◆約束の日⑤
「遅くなってゴメン‥待った‥?」
「んーん‥、私もついさっき来たとこ‥!」
「そう‥
じゃあ行こうか!」
「‥うんッ‥!」
店を出た私達は、
連れ立って駅前広場に向かって歩いて行く。
「何処に行こうか‥‥?
綾ちゃん‥何処か行きたい所とか有る‥‥?」
「うん、有る‥!」
一応、私は自分なりに予定を考えてはいたのだが、
先に綾子の希望を聞いてみてからと思い尋ねてみた。
綾子も自分なりに行きたい所を前もって考えて来てたみたいだ。
「‥何処‥?」
「‥井の頭公園‥!
お天気が良いから公園を散歩してみたいの‥!」
「井の頭公園かあ!そう言えば暫く吉祥寺も行ってなかったなあ‥
何か懐かしいなあ‥分かった‥!
じゃあ行こうか‥!」
「うん、行こう!」
綾子は嬉しそうに満面の笑みを浮かべている‥
私達は改札を通って渋谷駅まで行き、
井の頭線乗り場のホームに立つと、
電車が 入って来るのを並んで待った。
「今日‥お姉ちゃんは‥?
お家に居るの‥?」
電車を待つざわついたホームで、
突然綾子が尋ねてきた。
私を見つめる綾子が心配そうな表情で私を見ている‥
「いや‥出掛けた‥今日は昼から陶芸教室の生徒達全員で、鎌倉に行くんだって言って昼前に出掛けたよ‥!」
「‥‥ふ~ん‥‥
‥‥‥‥‥‥‥ そうなんだあ‥‥」
そう答えた綾子は、何かを言いたげにしていたが、
それ以上、綾子の口から妻の事について言葉が吐いて出る事はなかった。
「今日結衣ちゃんは ‥?
お母さんに預けて来たの‥?」
「うん‥!
お昼からお仕事だって言って出て来ちゃった‥!」
「そうかあ‥
‥‥‥‥‥‥‥ 何か後ろ髪引かれるなあ‥‥」
「お互いにね‥!
‥‥」
綾子がポツリと呟いたその言葉の後、
何故か私達は無言のままで電車が来るのを待ってしまっていた。
お互いに、家族に対しての後ろめたさを感じとってしまったからだと思う‥
電車がホームにはいって来てドアが開き‥
人の波に 押される様に、
車内奥へと押し込まれながらも、
何とか二人並んで吊革に掴まる事が出来た。
※元投稿はこちら >>