* …野菜の売店の前からやっと立ち上がった妻は、ニヤッと妖し気な笑みを浮
かべながら、男たちの方へ歩み寄って行ったのです…
そして、そのまま脚を止め、彼等の輪の中に入り何やら楽しそうに話しを始め
たのです…
男の1人が、自販機で缶コーヒーを買い妻に渡しました。
4人で、缶コーヒーを飲みながら楽しそうに話しをする光景を、車の中から眺め
ながら、さらに私のイライラは募っていました。
…20分で戻るという私との約束を無視し、見知らぬ男たちとの会話に実に楽し
そうに惚ける妻に、段々と怒りを覚えていました。
4:13…4:14…4:15……車のデジタル時計が、刻一刻と時を刻んでいます。
(初対面の男たちと、一体、何をこんなに長く話しをする事があるのか?……)
私には、全く理解が出来なかったのです。
さらに、話し込む妻は、実に楽しそうに笑いながら、馴れ馴れしく男の腕を軽く
叩いたりしています。
そんな様子に一層腹が立ち、また、イライラが募り本数が嵩んだタバコで車内
の空気が悪くなったので、窓を開閉しました。
眞澄「…本当?も~うみんな口が上手なんだからぁ……」
「……ねぇ、奥さん、また、ちょっと写させてくださいよ、ほらっ、あそこのベ
ンチに腰掛けて…」
男の指は、彼等の横のソフトクリームハウスの前にあった白い木製のベンチを差
していました。
眞澄「えっ、あのベンチに座ればいいのかしら?」
「えぇ、お願いします、いい被写体になりますよ。」
妻は、ゆっくりとその白いベンチの方に向かいました。
そして、ベンチに腰掛けると、脚を大きく組んだのです。
眞澄「こ~う?こんな感じでいいのかしら?」
今度は、3人それぞれが携帯を向け、しゃがみ込み下のアングルから舐めるよう
に、妻の姿を写しているのです。
ムッチリとした白い脚が、妙に艶めかしく、ピッタリとフィットしたサンタンブ
ラウンのメッシュのハイソックスが、妖しい光沢を放っていました。
「そう、そう、バッチリですよ、とっても色っぽいですよ、奥さん…」
「せっかくだから、奥さんと一緒に記念写真でも撮ろうや」
男は、ベンチに歩み寄ると、妻の肩に手を回しました。
「奥さん、もう少し顔を寄せて」
二人は、ピッタリと体を寄せ、頬をくっつけ、妻は片方の手でピースサインを出
しながら満面の笑みを浮かべていました。
他の二人も同様に、妻とのツーショットを撮り終え、やっとベンチから立ち上が
り、再びバイクの方に戻りました。
最後の男は、妻の腰に手を回し、妻もピッタリと体を寄せていたのです。
バイクに戻ると、男が何やら妻に耳打ちをしています。
妻は、ニコッと微笑み、コクンと頷いていました……
眞澄「じゃあ、また後でね…」
……そうして、やっと妻は、彼等から離れ車に戻って来たのでした、この時には
もう16:30でした。
………
私「一体、何時間待たせるんだよ!もう、1時間も経ってるんだぞ!20分って
言っただろう!20分って!何、俺の話聞いてんだよ!」
眞澄「…ごめんなさい、あなた…だって新鮮そうなお野菜がたくさんあったんで
すもの、ほらっ、こんなにたくさん買っちゃったのよ」
妻は、申し訳なさそうに、たくさんの野菜の入った白のビニール袋を、私に向け
ました。
私「野菜のことじゃないよ!どこの馬の骨か分からん男達と長い事話こんで!あ
いつら知り合いなのか?」
眞澄「いいえ、ここで初めて会ったのよ」
私「初めてにしては、随分親し気に話してたじゃないか!」
眞澄「この辺のこと、いろいろと聞いて来たのよ、札幌から来てるんですって
よ」
私「どっから来ようが、俺には全く関係ないよ!とにかくお前の時間のルーズさ
に怒ってるんだ!いい加減にしてくれよ!全く…」
眞澄「…分かりましたから…もう、そんなに怒らないで…これからきちんと気を
付けますから…」
私「………」
眞澄「ねぇ、あなた、ほらっ、この道を行ったところに月形の温泉があったで
