澄み切った空気を切り裂いて、体の後ろに置き去りにする。
キーンと冷えた空気を肺に吸い込み、カモシカのように疾走していく。
朝日が瞳を射抜く。玲子は立ち止まり、腕を伸ばしてストレッチを始めた。
髪の毛はアップにしてポニーテールにしていた。
首筋から汗が流れ落ちて、スポーツブラに包まれた胸の谷間に落ちる。
生活に不満はない、満ち足りていた。
音楽教師の仕事は良いことばかりではないけど、としても充実しているし好きだった。
このところ玲子は眠れないことが増えている。
体が疲れていても頭が覚醒して寝付くまで時間がかかるし、夜中に目覚めることが多くある。
心が悲鳴をあげている、分かっていた。
常軌を逸したことを続けていれば、疲弊した精神はいずれ崩壊してしまう。もしくは別次元に強くなるのかもしれないが、自分はそのタイプじゃないと玲子は思っていた。
嘘つきで卑劣極まりない変態共に蹂躙される苦しみ。
拒絶する頭とは別に女の本能を呼び覚ますように、あの地獄さながらの快楽。
良識や分別、本能と欲望がせめぎ合い結局は後者が競り勝っていた。
借金の返済が順調に進み、両親は土地も農園も手放さくて済んでいる。
後悔をしていないと言えば嘘になる。でも自分の自己犠牲で何とかなるのなら、どうにかしたい。
あと何回我を失えば解放されるだろう……恋人は欲しいし、いずれは結婚だってしたい。この地獄が終わるまで己を保っていられるのか、戻れなくなる予感がする……玲子はそれだけが心配だった。
ーーーどうした、調子が悪いのか?
あの男は定期的に話を持ってきた。
………良いわけがないでしょう!私と生徒のあの……あの画像と動画データを返して!
玲子は感情を剥き出しにした。
ーーーまぁ落ち着けよ、おれにそんな口を利いていいのか?
玲子は押し黙り、続けた。
……………ごめんなさい、最近ちょっと眠れなくて。
ーーーまぁいいや。アンタも金の為とはいえな。だから今回はちょっとマシな話を持ってきてやったぜ?
なにがマシなものか。何だかんだ言って結局することはしなければいけない。
それが大金を手にする対価だった。
話を聞いたときは半信半疑だった。
それがどういう風の吹き回しか、玲子は実在運営されている老人ホームの前に立っていた。
中に入ると出迎えた園長に挨拶をし、さっそくある場所へ玲子を案内した。
そこには年季の入ったピアノが置かれており、また鍵盤を叩いてくれる者が来るのを待っていた。
ーーーいやぁ~今日はありがとうございます。
ボランティアさんが来てくれると聞いてましたが、本当に来てくれるのかと思って…皆、喜びます。
園長いわく以前にも同じような話があって、そのときは何があったのか土壇場でキャンセルされてしまったことがあると話してくれた。それまでは定期的にピアノを弾いてくれる学生が来ていたそうだが、それ以降はほとんど誰も来ないのだそうだ。
ーーー入居者の皆さんを集めて来ますから。
人の良さそうな園長は、それは嬉しそうに走って行った。
30分ほどかかって集まった老人たちは、目を輝かせて椅子に座っていた。
玲子は心を込めて童謡や歌謡曲、クラシックなど数曲を弾いてみせた。
穏やかに聞き惚れる人や微笑みを見せる人、涙を浮かべる人等、みんな様々に楽しんでくれて玲子は感無量だった。こんなことなら自分が定期的にピアノを弾きに来たいと、本気で思ってしまった。
だが忌まわしい記憶が残るかもしれない場所に、玲子は戻れる自信がないのが悲しい。
今これから誰がどんな形で事に及ぶのか、玲子には知らされていないのだ。
まさか、老人が相手になるとしたらと考えると、ゾッとした。
ーーーお時間が許すなら少しだけ話し相手になってあげてもらえませんか、喜ぶと思います。
園長の誘いに自分でいいのなら喜んでと、二つ返事で玲子は答えた。
玲子は幼い頃、農園の手入れで忙しい両親に代わり祖父母に可愛がられた。孫娘とあって猫可愛がりされて育った経験で、今でもお爺ちゃんお祖母ちゃん子の気質は変わらない。
ーーー玲子さん、ですよね。こちらにおいで下さいますか?
