暑い夏が過ぎ去り、いい季節になった。
濃い緑の葉をつけた街路樹が立ち並ぶ歩道を、ひとりの聡明そうな女性が先を急ぐように歩を進めている。
30代半ばだろうか、艶のある髪の毛を後ろに纏め、紺色のスカートスーツが細身の体に似合っていればいる。
それをオフホワイトのボータイブラウスが知性と女性らしさを醸し出し、清楚な雰囲気が堅苦しさを和らげている。
やや急ぐ足がハイヒールを鳴らし、魅力的なお尻がタイトスカートを引き立てる。
ハイウエストのタイトスカートが細いウエストをより細く強調し、視線を上げれば柔らかに揺れる2つの盛り上がりが見るものを引き付ける。
その女性は知性に満ちた切れ長の目をして、凛々しくも慈愛のある美貌を薄いメイクで武装していた。
雑居ビルの階段を上がり、自分の名が記されているドアを開けた。
秘書 お帰りなさい、先生……
柊夏美、35歳はたったひとりのスタッフ、秘書兼事務員の水原京子に言う。
夏美 だからその言い方は、やめて………
秘書 だって、こういうやり取りが夢だったんですもん……恰好いいじゃないですか……
夏美 テレビの見すぎよ、弁護士が偉いなんてそんなの虚像よ……
それより、今日はもういいからあがって……
秘書 いいえ、まだ定時じゃありませんから…
夏美 そんなんじゃ、彼氏に逃げられるわよ?
秘書 また、それですか………
養子として義父母に育てられた夏美は、裕福ではないながらも何不自由なく大事に育てられた。
自分たちは何年も服は買っていないのに、夏美の誕生日には必ずプレゼントを買ってくれたものだ。
大学までだしてくれた義父母に経済的な負担をかけたくなくて、司法試験には何としても受かる必要があった。
そのために夏美は愛しい人と、自ら辛い別れを選んだのだ。
秘書 もう先生はいい出したら頑固なんだから………
まだブツブツ不満を漏らす彼女がバッグを肩にかけ、帰る様子を微笑んで見送る。
そんな夏美は10数年経った今でも、パートナーを作らず生きてきた。
別れがあまりにも辛すぎたから………。
そういうことに奥手で純情だった夏美が男性を知ったのは、その彼だった。
激痛から快感を得るまでそう時間はかからかった。
どうやら敏感体質らしいと気づいたのは。彼だった。
2人は合うたびにお互いを求め、快楽に溶け合う日々を送った。
卑しいとは思ったことはない、拙いながらもお互いに愛していたのだから………。
短くも濃い、そんな季節だった。
フェラチオを覚え、クンニリングスを受け入れ、オーラルセックスを知った。
その素晴らしさは他の何にも代えがたく、友達と顔を合わせても彼との秘密だと思うと体が熱くなったものだ。
ひとつのソフトクリームを分け合うだけで、幸せだった。
そんな彼と………。
夏美は回想をやめて陽光が西に傾きを見せる外の景色を、窓にやった瞳でぼんやりと眺めていた。
そんな時、ドアをノックして男が2人姿を見せる。
回収人 こんにちは、ちょっと相談がありまして……
夏美 はい、じゃ……こちらにどうぞ……
とりあえず応接セットへ2人を誘導し、お茶の用意をしようとする夏美がとめられた。
回収人 いや、本当にお構いなく……それより急いでお話を聞く必要があるんです……貴女に…
その言い方に手を止めて振り返る夏美の顔には、警戒感が浮かぶ………。
話を聞いた。
義父母に借金がある、連帯保証人と言う言葉が突き刺さる。
夏美 どういうことですか?