しょ?せっかくだから、ちょっと寄って行かない?」
私「…どうしたんだよ、突然、そんなこと言い出して…」
眞澄「ほらっ、もう10年位前になるかしら、あなたと一緒に行ったことあったわ
よねぇ、私あの温泉、結構気に入ってるのよ」
眞澄の言うとおり、もうかれこれ10年近く以前に、家族でドライブを楽しんだ
際に、立ち寄ったことがある湯質がよく広目のかなり良い温泉でした。
私「そうだな、せっかくここまで来たんだから、久し振りに入っていくとする
か」
……………
そうして、私達はR275号線沿いにある月形町の温泉へと向かいました。
ここ浦臼の道の駅からは、約20分位の距離です。
運転中、ふとバックミラーを覗くと、3台のバイクが私達の後を追って来ている
のに気付きました。
私「…あれっ、後ろに来てるバイク、さっきの道の駅にいた人達じゃあないの
か?」
妻は、少し後ろを振り返り…
眞澄「…あら、そうみたいねぇ…あの人達、札幌から来てるって言ってたから、
もう夕方だし、きっと帰るんじゃないかしら…」
私「…そうか、札幌からだったな」
……………
車で、20分ですから、間もなく到着しました。
この温泉は、確か出来上がってからは、もう20年位経つはずですが、公園と一体
になったR275沿いの観光スポットの一つです。
休日の割には、それほど車は停まってはいませんでした。
館内に入り、販売機で二人分の入浴券を買い、受付に渡していると、
妻は、受付カウンターの端の方で、何やら従業員と話をしていました。
眞澄「…お部屋の料金はおいくらなの?」
「いえ、飲み物か食べ物を注文して頂ければ、お部屋の料金は掛かりません
が…」
眞澄「あら、そう、じゃあ一番奥のお部屋をね…」
「はい、かしこまりました」
……妻が、私のところに戻って来ました…
私「どうした?何かあったのか?」
眞澄「いえ、何でもないわよ」
私「じゃあ、何時にする?今ちょうど5時だから、1時間くらい6時に大広間でい
いか?」
この温泉は、1階に入浴客が寛げる大広間があり、その奥の方に個別に食事など
が出来る個室が3部屋ほどあるのでした。
眞澄「…久し振りだからねぇ、ゆっくり入りたいわ…2時間…いや2時間30くらい
入りたいわねぇ…7:30…8:00でもいいわよ」
私「へぇ、お前にしては随分と珍しいじゃないか、いつもは1時間どころか40分
もあれば充分なのに…」
眞澄「…えっ、えぇ、ここ、久し振りだし、湯質がお肌にもいいからゆっくりと
入りたいのよ…あなたもサウナや露天好きでしょう、ゆっくり入って来てよ…」
私「そうか、分かった、じゃあ8時に広間な」
眞澄「はい、ゆっくりゆっくりして来てよ、8時ですからね…」
……………
そうして、私は男湯の暖簾を潜りました。
……私が、髪や体を洗っていると、自動ドアが開き、体格の良い男性3人が入っ
て来て、いきなり浴槽に入っていきました。
……………
「いやぁ、ラッキーだったねぇ、今日は…」
「あの熟、結構いけてるよなぁ?ムッチリとした肉感的な肉体して、おまけに何
だか好きそうな顔してさ」
「大体、亭主と一緒の時に俺たちと約束しなくてもいいだろうになぁ…」
「きっと欲しくて、欲しくてたまらなかったんだろ、顔に欲求不満ですって書い
てるよ」
「さっき、一緒に写した時に、ちょっとスカートん中触ってやったらさぁ、もう
少し湿らしてんだから、全くどうしようもない好きモノだよ、ありゃあ…」
「しっかし、部屋まで用意して俺たちと姦ろうなんて、根性入ってるって」
「さぁ!さっさと上がって戦闘開始と行くかっ!」
私は、体がカァッと熱くなるのを覚えました。
その話し声の主は、先程の道の駅の男達でした……
(続く……)
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