杏樹の身体の震えが止まる頃…、姉としての落ち着きを取り戻す。
『真里ちん、ゴメン♪お姉ちゃん…疲れてた…』
姉の言葉に安心した真里は逆に、わんわんっ…泣き出した。
気丈な姉の…初めて見る怯えた土下座が、かなりショックだったようだ…。
私自身も動転していた。
意味もなく杏樹の額に、チュッとキスをして真里の所へ抱き締めに行った。
やっと姉妹は落ち着いてくれた…。
『なんか…僕が…大きな声出して…ビックリさせて…ごめん…』
苦笑いしながら謝る私…。
私は、そう言い残し1人、寝室に行った。
…自分の鬼畜な本能が許せなかったのだ…。
いろんな自問自答が頭をよぎる…。
(母親を守りに行ったんだろ?)
(母親と同じ暴力を受けてる姉に勃起か?)
(お前は父親そっくりの男だ?)
(お前は父親以下の男だな?)
地獄の夜だった…。
全身に汗をかき悶え苦しむ夜…。
朝…目を覚ますとベットには真里が居なかった。
(水を飲みたい…!)
私はリビングへ向かう。
テーブルの上は昨晩の飲み会のまま荒れている。
真里と杏樹は居なかった。
寝室隣りの部屋を覗くと姉妹はスヤスヤ寝ていた。
(可愛い…姉妹の寝姿だ…)
安心して私は再び寝た…。
寝室で私が再び目が覚めた時は何時だったのだろうか?悪夢もなく熟睡していた…。
ベットの上には、ちょこんと座っている真里の姿。
『…いつから見ていた?』
『わかんない…』
真里の目は泣き疲れて腫れていた…。
『佳ちゃん…お布団に入っていい?』
『ああ…もちろん!…真里っ、おいで…』
私に無我夢中に抱きつく真里を私は温かく包み込んだ。
私の胸板で震えながら泣き出す…。
『杏樹姉ぇ…助けたい…』
真里から聞いた話しでは
杏樹の旦那さんは2年前から22歳の看護婦の愛人が居た…。
それを問い詰めると逆切れして暴力を振るう旦那…。
義理母親も知らないふり…。
今回の夫婦喧嘩の理由は…、長男が名門私立幼稚園で他の子供に誤って怪我をさせた事だった。
世間一般に勝ち組と羨ましがられ…妬まれている…杏樹。
杏樹は床に倒れ…殺虫剤を、かけられたウジ虫みたいに苦しみ…旦那の暴力を受けていたのだ。
息子を連れて逃げ出したい杏樹に…義理母親は長男を隔離して会わせなかった。
嫁は道具であり『家系を保つ孫』だけが宝。
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