◆義妹・綾子⑨
私はこの隙に‥
予めポケットに隠し持っていたバイアグラ一粒を、
ワインで喉の奥に流し込み、
綾子のワイングラスには媚薬(花痴)一瓶を注ぎ入れると急いでマドラーでかき混ぜた。
間もなくしてトイレから戻って来た綾子に何食わぬ顔で、
改めて乾杯しようと言い、
グラスを合わせると、難なく媚薬入りのワインを綾子に飲ませる事に成功した。
ほろ酔い気分の私は何気なしに綾子の顔を見ると‥
綾子が私の顔をジーと見つめているではないか‥
その表情から私は‥
綾子が私に何かを言いたそうにしているのではと感じ取っていた。
「あ‥綾ちゃん‥どう最近は‥?
新しい彼氏とか出来た‥?」
私は咄嗟にそんな事を尋ねていた。
「彼氏なんか出来る わけないわよ~‥!職場は女ばっかりだし‥!
いくら実家だからってそうそう結衣をお母さんに預けて外出なんか出来るわけいかないしね‥!
出逢いなんかちっとも無いわ‥‥!」
綾子は離婚後実家に戻り、生活の足しになればという事で、フルタイムではないが時給が良いからと某TVショッピングのテレホンオペレーターの仕事を平日だけしているのだ。
「それに‥
彼氏が出来て惚れたら惚れたでまた浮気の心配するのって疲れちゃうし‥!
男の人に浮気しないで欲しいって求める方が無理なことでしょう‥!
だったらこっちも最初から割り切って付き合える相手を選んだ方が気が楽かなって思っているの‥
でもやっぱり愛情が無いと嫌だしね‥
だからなかなかそんな人とは出逢えないわ‥!」
頬を赤く染めて呟く綾子のその表情が
その時の私にはどことなく寂しげに映った。
綾子の離婚の理由は旦那の浮気‥
それもお互いが相当本気になってしまったのが原因で別れてしまったのだ。
「ジロー兄浮気は?した事は無いの‥?お姉ちゃんには黙っといてあげるから言ってみて‥?」
「な‥無いよ‥!
お‥俺は良子一筋だよ‥!」
「ヒャーァ、ハ、ハハ、‥嘘っぽい‥」
私は思わず返事に詰まってしまい、見事に綾子に嘘を見破られてしまったと感じてしまった。
しかし何故か綾子はそれ以上の追及はしてこない‥
「それならね‥
もしもね‥?
もしも、お姉ちゃんが浮気をしていたら‥ジロー兄‥どうする‥?」
そう言うと‥私を見つめる綾子の表情が急に真顔になった様に見えたのだ。
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