《後日談》
* あの夜の事件から、約一月が過ぎた4月23日、仕事を定時に終えお店に顔を出
してみることにしました。
「あんな事」がありましたが、私達は普通に生活を営んでいたのです。
ただ、「あれ」以来、妻の容貌に随分と変化が現われ始めたのです。
まず、髪型と髪の色が変わりました。
それまでの黒髪から、明る目のブラウンに染め、大きなウェーブのパーマをかけ
ボリューム感のある髪型にしました。
それと、装飾品も変わりました。
20万はしそうなカルティエのゴールドのネックレスや今迄身に付けなかったゴー
ルドのブレスレット、さらにアンクレットまで…
ブレスレットは、どこかで見た覚えがありましたが、「あのタケシ」のものと同
じような感じでした…
ストッキングも、前から妻はレッグファッションに凝り、ガーター物や柄物など
いろんな種類を履き、2,000円程度の上質のを好んでいましたが、最近はさらに
高そうな舶来物を身に付けるようになったのです。
お店には、6時半頃に着きました。
ママ「あっ、……ノブさん、……」
二人は、顔を見合わせたまま、暫く沈黙が続きました。
暫くして、ママが重い口を開いたのです。
ママ「……ノブさん、ごめん、本当にごめんなさい、…眞澄さん、朝まで帰らな
かったんですってね…」
私「…知ってたの?…誰かから聞いたのかい?」
ママ「…えぇ、あの後もタケシちゃん達来てくれてるから、…私が奥さんに頼み
さえしなければ、「あんな事」にはならなかったのに、…謝っても謝りきれない
わ…」
私「…仕方ないよ、もう過ぎた事だから、…あの時、俺も許しちゃったんだか
ら、ママだけの責任じゃないよ。」
ママ「…そう言ってくれると、私も少しは救われるけど、…何だか取り返しの付
かない事をしちゃったんじゃないかって、ノブさんに悪くて…」
私「…どうせ、一夜限りのアバンチュールってやつだろうから、まぁ、事故だと
思えば、特に拘りはないさ…」
ママ「………」
ママは、複雑な表情で、視線を反らせていました…
二人の間に、また沈黙が続きましたが、その時、ドアが開きミヨちゃんが入って
来ました。
ミヨ「あらぁ、久しぶりですねぇ、元気でしたか?もう半年位いらしてないです
よねぇ。」
私「うん、1月位前に家のやつと来たんだけど、ちょうどミヨちゃん、お休み
だったよ。元気そうだね。」
ミヨ「えぇ、それだけが取り柄なんで。今日はお一人ですか?役所の人か眞澄さ
んと?」
私「いや、一人だよ。ちょっとママと話があってね。」
ママ「………」
ミヨ「へぇ、そうなの、何だか神妙ね。大人の事情ってやつかな?」
ママは、まだ気まずそうに黙っていました…
ミヨ「奥さん、最近、また雰囲気変わりましたよねぇ、前から綺麗で色っぽかっ
たけど、何だかお色気に磨きがかかった感じよね。」
私「えっ?何?最近、家のやつに会ったの?」
ミヨ「先週、お店に来てましたよ……」
ママが、とっさにミヨちゃんに目配せし、小首を横に振っています。
私「……先週、来てたんだ…1人で来てたの?」
ママとミヨちゃんは、目を合わせ黙り込んでしまいました。
私「誰と?…誰かと一緒だったの?」
依然として二人は黙り込み、その場に気まずい雰囲気が流れていました。
すると、ドアが開きお客さんが入って来ました。
ママ「あら、山ちゃんにハーさん、今日は早いわねぇ。」
年配客「またママとミヨちゃんの顔見に来たよ。」
おじさん達は、カウンターの奥の方に座りました。
見覚えのある顔だと思いましたが、そう、「あの夜」、別のボックスにいた年配
客でした。
彼等もこちらをチラチラ見ています。
おじさんの一人と目が合いました。
年配客「…どちらかで、会ったことあるよねぇ?どこだったかなぁ…」
ママ「あら、山ちゃん覚えてたの?ほら、眞澄さんのご主人よ、「あの眞澄さ
ん」の…」
年配客「眞澄さんって?……あぁ、あの遊び人のあんちゃん達の女か…」
ママ「ちょ、ちょっとぉ、なんて失礼な事言うのよ!この方が、ご主人なのよ、
本当にもう、…こんなから酔っ払っちゃって。」
年配客「いや、済まん、済まん、失礼しました。で、今日はお一人ですか?」
