(それから……)
* ……セクハラ次長のらしからぬ丁寧で紳士的な態度で、実に和やかに和気あ
いあいと食事を終えました。
私は、この時にある種の安堵感を覚え、「やっぱり、妻に無理を言ってでも次長
を招待して良かった」とホッと胸を撫で下ろしていました。
何せ、私の人事権を握る上司なのですから……
サラリーマンにとって、人事は絶対です。
覚えが愛たくなるに越したことはないのです。
同時に、妻のかいがいしい貢献に感謝さえしていたのです。
眞澄「さぁ、次長さん、場所を移して2次会でも始めませんか、どうぞ応接の方
へお座りになってくださいな」
応接のテーブルには、ビールやワイン、ウイスキーなど一通りのお酒が並び、妻
は手際良く、ハムやチーズ、ビーンズなどのオードブルを用意しました。
そして、応接のソファーに私と妻が並んで座り、向かいに次長と西川君が並び、
私「それじゃあ2次会でも始めましょうか、次長、今日は本当に良くいらっしゃ
いました、心より感謝します、カンパイ!」
次長「有り難うございます、今日はこんなお持てなしを頂き、実に楽しい気分で
すよ、こちらこそ感謝します、なぁ、西川君な」
「はい、僕は本日は次長のしもべとして参っておりますので、次長の喜びは即ち
私自身の喜びでございます。」
私「西川、本当にお前ってヤツは如才ないよ、偉くなるよお前は」
「ハッハッハッハッ……」
……こうして、2次会もまた実に和やかに進んで行きました。
そうして、次長や妻がビールを3,4缶空けた頃……
次長「さぁ、ここからは私が持って来たワインでも飲みましょうや、これは
「ヴォーヌ・ロマネ」と言って、中々人気があって美味しいんですよ」
眞澄「まぁ、次長さんはワインにもお詳しいんですの?私、以前に1度飲んだ事
がありますわ、とても美味しかった記憶がありますわ…内の人なんか、ほとんど
アルコールはダメなものですから、そういう事もさっぱり分かりませんのよ…
ねぇ、あなた、ここでも次長さんに負けてるわね」
「あぁ、アルコールは元々体質だから、仕方ないじゃないか…」
私は、この時もまだ、妻の対応に、「実に上手に上司を持ち上げるものだ」と感
心しておりました。
……しかし、今思えば、妻は本心から、次長と私を天秤にかけ、「男性としての
質」を比較していたんだと思います…
……………
次長「奥さん、ちょっとおしぼりを貰えますか?」
眞澄「あら、ごめんなさい、次長さんのが出てなかったのかしら」
妻は慌てキッチンに向かいました。
……すると、次長はとっさに妻のワイングラスを手に取り、私の目を盗むように
し、胸ポケットから目薬を取り出し、グラス目掛けて5,6滴垂らしたのでした。
この時、西川は見て見ぬ振りをしていたのです。
「ごめんなさいね次長さん、はいどうぞ」
「すいません奥さん、さぁ、どうぞ、どうぞ、ワインもお好きならグゥッとやっ
てください」
「はい、じゃあ遠慮なく頂きますわ」
……すると、妻は、一気にグラス半分程もワインを飲み干しました。
「美味しいですわヴォーヌ・ロマネ、昔、飲んだ味を思い出しましたわ、大好き
なんですのよこの味、さすが次長さん、私もうすっかりファンになりましたわ」
……妻は、頬をピンク色に染め、悪戯っぽい表情で次長に視線を送っていまし
た。
「奥さん、ワインも実にいい飲みっぷりだ、さぁ、どうぞどうぞ、まだまだあり
ますから」
「有り難うございます。でもビールをこんなに飲んだ後じゃあ悪酔いしちゃうん
じゃないかしら…次長さんの前で取り乱しそうで心配ですわ…」
「いいじゃないですか、せっかくのこんな機会なんだから…思い切り乱れなさい
よ…楽しく行きましょう、楽しく」
………そんなやり取りをしている間にも、二人のアルコール量は、どんどんと進
んで行きました。
……時計は、9時半を差し、私が確認したところ、500mlの缶ビールが12,3缶にワ
インは既に2本が空いていたのです。
……私から見ても二人は、相当に酔っているようでした……
「しかし、こうして見ても、つくづく奥さんは色っぽい…素晴らしいグラマー
