香織の意識は、恐怖の闇の中で完全に沈みかけていた。
(……もう……何も……わからない……
先生……先生……
名前を呼ぶだけで……少しだけ……繋がってる気がする……
でも、ここには……先生はいない……
この部屋に……この二人しか……いない……
指が……もっと……
ボタンが……外れていく……
肌が……空気に触れて……
冷たい……冷たいのに……
身体の奥が……熱い……
昨夜の先生の熱が……こんな恐怖の中でさえ……
蘇ってきて……
私……最低……
こんなところで……感じてる……
先生に……許してもらえない……
先生の香織じゃ……なくなっちゃう……
壊れる……
完全に……壊れる……
涙が……止まらない……
息が……できない……
心臓が……止まりそう……
お願い……
終わりにして……
誰か……
誰か……止めて……
もう……耐えられない……)
香織の唇が震え、
ほとんど息のような、
か細い声が漏れた。
「……やめて……
お願い……
やめて……
帰って……
お願い……お願い……お願い……」
声は途切れ途切れで、ほとんど聞き取れないほど弱い。
涙が頰を伝い、顎から滴り落ち、床に小さな染みを広げていく。
その染みが、ゆっくりと広がる様子を、ぼやけた視界の端でぼんやりと見つめながら、
香織の心は、静かに、しかし確実に、沈み始めていた。
部屋の空気は、限界を超えて張りつめ、
二人の息遣いが、香織の耳に直接響く。
次の瞬間、何かが起こる——
そんな予感が、彼女の全身を硬直させる。
意識の糸が、細く、細く、引き伸ばされ、
今にも切れようとしている。
香織は、ただ涙を流し続け、
先生の名前だけを、心の中で繰り返していた。
(先生……
先生……
先生……)
声にならない叫びが、
彼女の胸の奥で、永遠に響き続けていた。
しかし、ドアの外からは何の音も聞こえない。
足音も、ノックも、声も。
ただ、部屋の中の重い沈黙だけが、彼女を包み込んでいた。
二人の動きが、再びゆっくりと始まる。
指が、布地をさらにずらす。
香織の心は、完全に闇に落ちていく——
先生の記憶だけを、細い糸のように握りしめながら。
この瞬間、香織の精神は、静かに、しかし確実に、
深い闇の底へと沈み始めていた。
部屋の空気が、息もつかせぬほどに重く、
次の瞬間、何かが起こる——
そんな予感が、彼女の最後の意識を覆い尽くす。
香織は、ただ涙を流し続け、
先生の名前を、心の中で繰り返していた。
(先生……
先生……
先生……)
彼女の意識は、ゆっくりと、
完全に闇に飲み込まれていった。
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