男性アイドルでも通用しそうな若い青年介護士が礼儀正しい振る舞いで、玲子を案内した。
………お若いのに立派ですね
玲子に煽てられてはにかむ青年介護士。
ーーーまだ3年なんですけど、やっと慣れてきました。失敗が多くてまだまだなんです。
謙遜だろう。失敗といっても些細なことだろうし、彼なら何でもそつなくこなしているに違いないと玲子は思う。
ーーーお祖母ちゃんなんですけど、お子さんはいらっしゃなくてご主人はもう、数年前と聞いています。
………そうなんですね
ーーー足も目も不自由ですけどしっかりなさっていて、とても穏やかな方ですよ。
………あら、楽しみです
玲子は胸踊らせながら彼の後に続き、彼女の待つ一室にお邪魔した。
いらっしゃい、こんなおばあちゃんの相手をしてくれるなんて、ありがとうね。
ベッドの上で玲子の姿は見えないだろうに、ちゃんと声のする方向に顔を向けて出迎えてくれた。
ごめんなさいね、こんな格好で。いつもは車椅子なのよ。
………はじめまして、進藤玲子と申します。先程はピアノを聴いてくださって、ありがとうございます。
こんな挨拶から始まって、青年介護士が用意したお茶を手に2人はあっという間に仲良くなっていた。
部屋にはソファが設えてあったが、家族でも来ていたのか荷物がそのまま置かれていた。
青年介護士がそれを退かそうとしたけれど、玲子は無言で身振り手振りで断った。目が不自由だからといって無粋な真似はしたくなかったのだ。
玲子は疲れたらソファの背もたれに両肘を置いたりして、くつろぐふりをしていた。
そんなことぐらい、どうでもいい。
目の前のおばあちゃんとの時間をただ大切にできれば、それで十分だった。
それでね…………
若い頃を語るおばあちゃんの話を聞く玲子。
ソファの背もたれに両肘をつく姿勢はお世辞にも行儀の良い格好とは言えないが、この場合は許されてもいいのだろう。ただし、邪な感情を抱く者の前では最悪だった。
ウエストを絞ったデザインのワンピース。
形の良い玲子の胸の隆起が強調され、ボリュームのある臀部が突き出されている。それを見ていた介護士の男の下半身は、既に窮屈になっていた。
不意に違和感を覚えた。
振り返る、そこには欲情した男の顔があった。
玲子は落胆を隠せず、暗い目を男に向けていた。
それでも相づちを続け、おばあちゃんに向き直る。
まさか、彼だったなんて……。
尻を揉みほぐされる不快感を覚えながら、心を遮断した。
スカート部分の裾が持ち上がる。
尻を両手で抱えるように顔面を陰部に押し付けて深呼吸をする男、クロッチが熱い。
するするとパンストが降ろされていく。
片足づつ引き抜き、またも陰部に顔面を押し付ける。
悪寒が走る、気持ちが悪い。いつもながら望まぬエロチズムには慣れることがない。
片足を後ろに持ち上げられてまた靴を脱がされた。表現のしようのない気持ち悪さが玲子を襲った。足の指の間を舌が這い回っていたのだ。丹念に指の一本づつをしゃぶり足の裏まで舐められた。それをもう片方も………。
玲子はその間もおばちゃんの話にコロコロと笑い、楽しそうに振る舞う。
そして、下半身の最後の砦が崩されようとしていた。
やや面積の狭いパンツ、薄手でピンク色の生地は尻の肉を半分ほどしか隠してはいない。
臀部を斜め上に切れ上がり、サイドは腰骨の辺りできている。
男は気づいた。クロッチの一部が変色していることに。
サイドに指をかけて、引き降ろす。
ぷりんっとした尻を通り過ぎ、陰部に貼り付いていたクロッチが剥がれるように落ちる。
透明な糸が引くのを見て、舌舐めずりをする。
限界まで伸び切ると音もなく切れて、切れ端が美しい小さな玉となって陰部に引き戻されていった。
玲子に脚を開かせた。
尻を広げてみる………色素沈着した肛門が開いてきゅっと萎む。にゅぱっと割れ目が開き、色鮮やかな粘膜がそそる。男は我慢が出来なくなってむしゃぶりついた。