だ、まるで日本人離れしている…これほど見事なスタイルの女性には、そうそう
お目にかかれないよ…」
「…いやですわぁ、ただのデブですのよ私なんて…内の人なんか、いつも私の事
をデブデブって馬鹿にするんですのよ」
「いや、奥さんの場合は、デブではなく豊満と言うんですよ、それも日本人離れ
した飛び切りの…」
……そう言う次長の視線は、妻の肉体を食い入るように凝視しておりました…
その胸や下半身をまるで舐め回すような、獲物を狙うような視線を妻に放って
いたのです。……向かいに私などには全く目も来れず…
真向かいから、そんな好奇な視線を投げ掛けられ、当然、妻が気付かない訳があ
りません……
……すると、妻はその視線を意識するように、それまで揃えていた脚をゆっくり
とおもむろに組み始めたのです。
深めに前スリットの入ったタイトスカートは、脚を組むことによって、むっちり
とした太腿がその視線の前に曝け出されたのです。
しかも、この日、妻が履いていた真黒いメッシュは、パンストタイプではなく、
ガータータイプだったため、黒いレースのストッパーの太腿部分が、次長の目の
前にはっきりと露になっていました。
真向かいの次長からは、きっと下着までも覗けていたでしょう……
……その瞬間、次長の目はカッと大きく見開き、ニヤリと妻に向けて下卑た視線
を送っているのでした…
……すると、わざと自分を落ち着けるように、ポケットから煙草を取り出し火を
付け、煙を燻らせながら、無言でその肉体に目を這わせているのでした。
……次長が煙草を吸い出した途端に、二人の会話は止まり、まるで睨み合ってい
るかのように、お互いの視線をぶつけ合っていました。
……それまでの和やかな空気が一変し、微妙なスリリングな空気に変わったので
す…
妻の方もニヤッと妖しい視線を送り、徐々に徐々に腰を前の方にずらし、何度か
脚を組み直してみたりして、次長の視線を挑発し、自分の下半身をわざと見せ
付けるようにしていたのです。
おそらく、妻が脚を組み直す度に、次長からは下着まではっきりと見えていたこ
とでしょう…次第には、徐々に捲れ上がったスカートは、太腿の付け根近くまで
見えていたのでした。
…次長の目付きは、一層下卑た感じとなり、妻の下半身を凝視しながら、妻が脚
を組み直す度に、ゴクッと生唾を飲み込むように喉仏が鳴っていたのです。
………ようやく煙草の火を消し、
「いやぁ、奥さんは、実に魅力的な女性だ、特にその張りのあるバストが素晴ら
しい、ボイン好きの私には堪らない、興味津々だ…ちなみにカップはどれくらい
ですか?」
「まぁ、ボインなんて随分と古めかしい言葉をお使いになりますのねぇ、次長さ
んのようなダンディな方が、女性に年齢やサイズなんか聞いてはいけませんわ…
内緒にしておきましょう…フフフッ…」
「…そうですか…それは残念だ、奥さんは、秘密主義ですか?」
「そんな事ありませんわ…普通、女性はそういう事は言わないものよ…そんなに
関心があるなら、御自分でお確かめになったらどうかしら…?」
次長は、ニヤッとしながら、
「…なる程、そういう事ですか…いやぁ、しかし見事、奥さんのような立派なバ
ストの女性には、本当に滅多にお目にかかれない、その胸を拝めただけでも、今
日お邪魔した甲斐がありましたよ」
「次長さんのような素敵な方にそんなに気に入って頂けてとても嬉しいんです
けど、これ位大きいと、合うお洋服が中々ありませんのよ、それと肩こりも相当
酷いんですのよ、昔から凝り性で、今でも月に一度は、マッサージを欠かせませ
んの」
「肩こり?そうですか…実はこう見えて、私はマッサージが得意なんですよ、東
京に居た時にも、ワイフには定期的に施していましてねぇ…どうですか?奥さん
さえ良ければ、小一時間位やって差し上げますよ」
「えっ?とんでもないですわ、次長さんのような偉い方にマッサージだなんて罰
が当たりますわ、ねぇ、あなた?」
私「当たり前だろう!こんな愚妻に、次長の手を煩わせるなんてあり得ません
