして私の心は自然と彼女に寄り添い、言いようのない感情がこみ上げてきました。
──夏目さんがノブナガだったのなら、これは私自身が望んだこと。なぜなら私はノブナガに会うために、こんな遠く離れた場所まで来たのだから。
_なにより、彼女のすべてを受け入れることが、彼女を救うことに直結している。そう思う──。
「忘れたかったから……強姦されそうになった時の事ぜんぶ消したかったから……あのサイトで知り合った女の人と、セックスした──」
_夏目さんは、少し吹っ切れたかんじの口調で言った。
「とっても優しかった。怖いとかそういうの全然なくて……体がふわふわって、浮かんでる感じ。そんなこと言われても、わけわかんないよね?私も、わけわかんないうちにイク感覚に襲われて……やっと、今までの自分を許せるようになった」
「その人のことが……好きになったの?」
「ううん、違う。その時の私にはまだ旦那以外の誰かを好きになれるほど気持ちに余裕がなかったし、家族あっての今の私だから。家庭は壊したくないでしょ?」
_彼女のその言葉は、そのまま今の私に向けられているように感じました。そして、娘の茜の顔が頭をよぎった。胸が痛む。
「そんな時、出会ったのが、三月里緒さん……あなただった」
_彼女はまっすぐ私の目を見て、ふたたび悩ましく表情を変えた。
_ブラジャーのホックをゆっくり解いて、桃色に肥えた乳房をはずませて外にこぼした。つづけて肩紐にそっと添えた指で肩から鎖骨のくぼみまでを撫でていくと、ブラジャーの輪は腕をすり抜けていった。そして、ぴんと上向きに突起した乳頭の色具合が、私の視覚をいやらしく刺激します。おなじ女性の裸にこんなにも興奮するとは思わなかった。
_私は、ごくりと喉を鳴らして唾を飲みこんだ。そして、彼女の恥部を最後まで隠していたショーツが脱ぎ落とされると、股間の切れ込みからわずかにはみ出した陰唇が見えました。黒ずんだ外側とは対照的に、綺麗な桃色のひだが二枚。
_私たち二人は、お互い裸で向かい合っている。
「里緒──」
_ベッドの上で体を開いて手足を手錠で繋がれたままの私に、彼女がまたがる。
「里緒とセックスしたかった──」
_何度も私の名をささやき、四つん這いになって、発情したようにお尻を突き出している。
──夏目さんの熱い息がかかる。あ、香水の匂い。私、この匂い好き。柑橘系の甘酸っぱい匂い。もっと近くで嗅ぎたい。すっぴんなのに唇を紅くして、厚くて柔らかそうなその唇で、私にキスをしたいの?夏目さんを見てるだけで、どきどきするよ。夏目さんは、どきどきしてる?もう、濡れてる?──
_私の首すじに噛みつくように彼女は顔をうずめ、音をたててキスをしてきた。
_それを受け入れたわけじゃないけど、拒絶もしなかったし、私はただ目を閉じて「はぁ……」っと官能のため息を漏らしてしまった。
_彼女の髪が香りながら私の肌をくすぐって、ねっとりした唇の感触に鳥肌をたてました。
_うなじに、耳たぶに、喉元にまで這いまわる唇と、生暖かい唾液でどろどろに濡れていく体。そのまま肌を重ねて、隙間を嫌うかのように私を抱きしごき、その手が私の髪を掻き乱している。
_私と夏目さんの乳房と乳房、乳首と乳首がまみれて、互いの性欲中枢を刺激し合っている。
「はあ……はあ……」と鼻息を荒げて、彼女の唇は私の体を下りはじめる。
_思わず「そっちはダメ……」と弱々しく言ってみたけど、愛撫は下へ向かって来る。
_背中に張りついたシーツは汗でぐっしょりと濡れて不快感なのに、生唾で愛撫されているからでしょうか、快感の波にさらわれて不快感はすっかり消えてしまった。
_そこに残ったのは快感だけ。夏目さんの顔が私の乳房に沈みこんで、鼻の頭をこすりつけ、舌を這わせて舐め上げる。
_その舌づかいに反応して「んふん……んく……」と声を漏らした私に、「ここがいいの?」と、うっとりした目を向けたかと思うと、彼女はふたたび視線を落とした。
_その時、まだ目覚めていない乳首に性的な異変を感じました。熱く湿った息がかかるのと同時に、敏感な部分に吸いついて、歯をたてずに唇で噛みつかれ、私の頭の中は真っ白になっていく。
_彼女の両手は私の背中にまわって、胸の先端はびくびくと痙攣している。舌で転がされ、そこを何度も往復し、母乳を吸い取るように乳房を搾る彼女。
「ああ……夏……んっ……」
_お互いの汗をその肌に塗り込んで、べたつく体をすり合わせる。
「里緒のおっぱい、美味しい──。でも、もっと美味しいところ、そこはどう?舐めて欲しい?──」
_彼女の言葉どおり、私の体はそれを望んでいました。でも、恥ずかしくて言葉にできない。
「私はもう……ほら……」と彼女は両脚をひらいて、「こんなに濡れてる……」と割れた雌肉を私にさらした。
_そして、そこに指をあてがって悩ましく撫で上げた。そのまま人差し指と親指をすり合わせてひらいていけば、粘っこく糸が引いて見えていた。
_夏目さんが本気で感じている、私を愛してくれている証拠。私の体も火照っている。私は夏目さんを愛しはじめているのだろうか。
_しだいに自分が汚れていくのがわかった。
_彼女が次にとった行動。
_それは──。
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