Chapter Ⅳ 稼ぎたい女には・・・・
奈穂美が一区切りついた感じの、翌日の水曜日。訓練が始まって10日めに
もなり、ぼちぼち飲み会でも・・・・という話がランチタイムに出始めた。男1
人なんで、幹事っていうかまとめ役みたいな立場が回ってきた。面倒だが、
あまり接点のなかった子と話すチャンスでもあった。
その1人が、元銀行員の和佳子。ランチも別グループも女子3人で、授業が
終わると、ササッと帰っていく。ちょっと様子伺いで午後の授業に観察して
みることにした。
PC・簿記以外にも訓練科目があり、労働法とか、面接指導もあるのだが、
ちょうど午後から労働法なので、みんな資格狙いの連中は一生懸命自主勉の
テキストに熱中し、だれも授業聞いてない。和佳子の席は後方から2列目
で、ちょっと離れていた。
授業が始まってしばらく経ってから様子を見ていると、テキストは開いてあ
ったが、全く見ていない。イスに座ったまま、ヒジを机について、目線は机
に向いているように見えるが、体は固まったまま。コイツ、寝てやがる!
結局、午後からの時間ほとんどお休みなさい状態だった。授業が終わり、ま
たサッサと片付けて廊下に出て帰っていく。
その後、こっちも片付けて学校を出たところで、電話の会話が聞こえてき
た。「はい、すみません。大丈夫です。明日には必ず・・・・本当ですから・・・ハ
イ」とかなり低姿勢。うーん。借金の返済?かなんかの連絡みたいだ。とち
ょうど電話を切った和佳子と目があってしまった。
「何か・・・・大変そうですね!」「あっ、いえ。聞こえてました?ゴメンナサ
イ。みっともないところ、聞かれちゃった」とクスッと笑った。
そこから駅まで並んで歩く。「お疲れみたいですね。授業キツイですか?」
「えっ?どうして?」「だって授業中お疲れモード・・・でしたよね。見ちゃい
ました!」「バレてました?」「いや、でも先生も何も怒らないからいいん
じゃないですか?」とフォローしておく。
誰かに話したかったのか、そこからいろんな情報が出てきた。2年前に結婚
した直後にダンナが転職したが、その先の会社が今危ない状態で、ボーナス
はもちろん、給料もキチンと出なくなり、自分の仕事は、結婚したら辞めろ
という銀行の風潮もあって続けづらい環境に回されたあげく、上司の見え見
えのパワハラで退職を選択したらしい。
生活のため、失業手当の支給開始までの3ヶ月を乗り切るため、コンビニの
バイトを始めたばかりだという。再就職のため、結構追い詰められている感
じだ。その点で共通しているコトを話していると、いい求人情報あったら教
えてくださいねと頼まれた。
そうか!と閃いた。こういう人妻には、もっと楽に稼げる方法を教えてあげ
ちゃうと心もカラダも悦んでもらえそうかな・・・
ちょっと作戦を立ててからまた、アプローチしてみよう!
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