◆約束の日⑥
土曜の昼間だと言うのに、車内は大変な込み様だ。
電車が走り出し、
吊革に掴まった私達は窓の外の流れる景色をお互いに無言のままで眺めていた。
電車が揺れる度に、吊革を握る拳に力を入れながら揺れに身を任せる。
隣に立つ綾子の躰からは、言い様のない甘い香りが漂っている。
その時だった‥
私の右隣に立ってる綾子が急に躰を擦り寄せる様にしながら、
左腕を私の右腕に絡ませると私の腕を握りしめ、
躰を密着させてきた。
私は‥どうしたのだろうと思い、
視線を移し綾子の顔を覗き込んでみた。
俯いたままの彼女は顔を赤らめ、眉間にシワを寄せ唇を噛み締めていた。
‥?‥気分でも悪いのか‥?
私は心配になり、
小声で綾子に尋ねてみた。
「どうした‥?
大丈夫か‥?
気持ち悪い‥?」
綾子は唇を噛み締めたまま、
無言で顔を左右に小さく振っている。
今にも泣き出しそうな表情を浮かべ、
苦痛に耐えている様に見えた…
その様子を見て、
私はこの時初めて、〃ピーン〃ときた。
吊革を掴んだ左腕に力を込めて、
腕を伸ばしながら上半身を反転させ、
綾子の下半身に視線を落としてみた。
‥痴漢!!‥
‥マジか!!‥
綾子の後方に立って新聞紙を折り畳み、片手で新聞を読んでいるスーツ姿のサラリーマン風の男の左手が、綾子のスカートの中で怪しく動いていた。
それだけではない‥
綾子の右隣に立った男の左手も、
スカートの中で綾子の臀部をまさぐりながら微妙な動きをしていた。
その男は正面を見たまま澄ました顔で窓の外を眺めていた。
何と言う事だ…
憧れの綾子の臀部が、何処の馬の骨とも分からぬ見ず知らずの二人の男の手で、汚されていたとは…
何て奴等だ…!
私でさえ、まだ触った事もない綾子の尻を…
その光景を目の当たりに見せられた私は一気に頭に血が昇り、
咄嗟にドスの効いた低い声で、
二人の男達を睨みつけながら言葉を吐き捨てていた。
「おいッ‥!!
お前ら人の女房に何やってんだッ‥!」
一瞬にして男達の手が綾子のスカートの中から飛び出した‥
私の声に気づいた周囲の人々の視線が一斉に男達に注がれる。
二人の男達は突然の事に余程驚いたのか、顔を伏せたまま黙り込んでいた…
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