仰け反った後今度はがっくりと顔を伏せて動かない虎御前だった。孫娘の弥生はどうすれば良いか分からずにオロオロしたが、その時背後から落ち着いた虎長の声がした。
「奥よ、激しく逝ったものよのう。」
すると気を失っていたかの様な虎御前はゆっくりと顔を上げ夫の方を見上げる。
「は..い..、年甲斐もなく我を忘れて逝きもうしました..。御屋形様以外の者から逝かされる等思いもしませんでした..。申し訳ございませぬ。」「良い良い、我がそなたの孫娘に命じた事じゃ。何よりそなたの可愛く逝った姿を見れて我は満足しておる。」「まあ..」孫娘の弥生の見ている前で夫から可愛いと祝うて虎御前は顔を赤らめた。弥生には祖母の顔が童女の様にあどけなく美しく思える。
しかし虎御前はすぐに我に返ると再び弥生に手首をおなごの壺に入れるようにと促した。「大丈夫じゃ、先ほどはそなたのしてくれ方があまりに良かったために恥ずかしくも我を失った。お祖母も心根をしっかり持って耐える故、そなたも頑張ってくりゃれ。」
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