お光の方は両手で顔を覆い恥じ入りながらも我が子を心配する。「忠太丸!大丈夫ですか?苦しくはありませぬか?」むせながらも忠太丸は出来るだけの母親の尿を飲み下していた。
まだ喉仏も出てない華奢な喉が何度も上下する。やがて口の中の尿を全て飲み下し、忠太丸は大きく息をつくと直ぐ上から覗き込む母親にニコッと微笑んだ。「母親、我は飲み干しましたぞ。美味でございました。」
まあ、この子ったら..。お光の方の胸がまたキュンと甘やかに疼く。
お光の方は息子の顔の上から立ち上がると虎長と虎御前の前に正座する。もちろん忠太丸も母親に倣った。
二人は虎の夫婦に深々と頭を下げると「我ら母子、言われましたとおり畜生以下の振る舞いをさせていただきました。かくなる上はお約束どおりに磔のお仕置きをお願いいたします。」
虎長が言った。
「良き覚悟じゃ。奥よ、この二人に杯を取らせよ。」
ああ、いよいよ我ら親子の最期なのだ..。最期の酒を飲ませてから刑場に引き出されるのだ。
二人はそう覚悟した。
虎御前が酒と杯の載った盆を運んできた。
しかし二人が驚いた事に、それは三三九度のための祝い杯だった。
「お光の方、忠太丸!我は久しぶりに淫靡なるも美しいものを見せてもろうた。満足しておる。軍の勝ち負けは致し方ないが、負けた後も家臣やおなご衆の助命を願ってかくも過酷で淫らな責めに耐えるとはなんとも健気!明日は磔となるも今は母息子の仲なれど夫婦として最後の歓楽を味おうても許されよう。亡き夫、父親も許すであろう。これより祝言の杯をするが良い。」
虎長の前でお光の方、忠太丸は虎御前から夫婦の杯を受け、その後虎御前の案内で城内の一室に案内された。
「あっ、ここは!」驚くお光の方。
「そうじゃ、そなたと亡き夫殿の寝屋じゃ。今宵一晩じゃが、忠太丸殿と夫婦と楽しみを味わいなされ。」
寝屋の中には柔らかい寝具の他、様々なごちそうに酒、それにまだ酒を好まぬ忠太丸のためであろう甘酒まで用意されている。それに寝屋の横の湯屋には風呂も沸いていたし、寝具の枕元には亡き殿様の作らされた張り形が着けられた革の褌まで。
深々と頭を下げる親子に虎御前は優しく微笑むと虎長のもとへと戻って行った。
残された二人はしばらく見つめ合った後、しっかりと抱き合うと激しい口吻を始めた。
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