「あのさ……もし良ければだけど……」
ようやく口を開いたまりあは、こうたに向かってだった。
「出来たら……パートナーになって欲しい」
先ほどとは打って変わって、かすれるような震えた声でこうたに告げた。
「俺は最初からそのつもりだよ」
こうたは真っ直ぐにまりあを見つめて答えた。
「俺は蝶の数より、考察力に優れた君の方が魅力だからね」
まりあの顔に安堵の色が広がったが、すぐに不安げに曇った。
「私に出来る事はそんなに無いけど……」
その言葉を聞くよりも先に、こうたはまりあの手を引いて共有部屋を後にした。
戸惑うまりあやたくやにも構わず、暗い館内を歩き始める。
(まずはこのバタフライプリズンを知らなければならないな……)
こうたは心の中でそう決め、静かに探索を始めた。
暗く長い廊下を進むと、空気はひんやりと湿り気を帯び、紫色の薄い霧が足元を這うように漂っていた。
壁にはところどころ古びた蝶の装飾が施され、かすかな明かりが不気味に揺れている。
「こうた……さん」
まりあはこうたを見つめ、かすれた声で呼んだ。
目が少し潤んでおり、先ほどのゲームの余韻か、恐怖か——それとも別の感情か。
「私……パートナーになってくれるって、本当?
蝶の数とか……そんなの関係なく?」
「本当だ。
君の考察力が、この施設を脱出する鍵になると思う」
まりあはほっとしたように微笑んだが、すぐに視線を逸らした。
頰が薄く赤らみ、声がさらに小さくなる。
「……あの、もし私に何かできることがあったら……
言ってください。
私、こうたさんの役に立ちたいから……」
その言葉には、かすかな甘い響きが混じっていた。
こうたはまりあの手を再び取り、静かに言った。
「まずはこの館の構造を把握しよう。一緒に探すぞ」
二人は手をつないだまま、暗い廊下をさらに奥へと進み始めた。
背後から、てんしの小さな笑い声のようなものが、かすかに聞こえた気がした。
※元投稿はこちら >>