あたしの時代はね、そういうのがハイカラだったの……
………わたしの祖母も、似たようなことを……言ってました
玲子の言葉か詰まる。乱暴に舐められるのは苦痛でしかない。
飽き足らない男がとった行動は仰向けに近い形で玲子の正面に回り、両手で尻に抱きついたのだ。
大人の女性らしく形をある程度は整えているらしい陰毛は、それでも密度が濃い。それよりも目についたのは盛り上がる陰核包皮。舌で触れた感触は、その厚みよりもすぐ下の存在感だった。
舌先でなぞった。張りのある塊の上で包皮がずれて動き、続けていると玲子の腿の筋肉に力が入るのが分かった。
透明な汁が出て溢れそうになっている。
それを舌ですくい取って塗りたくる。
ゆらゆらと腰が動く。
玲子はおばちゃんに申し訳なく思いながら、声を我慢する代わりに表情には露骨に出した。
誰だって女はクリトリスだけは弱い。
呼吸と吐息に注意して、言葉数を減らした。
……だめ…だめ…そんなに早くしちゃだめ……
陰部に張り付く男を振り落とすように腰を捻るが、それはあまり意味をなさない。
舐められているうちに、それは露出してしまっていた。
男は大きめのクリトリスが珍しいのか玲子の反応が興奮をそそるのか、執拗に弄ぶ。
腰を引いて逃げる玲子の尻を引き寄せる男。
だが玲子は強すぎる男の刺激が苦痛でもあった。
若さ故の経験値の不足は否めず、オーガズムどころではない。
玲子は男の頭を本気で押しのけ、強すぎる、痛いと声を出さず口の動きで訴えた。
股の下で男は戸惑い、意気消沈したように這い出してきた。
今回は報酬がもらえないかもしれない……玲子もまた気持ちが沈む。
これでおばちゃんの相手がちゃんと出来る、気持ちを切り替えるしかなかった。
が、腰を掴まれて玲子はギョッとした。
次の瞬間、あの圧迫感と押し広げられる感覚に息が詰まった。
………うそでしょ!?
内心で驚愕しながら腟内をゆっくり往復しているペニスの感触を、受け止めるしかなかった。
唯一の救いは、男もおばちゃんにバレるわけにはいかないことだった。
玲子の異変に気づかれない為には、激しく出来ない筈だ。
男のその滑らかなピストンは可も不可もないままに、玲子に平穏な快感をもたらした。
じれったくてもっともっとと求める欲求が募るが、玲子自身の抑えが利かなくなることはこの場では避けたい。
玲子はこんな形でのスローセックスは、初めてだった。
男は自慰行為において、射精を促すのに強い快感を求める。
だから女を早くその領域に導こうと急ぎがちになる。
それは男において成立する理屈に過ぎなくて、例えばクリトリスの刺激なんかはある程度の刺激を続けてさえしてくれたら、それだけでもう………。
急がれるのは強すぎる刺激になりがちで、苦痛になるのが男には分からないらしい。
一概に言えないが、ペニスによるピストンでも同じことが言えるのではないかと玲子は思う。
その気にさせてくれさえしてくれたら、決して悪くわないのだ。
事実、玲子は今こんなことじゃなければどんなに良いかと、理性を保つのに苦労をしていた。
……ああ~……ああ~ん……すごくいい………
ぬぅ〜ちゃっ……にゅ〜ちゃっ……にゅるるるぅ……
………はぁ~……んん~あぁ~……ん~……はぁ~……
口はおばちゃんの受けごたえに動かし、その口調と声色に似つかわしくない恍惚の表情を浮かべる玲子。受ける快感はこころの中で悶えた。
不意に尻を掴む男の指に力が入った。
膣内に温かなものが広がる感じがした。
玲子は潤んだ瞳を閉じて、余韻に浸る。
そっと息を吐いて、呼吸を整えていた時だった。
再び男が腰を使い始めたのだ。
………えっ嘘でしょ?……ちょっとあっ……はぁ~……
ーーーあの玲子さん、失礼ですが肩がガチガチに凝ってませんか?
