噂のとおりに合戦は始まった。敵方寄せ手の大将剛力の能登守は黒い鎧兜に大きな黒馬に乗って虎長の陣を偵察していた。
なんじゃ?あの不揃いな構えの長柄槍は?さては未熟者の集まりか!あそこから攻めれば一気に突き崩せるのう。おっ、本陣の方から応援と見える軍勢が寄せて来ておる。こちらに来る前に我一人でここを突き崩すとしようか!能登守は後方遠くにいる味方を差し招くと自分一人で目を付けた箇所に突進して行った。
突進されたのは権兵衛の指揮する組。まだ揃って二日、組足軽も組頭の権兵衛も満足な訓練をしていない。長柄槍の構えも揃わないところに寄せ手の大将が突進してきた。不揃いな長柄槍の隙間に大きな馬を入れて足軽を馬蹄にかけたり槍で突こうとする。「怯むな!叩け!叩け!」指揮する権兵衛の声からして上ずっている。
突進に2回は耐えたが、三回目に勢いをつけて突進してきた能登守の雄叫びを聞いて遂に一人の足軽が長柄槍を捨てて逃げ出した。権兵衛は捨てられた長柄槍を拾い上げ「逃げるな!逃げたら斬るぞ!」と叫ぶが臆病風に吹かれた足軽達は次々に逃げて行く。なんて事だ..、部下に逃げられて陣に穴を開けてしもうた..。俺は打ち首じゃ..。呆然とする権兵衛の後ろからドドッドドッと馬蹄の音がする。振り返ると僅か5間の距離に能登守が迫っていた。わっ!わわっ!は、母様!梅!恥も何も無い。恐怖に駆られて権兵衛は自分を待っている二人の名前を叫んで目を潰って長柄槍を振り回す。強い手応えがあって撓る長柄槍の反動で権兵衛も振り飛ばされた。どうなったんだ?地面に四つんばいになった権兵衛が顔を上げるとすぐ目の前で落馬した能登守が憤怒の形相も凄まじく刀を抜きながら立ち上がろうとしていた。慌てて権兵衛も腰刀を抜いて能登守の一刀を受けた。ガシーンッ!すごい力だ..。とても敵わぬ..!逃げなかれば..。本能的に逃げかけた権兵衛だが、今逃げたら後ろから切られる!と必死に思いとどまった。ガシーンッ、ガシーンッ!打たれる度によろよろと退きながらやっとのことで防いでいく。母様..、梅..、俺もう..死ぬ..!殺される!梅、もうお前を責められない..!梅!梅!権兵衛の目に小さな幼い梅の姿が浮かんだ。虎御前から初めて引き合わされた時の膝よりずっと短いつんつるてんの破れた小袖を着て不安そうな顔してた梅。初めて裸にして縛った時に自分から手を背中に回した梅。権兵衛のへのこを受け入れて苦痛に耐えながらもっと痛くしろと言ってる梅。解き放たれると分かったのに連れて帰れと必死な声でわがままを言う梅。戦にいくのが恐くないように酷く自分を虐めろと言ってくれた梅。そして帰ったら尻を虐めてくれと言っていた梅!権兵衛には目の前の能登守の後ろに梅の愛らしい姿が見えていた。口でも「梅!梅!お前を..責めるから!責めるからな!」とうわ言の様に繰り返す。やがて権兵衛の目には裸で痩せた白い尻をこちらに向け四つんばいになってる梅の姿が見えた。振り向いてこちらを泣きそうな、また微笑んでるような不思議な表情で見ている。
「梅!お前の、お前の尻をくれ!」権兵衛は叫んだ。
能登守は若造がなかなか手強いのに驚いていた。こいつ、もはや狂っておる!この様な者を相手にするのは危ない!そう気がついた時、「梅ー!」と叫んだ権兵衛から体当たりされていた。
※元投稿はこちら >>