◆綾子の告白⑦
綾子は何かを考え込むかの様に無言のままで返事をしない。
「綾ちゃん‥?」
私は再度、声を掛けてみた。
じ-っとテレビ画面を見つめたまま、
私の問いに答えないでいた綾子が、
意を決したかの様に視線を移し、
私を見つめたまま呟き始めた。
「ジロー兄は、私の事どう思ってる‥?」
‥‥‥‥‥‥‥
「どうって‥
そんな突然言われても‥‥」
この時私は、
私に向ける綾子の気持ちは既に理解出来ていた。
そして私自身も、
綾子の事を義理の妹としてではなく、
一人の女として意識をし、好きになり始めていた事は事実だ。
しかしそれはあくまでも恋愛感情を省いた性の対象者としての感情でしかないのだ。
今ここで私が彼女に、〃好きだ〃と答えてあげれば多分彼女は心から喜ぶだろう。
私の口からその言葉が告いて出る事を彼女が待ち望んでいるのが解るからだ。
しかし、私は怖いのです。
綾子にその言葉を告げた事によって、
彼女が私に本気になってしまい、
夢中になりすぎた彼女が妻に告白でもしてしまったら全てが終わってしまう。
「私の事、何とも思ってないの‥?
‥‥‥‥‥‥ 何とも思っていないのにあんな事したの‥?」
「そ、そんな事はないよ‥!
ただ‥俺には良子がいるから‥ 」
私の言葉を聞いた綾子は私から視線をそらすと俯いて、
静かに語り始めた。
「そんな事は解ってる‥
ジロー兄がお姉ちゃんの事愛しているくらいの事、見てたら解るよ‥
そうじゃないの‥!ジロー兄が私の事をどう思っているのかを知りたいだけなの‥!
‥‥‥‥‥‥ 本当は私‥
一生、自分の気持ちをジロー兄に打ち明けるつもりなんかなかったのよ‥
‥‥‥‥‥‥ ジロー兄の事が好きだったから遠くから見ているだけでよかったの‥
‥‥‥‥‥‥‥
でもこの前
ジロー兄にあんな事されたから自分の気持ちを抑えきれなくなってしまった‥
だからってこの前の事をお姉ちゃんに話すつもりなんか全然ないよ‥!
ジロー兄にはずーっと幸せで居て欲しいもん‥!
‥‥‥‥‥‥‥ だからジロー兄から本当の気持ちを言って欲しいだけなの‥!」
この時、初めて綾子の本心を知る事が出来たと確信した私は思いきって告白をしてみようと思った。
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