回収人 30年前になりますか、貴女のご両親は連帯保証人になってましてね………
今までは順調に返済されてたんですけどね、夜逃げしましてね………
夏美 そんな………
回収人 ご両親は町工場を営んでおられますね?……
あの工場は義父母の生きがいだった。
もちろん自己破産という手はある、だが人に迷惑をかけるのが嫌いなあの人たちはそれを望まないだろう………。
実直に生きてきただけなのに………。
夜逃げした相手にも理由はあるだろうが、腸が煮えくり返った。
回収人 私共も鬼じゃありません、ご両親に会う前に貴女に会いにきたのは理由がありましてね
懸命な判断だと、目の前の相手を褒めたくなった。
夏美 聞きましょうか………
回収人 ひとつ提案がありましてね………
あり得なかった。
自分が身代りになり、返済する?
夏美 私が弁護士だと言うことは?
回収人 えぇ、入口のドアにも書いてありましたしね……
夏美 それで………?
回収人 月々の返済額は、失礼ながら今のこちらの収益からだと捻出が難しいんじゃないですかな……
確かに提示された額は、高額なものだった。
どうにかやりくりしても、数ヶ月と持たないだろう。
回収人 そこで先ほど言った提案ですが、世の中は性がお金になりましてね………
夏美は目の前が暗くなる思いがした。
回収人 いやなに、どこか風俗店で働くとか、どこぞの助平親父に抱かれろとは申しません……
この彼と、お願い出来ればと思いましてね……
喋るこの男の隣にいる男を指していた。
スマートな体型をしているが、座る姿勢からそれなりの筋肉質であることが窺える。
そして、タレントでも通用しそうな甘いマスクをしている。
回収人 どうですか、このカメラで撮られるだけで、ひと作品これくらいになりますよ?
一回の返済額にしては、魅力的な額だった。
気持ちが揺らぐ………。
こんな時、弁護士なんて何の力もないと思い知る……。
そして、口から出た言葉は………。
夏美 顔が映るとこの仕事が出来なくなります………考慮はしていただけるんですか?
回収人 それはどうにでもなります……
ただ、裏で出回る作品ですからこの額なんです……意味はご理解できますか?……
夏美 どういう意味?
回収人 やれやれ、意外と世間をご存知ない……
俗にいうAV作品はその業界で審査されて、いわゆる恥部は隠される加工をされますが裏は……もうお分かりでしょう?
これでも良心的にお話をさせてもらってるのはご理解いただきたい……お顔は、何とかしましょう…
夏美は手を震わせた……。
恐怖ではなく単純な羞恥心でもない。
憤り……誰に?……この相手、夜逃げした相手、無知な義父母………いや、何もて打てない自分に対してだった。
回収人 あれこれと指示はしませんから、自然で結構です………それでは、はじめましょう……
夏美 えっ……今からですか?
回収人 我々も子供の使いじゃないんです……
夏美 ひっ!………いやっ………
恐れおののき身を固くした夏美をディスクの上に座らせると、男が容赦なくスカートの中に手を入れる。
夏美 待ちなさいっ………自分でやるわ……
甘いマスクをした男の手を払い、夏美は自らパンストを下ろし、次いで震える手で下着を脱ぎ捨てた……。
それを拾い上げ、裏返した下着のクロッチ部分の臭いを嗅ぐ様子をカメラに収める回収人。
それからゆっくりと夏美の膝を左右に割る。
その奥へと顔を埋める男を睨みつけていた夏美は、そこで初めて顔を背ける………。
わずかに表情を引き攣らせ、それでも無表情を崩さず凛としたまま壁を見る夏美。
いやらしくわざと音を立てる男を嫌悪し、下唇を噛む。
不意に肩がピクンっとした。
舌先がクリトリス包皮を撫であげ、スリスリっと滑らせる。
それからも肩が跳ね、頭が揺れる。
それでも夏美は表情を変えない。
チロチロと舐めていた舌が、忙しくなった。
そのぶんだけ感覚が増大し、息が詰まる。
血流が集まった突起が包皮から顔を覗かせ、鮮やかなピン色を輝かせる。
包皮を持ち上げるように舌先が動き、いよいよ忘れていた快感が本格的になってきた。
