柳田の声が急に低くなった。視線が、制服のブレザーの下、夏服の薄いブラウス越しに、はっきりと形を主張している胸の膨らみを這う。
「バドミントンやってると、身体のラインがすごく綺麗に出るんだよな……。特にその、腰からヒップにかけての曲線。あれ、見てるだけで……」
言葉の途中で、柳田の手が香織の腰に触れた。指先がスカートの生地越しに、骨盤のラインをなぞるようにゆっくり動く。
香織の息が一瞬止まった。
「やめてください」
声は小さく、しかしはっきりと言った。
だが柳田は笑った。脂ぎった、満足げな笑い。
「やめて、って言われてもさ……身体は正直だろ?」
彼のもう片方の手が、香織の顎を掴んで顔を上げさせた。間近で見る柳田の目は、欲望に濁っていて、どこか狂気じみていた。
「ほら、こんなに震えてる。怖いのか? それとも……期待してるのか?」
香織の瞳が揺れた。恐怖と、屈辱と、そしてほんの僅か——自分でも認めたくない——熱が混じり合って。
柳田の指が顎から首筋へ、ゆっくりと滑り落ちていく。鎖骨のくぼみをなぞり、ブラウスの一番上のボタンに触れた瞬間、香織は反射的に両手でその腕を押さえた。
「触らないで」
その声は、今までよりずっと鋭かった。
柳田の動きが一瞬止まる。
「……へぇ。意外と強気じゃん、香織ちゃん」
彼は逆に力を込めて、香織の両手首を片手でまとめて掴み、ロッカーに押し付けた。もう片方の手は容赦なくブラウスのボタンを一つ、また一つと外していく。
「や……っ」
香織の声が初めて震えた。
薄いピンクのブラジャーが露わになる。レースの縁取りが、汗でわずかに湿っている。柳田の息が荒くなる。
「綺麗だ……本当に、若い女の身体って罪だよな」
彼の唇が、香織の首筋に触れる。ぬるりとした舌の感触。香織は全身を硬直させ、目をぎゅっと閉じた。
だがその瞬間——
ガチャリ。
用具室のドアが、誰かが開けた音がした。
「香織、まだいる——って、あれ?」
後輩の一年生の声。
柳田の身体がびくりと跳ねる。香織の手首を掴んでいた手が、慌てて離れた。
「……ちっ」
柳田は舌打ちをして、急に何事もなかったかのように振る舞い始めた。
「いやー、ちょうど片付け終わったところだよ。香織も疲れただろ、早く帰りなさい」
香織は無言で、乱れたブラウスを直し、俯いたまま用具室を出た。
後輩が不思議そうに首を傾げている。
「先生と何かあったんですか?」
「……なんでもない」
香織はそう呟いて、早足で体育館を後にした。
首筋に残る、ぬるりとした感触。
まだ、消えない。
そして、下腹部に残る、認めたくない熱。
彼女は唇を強く噛んだ。
——この先、どうなるかわからない。
でも、今日という日は、まだ終わっていない。
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