………えっ?あの……でも大丈夫です
ーーーやっぱり、僕ここで皆さんの肩凝りを見てきたから判るんです。気持ち悪くなったり頭痛がしたりすることがあるでしょう?良かったら直して差し上げますよ。僕、こう見えてもここで評判がいいんですよ。
あら玲子さん、そうなの?この人の言ってることは本当よ、あたしが保証するからそうしてもらいなさい、年寄りの言うことは聞くものよ?
男に対してどの口が言うのかと思ったが、玲子は意図が何となく理解できていた。
ーーー痛かったら言ってくださいね、加減をしますから
………あっ……ありがとうございます……じゃあ最初は強くしないでお願いします
ーーーどうですか、悪くはないでしょ?
………えっ、ええ………そうかも
ーーーきもちいいでしょ?
………………えぇ……きっ…きもち…いいです…はぁ~
ーーーよかった、どうせだからよくほぐしておきますね。あっ、おばちゃん、玲子さんの返事がなくてもちゃんと聞いてるから大丈夫ですからね。
ちょっと返事が遅れたり苦しそうな声が聞こえるかもしれないけど、大丈夫だからね
この男また、見かけによらず変態のクズだと玲子は思った。
布石を置いた男はこれまでよりも、明らかなそれらしいピストンに切り替えた。
尻に打ち付ける音さえ立てたければいいのだ。
……あぁ…あっ…あぁぁ…あっ…あっ…あぁ…あっ……
ワンピースの胸のボタンに男の指が触れる。
ひとつづつ外されていく。
インナーにしているキャミソールが引き上げられると、カップイン・インナーからいきなり乳房が露出する。
それを両手で包み、男は腰を使う。
そこに部屋のスライドドアをノックする音が聞こえる。咄嗟に返事をした男が、ちょっと待ってくださいと時間を稼ぐ。
僅か10秒ほどで二人とも身なりを直し、男は同僚の職員を出迎えた。
園長が先日行われたお花見を映したビデオを、お披露目するという。
忌々しそうにしながらも、おばあちゃんを車椅子に乗せる男。部屋を出る前に取られたままの下着を玲子は取り返した。
入居者、職員を食堂に集め、天井からスクリーンを降ろすところだった。ここは催し物も行う場所になっているようだ。
職員まで集まるとさすがに手狭になった。玲子の椅子も用意されたが丁重に辞退して、通路とを隔てる役目をする低い棚の後ろに立たせてもらった。
窓に遮光カーテンが引かれ、上映会が始まった。
この場を辞するタイミングを失い観賞したことを、玲子は後悔した。
諦めの悪い男が玲子の隣りに来たのだ。
ーーーあなたひとりを立たせるのは申し訳ないからね
白々しい………若い猿はしたい盛りらしかった。
スカートが上がる。下着をずらして、一度射精されて潤んだ膣はペニスを容易に飲み込んだ。
聴覚の衰えた入居者たちのために音声は大きい。
少々の声や音は相殺される、薄暗い闇に男女の営みが行われていることは、誰も気づかなかった。
スクリーンには楽しそうにおにぎりを頬張る人、桜と菜の花をバックに歌を歌う様子を見て笑いが煽る。
ワンピースの前を開け、腕を男の首に回した玲子が胸を吸われ体を揺らす。
腕を組んだ園長が指を指して、感慨深げに眉を下げる。
棚に肘を置き、胸と髪を揺らす玲子をひたすら犯し続ける男。
カオスだった。
誰かが振り向いたら終わる、そんなスリルさえも潤滑油になるというのか………
ついには通路に寝かされた玲子は正常位で体を揺らし、二度目の射精を終えた男のピストンを受けていた。
絶倫………この言葉は玲子にとって、もう珍しいものではなくなっていた。
……もう…やだ…は…やく……おかしくな……る………
無闇やたらに勢いのあるペニスに最上級の領域に達した快楽地獄。
3代目の射精が注がれても、玲子の膣はうねうねする動きが止まらなかった。
玲子の薄れゆく意識の片隅で、入居者たちの笑いが遠くのほうで聞こえていた。
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