私はショックでした。
A君が、
「私との乱取り稽古でボコボコにされた事を怒っていた事」
「女が男に勝てる訳がないと思っている事」
「私のことをプライドと自信のある人間だと思っている事」
私は子供の頃から大学まで柔道をしていて、それなりの成績を出してきました。
その中の経験で、やはり格上で年齢差や経験差のある人には、どうしても負けるというのが当たり前だと思っていました。
つまり、当時、柔道を初めて1年半のA君が私を投げることは不可能だし、当たり前だと思っていました。
A君も当たり前だと思ってると思いました。しかし、彼は悔しかったのです。
その悔しい気持ちは良いとして、問題はその理由が、私が女性だから。女性に負けたのが悔しい。という所です。
もちろん、同じ年齢で同じ年月の経験であれば、体格差や身体的特徴で男性のほうが女性よりも強いかとは思います。
それでも、A君の言い方に、私は「A君はどこか女の人を見下しているのではないか?」と感じました。
そして、私のプライドや自信について、、、それは正直あります。
生徒達を見下していたつもりはありませんが、ハッキリ言って、当時の中学生の頃の私の方が練習はストイックにしていたし、強いと思っていました。
時に厳しい指導をしたのは、その思いがあったかもしれません。それを見透かしていたのかと思うとショックでした。
A君の3年間頑張った総決算の試合ができるように、ここで全て精算して彼が新たなスタートがきれるように。
そして、A君のその女性軽視の考えを改められるように。
私は私で全力でA君をぶちのめすと決めました。
コロナ禍で唯一良かったこと。それは時間の余裕が出来たことでした。
私はA君と試合をすると決めた日から、毎日1人で自主練を積みました。
体力はだいぶ落ちていましたが、10分、、いやせめて5分でも全力で試合が出来る身体に仕上げようと走り込みもしました。
今更ですが、私は身長が156cmです。
現役の時は52kg級に出場していました。
元々、食べても太らない体質の私は、現役引退後、仕事による不規則な生活でも、体重自体は変わりませんでした。
しかし、実際に自主練をしてみるとだいぶ筋肉が落ちているのが分かりました。
そして、反射神経や動体視力も落ちていました。
唯一、そこまで落ちていないのが柔軟性と重心の置き方でした。
柔軟性と重心は攻防の中でとても大切ななものです。
以上の現在の私の状態を踏まえても、A君に負ける事はありません。ですが、完膚無きまでに倒す為に、A君に敬意を払って試合する為に、私は現役時代さながらの練習をしました。
1人で練習する為、乱取り稽古や寝技稽古は出来ませんが、それを補う練習に励みました。
学校が、このまま二学期はオンラインでの対応。登校は不可という決断が発表した10月の終盤、
私はA君に試合の日時を送りました。
試合日は11/13(金曜日)の夜19時から。
なぜこの日時なのか。それは11/13は昼間は私が残り番として18時までの勤務となり、他の先生は16:30には帰るため。
19時からの理由、それは3年間勤務していて19時以降は学校に誰も居ない事がわかったから。
18時から始めてもいいのですが、念には念を入れて19時としました。
1つ問題なのは、柔道場の明かりを付ければ、外から良く見えてしまいます。つまり、試合をした事がバレます。
これについては、事前に確認したところ、昼間に陽光がよく入るように、月明かりも良く入り、薄暗いものの、そこまで影響なく試合ができる。という事で、明かりは付けない事としました。
A君にその主旨のLINEを送ると、直ぐに返信がありました。
「分かりました。」と一言だけ。
一言だけに私は少し物足りなさ、、、というか、もっとなんか挑発してくるかと思っていたので肩透かしをくらい、
「A君、覚悟してね。圧勝してあげるから。」
と、大人げなく返信してしまいました。
A君からはからかうようなスタンプで済まされました。
それがイラっとしつつも、遂に日にちが決まり、俄然自主練に励みました。
そして11/13(金曜日)を迎えました。
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