私は、余りにも無神経な言葉にムッとしていました。
私「…えっ、えぇ、まぁ…」
年配客「あっ、そう…そう言えば、奥さんは先週もその前も「あのあんちゃん」
と一緒に来てたもんな…」
今度は、ママがおじさん達に目配せし、人差し指でシッと合図をしていました。
年配客「えっ?何?何よ、ママ?内緒なの?…止めろよ、そう言うの、秘密主
義ってのは良くないよ。」
私「ママ、本当かい?先週もその前もって?…」
ママ「……えっ、えぇ、…ごまかしてもしょうがないから、本当の事教えてあげ
るわ、…来てたわよ、タケシちゃんと一緒に…」
年配客「そう!あのスケコマシとずうーっと一緒に居たんだよな!」
「あの夜」この店での帰り際に見た、妻とタケシとの濃密な接吻シーンが思い浮
かび、嫌な気分になりました…
ママ「…この際だからはっきり言うけど、あの二人、一夜限りのアバンチュール
では終わらなかったみたいよ…もう完全に男と女のお付き合いしてるのよ…だか
ら、私、責任感じちゃって…」
ママは、そこまで言うと、言葉に詰まってしまいました…
年配客「先週なんて、奥のボックスでピッタリくっ付いて、ずうーっとイチャイ
チャしてたもんなぁ、あの二人はもう完全に出来上がっちゃってるよ。まぁ、あ
の色男のお陰で、奥さんの立派な下半身をたっぷりと拝まして貰ったからねぇ…
色男様々だよ。」
ママが、吹っ切れたように口を開きました。
ママ「二人ともお酒が強いし、お洒落だし、話も随分あうみたいで、お似合いな
のよねぇ。」
(亭主の前で何て失礼な事を言うんだ!あんたに責任があるんだろう…)
年配客「それと、奥さんの雰囲気変わったよねぇ。どんどん色っぽくなってる
よ。あれは、完全に奴のせいだよ。奴のために女を磨いてんだろうなぁ。結局、
夫婦でも、恋人でも、赤の他人でも、男と女は、肉体の相性だよ…俺あ、「あの
夜」見ちゃったもんなぁ、あの色男のデッカいマラ、ビンビンに勃起して20cmは
あったよ、それもブツブツしててよぉ、奥さんにそれを咥えさせてたんだよ、…
あんなの一度味わっちゃったら、もう離れられないよなぁ…旦那さん、先に帰っ
たけど、どうせあの日の内に姦られちゃったんだろう…悪いけど、あんたじゃあ
絶対に適わないわなぁ…」
ママ「…そう、私も見ちゃったけど、タケシちゃんの凄かったもの…私もこの歳
になるまで、それなりにいろんなの見て来たけど、あんな凄いの初めて見たわ…
あれじゃあ、眞澄さんも離れられないわよ…」
二人の話は、もう私に対するリンチのようなものでした…
これでもか、これでもかと、傷口に塩を擦り込むように…
私「もういい、もういいよ、愉快な話じゃないよ。」
年配客「だけどな、旦那さん、気を付けた方がいいよ、あの色男、堅気じゃあな
いだろう、お金だって、セックスだって、我々の感覚と全く違うんだからさぁ。
奥さん、完全に調教されちゃうよ…」
ママ「そう言えば、二人が出会ったのが眞澄さんの誕生日だったからって、あの
後、タケシちゃん、相当高価なカルティエのネックレスをプレゼントしてたわ
よ。」.
ミヨ「何だか、眞澄さん、洋服の雰囲気も変わって来ましたよねぇ。」
実際、最近、妻は外出の際には、胸元が大きく開いた服を好んで着るようになっ
ていました。
これも全て彼氏であるタケシの趣味なのでしょう…
ママ「それに、ストッキングの感じも変わったわよ。私なんかとても履けない舶
来物の高そうなストッキング履いてるものねぇ。」
年配客「そう、全部、ぜーんぶ、あの色男の好みに合わせてんだろう…悪いけ
ど、旦那さん、もう手遅れだわ…それはそうと、あんた、あれから奥さんとやっ
たの?」
私「…いや、あれからは、一度も…」
年配客「益々、まずいねぇ…あんたがそうしてる間にも、お二人さんは毎日のよ
うにセックスやり捲ってるよ、間違いないよ、何せ相手は遊び人だからなぁ…」
寝取られの興奮を通り越して、やりきれない後悔の気持ちに苛まれていまし
た。
(完)
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