よ、逆にお前がやってさし上げろよ」
「いやいや、本当に遠慮はいらないから、こんなにもてなしを受けてただで帰る
んじゃあ、私の気が済まない、是非とも御礼がしたい、ねっ奥さん、本当に遠慮
はいらないから…」
「……そこまで言ってくださるのなら、お言葉に甘えようかしら…それにしても
次長さんは、女性にお優しいんですのねぇ、内の人なんか、結婚してからただの
一度だって、マッサージなんかしてくれた事がないんですのよ…ここでもまた差
が付いてしまいますわね…本当に「何から何まで」次長さんの方が優ってますわ
ねぇ…」
私「次長、本当にいいんですか?」
「あぁ、本当に遠慮はいらないんだよ、こんなに気を費ってくれた城之内さん夫
妻への感謝の気持ちだから、全く気にしないでくださいよ」
私「本当にすいません…全く、お前も調子に乗っちゃって…次長にマッサージさ
せたなんて分かったら、来週、職場で何言われるか分からんぞ…西川君もこの事
は皆には内緒にしといてくれよ」
西川「当然ですよ、上司である課長の命令は絶対でありますから!ハハハハハッ
…」
「本当にお前は、調子のイイ奴だよなぁ…おい、せいぜい20分位にしとけよ、次
長、本当にすいませんがよろしくお願いします。」
次長「いや、本当に遠慮はいらないから、「奥さんの体」は、私に任せてくださ
いよ…でっ、どちらの部屋でやりましょうか?」
眞澄「奥の和室でどうですか?」
次長「…畳ですか…下は余り固くない方がいい…それと、横になれる所がい
い…」
眞澄「…そうですか…じゃあ、2階の寝室でもいいですか?」
次長「寝室?ベッドですよねぇ…そうだ、そこにしましょう」
………そうして、二人は2階の寝室へと上がって行ったのです。
西川「…お二人さんは、居なくなっちゃったし…課長、囲碁でも打ちません
か?」
「あぁ、そうだな、囲碁でもしながら待つとしようか」
私と西川君は、職場の囲碁倶楽部のメンバーでした。
……そうして、私達は和室に場所を移し、時間潰しに囲碁を打ち始めました。
西川「それにしても課長、次長と来たら、随分と奥さんに御執心じゃありません
か?あのセクハラ・パワハラ次長があんな穏やかで紳士的な対応なんて、滅多に
見れるもんじゃあないですよ、今日で相当ポイント稼ぎましたね、これで課長の
次の人事は、バッチリじゃないですか」
私「まぁ、次の人事の事は俺には分からんが、あんなに喜んでくれて、内心ホッ
としてるよ」
「でもね課長、次長には気を付けた方がいいですよ、何せ女性には手が早いんだ
から…あの人が内の役所に来て噂のあった女性は、僕の知ってるだけで5人はい
ますからねぇ…」
「…あの人は、若い娘が好きなんだろう、50も過ぎてとうのたった部下の女房な
んかには、まさか手は出さんだろうさ…」
「ところがそうでもないんですよ、若いのから熟女まで、ストライクゾーンが広
い、広い、僕が思うには課長の奥さんなんか、ズバリあの人のタイプだと思うん
ですけどねぇ…何か見てると、奥さんの方も満更でも無さそうだし…さっきなん
かハラハラしてましたよ…」
「酔ってたんだろうさ、二人とも相当飲んでたからなぁ…酔っ払いなんてのはあ
んなもんだろう」
「そうやって多寡をくくるのは良くないんですよ、さっき奥さんを見る次長の目
を見ましたか?まるで、獲物を狙う鷹のような鋭い目付きだったじゃないです
か?」
「バ~カ、考え過ぎだよ、くだらん事を言ってないで早く打てよ」
……そんな馬鹿話をしながら、囲碁を打っていると…
二人が上に上がってから20分程も経った頃だったでしょうか……
上の方から、ミシッ、ミシッ、ギシッ、ギシッ…と何やら軋むような音が聞こえ
て来たのでした…
……ミシッ…ミシッ…ギシッ…ギシッ…ミシッ…ギシッ……
私は、最初、飲めないお酒を次長に勧められ、いつもよりアルコール量が入って
いたので、酔って気のせいかと感じていたのですが、断続的なその音は止みませ
んでした。
西川「…着いたのが6時半…今10時半…たった4時間!早えぇ!マジ速攻すか!」
