念入りに身体を洗い急いで夕飯の支度をしてると宏樹が帰ってきた。
(なんとしても気付かれないようにしないと…)
友美は自分に言い聞かせ明るく努める決意をした。
『お帰り~遅かったわね!もうすぐ夕飯できるから。お父さんももうすぐ帰ってくるわよ。』
『あぁ…俺、飯食ってきたからいらないや』
いつものようにぶっきらぼうに答えるとドタバタと階段をあがり自分の部屋に入っていった。
(大丈夫。気付かれないわ。しっかりしなくちゃ)
友美は部屋に入った宏樹がなにかに気付くのじゃないかと不安で落ち着かなかった。
するとすぐに
バタン。ドタドタドタ。
宏樹が階段を駈け降りてくる音がした。
友美は心臓が飛び出しそうなほど呼吸が速まり一瞬で顔面蒼白になった。
『ど、どうしたの?』
『どうしたのじゃねぇよ!勝手に部屋に入っただろ!余計な事をするなよ!もうガキじゃないんだからな!』
『なによ。あなたが掃除をしないからお母さんがしなきゃなんじゃない。嫌ならきちんと掃除なさい!!』
『ちぇっ。いいからもう勝手に部屋に入るなよ!』
そう言うと階段を駈け登り部屋に戻っていった。
(あぁ良かった…)
友美は心底ほっとした。
(やっぱ母ちゃんは普通だな。徹くんの相手が母ちゃんのわけないもんな。馬鹿だな俺も。)
宏樹は宏樹でイヤな予感から解放されていた。
夫婦二人きりの食事だが友美は喉を通らない。
食欲などあるはずもなかった。
(どうした?具合でも悪いのか?)
さすがに普段は気が利かない宏樹の父親でも気付いたようだ。
『えぇ…さっきから少し体調が悪くて…風邪かも。休めば治るから心配いらないわ。』
『そうか。それならもう寝るといい。たまには俺が片付けしとくよ。』
『ありがとう。助かるわ。じゃあ先に休むわね。おやすみなさい。』
そういうと寝室に入っていった。
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