お腹、背中、腕、脚……前進の筋肉が硬直と弛緩を繰り返す。
包皮を持ち上げられて露出したクリトリスが、久しぶりに空気に触れる。
懐かしい感覚を覚える前に温もりに包まれ、それが唇だと知る。
完全露出した敏感なそれを、不快な痛みを感じさせず経験のない感覚が夏美を襲う………。
乳首を吸われるように吸着した唇が固定され、舌先が忙しなく動く………。
目を閉じて表情を見せまいとしても、物事には限度がある。
猛烈な快感に思考は奪われ、我慢強い鉄壁の心が崩れていく………。
強すぎない舌捌きは夏美を確実に女の喜びへと運び、そして………。
久しぶりだった………。
だけどこんな快感は初めてで、狼狽える間にわけが分からなくなっていた……。
そんな………。
立ち上がった男が手にペニスを握っている。
怖い……最初に恐怖心が芽生える……。
10年以上も受け入れてこなかった膣が、ゆっくりと押し広がる痛みに固く目を閉じる。
夏美の口から呻きが漏れ、膣がパンパンになった。
男の腕を掴む指が爪を立て、肉に食い込む……。
ゆっくりとペニスが後退し、またゆっくりと奥に進む。
また後退し、前進、そしてまた………。
膣の中を動くペニスの感覚が痛みなのか不快なのか、苦痛ともいうべき試練夏美を襲う。
膣壁の粘膜を擦られる感覚が信じられず、ただ堪える夏美の体に変化が訪れた。
スーツを着たままディスクの上で脚を広げ、腰を使われる姿がカメラに収まっていく………。
ゆっくり、ゆっくりと男の腰が前後に動き、苦痛に満ちていた夏美の呼吸が穏やかな吐息を漏らす………。
夏美 はぁ~………はぁ~〜……………はあぁ~………
眉間に寄せていたシワは姿を消し、美人弁護士の顔に恍惚に揺れる………。
ペニスが気持ちのいいところを擦り、思い出した。
あの官能を………。
いつまでも続く快感に酔いしれ、夏美の体が汗ばんでいく……。
愛は欲しいに決まっている。
だが、普段の生活に女だって性は必要だと痛感する。
綺麗事はいらない、大人になった夏美は久しぶりに感じる快感の虜になっていた………。
早まる男の動きに乗じて夏美の口からは、甘い声が聞こえはじめる。
秘書の水原も裁判官も検察官も聞いたことのない、女の甘い声………。
いきなり夏美の体が震えはじめる……。
堪らない快感が溢れ、その身を包み込む……。
そしてまた、男の腰が動き出した。
ゆっくり出入りしていたペニスが忙しなく動き出し、抜き差しする結合部が細かい気泡を含んで白くなったヌルヌルが付着する。
頭を左に右にと倒し、夏美が表情を歪める……。
ボータイブラウスはまくりあげられ、その下の黒いインナーのキャミソールも捲くられた。
見かけ以上に豊かな乳房が白い姿を見せ、男が口を寄せる………。
早くも黒っぽくなっている乳首が舌先の動きを躱し、避けるように動く。
それを捉えて勃起した突起を舌が周回する。
先端をスリスリとさせると、夏美の指に力が入る……。
また痙攣が夏美の体を襲う………。
肩で息をする夏美が幸せそうに、穏やかな恍惚を見せる………。
そんな夏美の身を起こしてジャケットをあ脱がせ、抱え上げて共に椅子に着地する。
カメラを構えた男など目に入らなくなった夏美は、対面座位となったまま自ら腰を律動させる。
肉欲の前にもう、迷いはなかった……。
いやらしく動く美人弁護士の腰がズームアップされ、続いて近づいたカメラが結合部からの卑猥な音を拾い上げる………。
クッチュッ……クッチュッ……クッチュッ………
前に倒した頭を起こし、また前に倒した頭が天井を仰ぐ………。
背中を反らせて腰を動かし続ける夏美が、白いお尻をクイッ…クイッ……とその卑猥な表情を浮かばせる……。
あぁ……あぁ〜………っと快楽を貪る女の声が、部屋に響き渡る………。
体を撓らせて喘ぐ夏美を、男のカメラは記録していく………。
向こう数年、夏美はこの快感を独り占めをして失うことはないだろう……。
少なくても、返済が済むまでは………。
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