……それまで饒舌だった西川もすっかりと黙り込み、時折、私の方に気の毒そう
な哀れんだような視線を向けて来るのでした。
ミシッ…ミシッ…ギシッ…ギシッ…ミシッ…ミシッ…
その後も、断続的に聞こえて来る2階からの音を聞きながら、私と西川はおそら
く同じような想像をしながら、黙々と囲碁を打ち続けていました。
……そんな状況が20分程も続いたでしょうか、2階からの音はピタッと止みまし
た。
そうして、さらに10分程もすると、二人は2階から降りて来たのでした。
……………
次長「いやぁ、実に揉みごたえのある、思った通りの【素晴らしい肉体】だった
よ、どうだった奥さんは?」
眞澄「えぇ、随分とスッキリしましたわ、次長さんたら、本当に【お上手】なん
ですもの…出来れば、もっと時間を掛けて欲しいくらいでしたわ…」
「そうだろう、そうだろう…さぁ、君達、これから飲み直すぞ、ほらっこっちに
来なさい」
私と西川は、次長の言葉に促されて、再び、応接へと戻りました。
私達に声を掛けると、次長はどっしりとソファに腰を下ろし、妻も即座に次長の
隣にピタッと体を寄せ合うようにして座っていたのです。
私は、西川と並んで、その向かいに座り、二人の様子を伺うと、先程とは明らか
にその雰囲気が違っているのを感じました…
妻の髪型は、やや乱れており、さらに次長はというと、白いワイシャツの襟の部
分がうっすらと朱く色付いていたのです。
次長「さぁ、奥さん、もっともっと飲めるんだろう、まだワインもあるからな、
さぁ、グウッと行って、グウッと…」
眞澄は、次長に注がれるままに、またもワインをグウッと半分程飲み干していま
した。
「とっても美味しいですわぁ…私、何だか今日は随分と飲んでしまって…とって
も気持ちがいいんですのよ」
「私の方こそ、こんな美人な奥さんと一緒に飲めて最高に気分が良いよ、こんな
美味しい酒は滅多に飲めるもんじゃないからねぇ」
「あら、まぁ、本当に次長さんたらお上手ですこと、私の方こそこんなに美味し
いお酒は久しぶりですのよ、やっぱり素敵な男性と一緒だと気分まで違います
わね」
「お互いに最高の気分で美味しく酒が飲めるなんて、結構な事じゃありません
か…それなら、もっと美味しく飲める飲み方があるんだよ…」
……そう言うと、次長はワインの瓶を口に含み、いきなり妻の肩を抱き寄せ、妻
に口移しでワインを飲ませ始めたのです。
突拍子のない行動に、私と西川は呆気に取られてしまいました。
突然の冗談のような次長の行動に、当然、すぐ離れると思いきや、二人は私達の
目の前で唇を重ね、中々、離れようとはしませんでした。
次長は、妻の肩にがっちりと手を回し抱き寄せ、妻の方も次長の腰にしっかりと
手を回していたのです……
……さらに、あろうことか…まるで私達に見せ付ける様に、二人はお互いの舌を
絡め出したのです。
……1分…2分…3分…と、暫くそんな状況が続き、二人の口元からは涎が滴り落
ちていました。
……この時、既に、缶ビールが14,5本、ワインを3本ほとんど二人で空け、相当
に酔い、理性などはおそらく吹き飛んでいたのでしょう…
…それと、方や名うての女好き、方や好色な熟女…言わば二人は、似た者同士で
した…きっとお互いの相性が、こんな僅かな時間にも拘わらずピッタリと一致し
たのでしょう…こんな二人にとっては、私達の目の前でこの程度の事をするの
も、何の躊躇いもないように思えました…
………
西川「うっわぁ、大胆!課長の前でそれはないでしょう、いくら何でも…」
……西川の奇声で、ようやく二人は接吻を止めました。
次長「…いやぁ…済まん、済まん…城之内君の前だったな…ついつい、酔ってし
まって…」
……と、言いながら、唇は離したものの、未だしっかりと眞澄の体を抱き寄せ、
左手では眞澄の太腿を撫で回しながら、その邪悪な目を私に向け、勝ち誇ったよ
うな表情を浮かべていたのでした……
(続く………)
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