玲子の部屋には訪問者がよく訪れる。
夏のこの時期になると色鮮やかな蝶々や、窓から入ってきたきたセミが壁にとまり、盛大に鳴くこともある。もちろん、丁重にお帰り頂いた。
びっくりさせられたのは、カブトムシである。
カーテンにいたのを発見したときにはゴキブリと勘違いをして、震える手に持つ殺虫剤を噴射するところだった。
クーラーがあまり得意ではない玲子は、開け放たれた窓からの風が好きなのだ。
………まったくもう…見てないで追い払ったらどうなの?
ちょこんと足元に座る猫に対し、腰に手を当てて不満を漏らさずにはいられない。
つい先月の昼下がりのこと。
玲子がうたた寝から目覚めると、ベランダから入って来たらしい一匹の猫が部屋にいた。
玲子に気づいても逃げようとするわけでもなく、堂々と昼寝を再開する子だった。
……きっと人と暮らしていたことがあるのね……
玲子は薄汚れたその猫が、昼寝から覚めれば帰えるだろうと、そっとしておいた。
だけど、待てど暮らせど一向に帰ろうとはせず、お腹が空いたと玲子に訴えだしたのだ。
……あなたのお家はどこなの?……困ったわね……
追い出すわけにもいかず、夕食用の鶏肉を茹でて裂いたものと、お水を猫に与えた。
空腹が満たされると優雅に毛繕いを始め、玲子お気に入りのクッションの上で寝てしまった。
翌日になっても出ていく気配を全く見せようとず、快適なこの部屋に居座る気満々だった。
とうとう根負けした玲子は猫グッズを取り揃え、動物病院で健康的診断を受けさせた。
ーーーん~3〜4歳の男の子ですね、虚勢済みですよ……放浪してた影響で痩せてるけど、血液検査も問題ないし…まぁ健康かな。ノミとお腹の中の寄生虫の駆除をしましょうか。
獣医師に太鼓判をもらって部屋に帰ると、剥離期間が明けるまで組み立てたケージの中にいてもらうことにした。不満を訴えられたが、寄生虫が落ちるまでは我慢してもらわなくてはならない。
今はで〜んとお腹を上に向けて、頼んでもいないのに玲子のベッドで一緒に寝ている。
猫は人間より体温が高い生き物である。
人が大好きらしく、玲子にべったりとくっついて寝てくれるのだ。
………嬉しいんだけどね、暑いのよ……
愚痴る玲子を見ても……知らにゃい…と言わんばかりに幸せを独り占めにする猫。
喉を鳴らす大爆音のゴロゴロを耳元で聞かされ、今夜も玲子は眠れぬ夜を過ごす………。
…………行ってくるね……夕飯までには帰るからね……
床に伸びて寝る毛むくじゃらに、外出と必ず帰る旨を語りかける。
彼を迎えてから外出先から帰宅すると、拗ねてご飯を食べてくれないことがあった。
あれこれと懸念事項を消去法で排除すると、残るは独りぼっちにされたことしかないと思ったのだ。
彼は部屋を移動する玲子の後を、どこでも後追いする猫だった。
最初は可愛くて仕方がなかった、それは独りよがりではないかと見方を変えて考えてみた。
甘えん坊な性格だが、聞き分けは良い子だ。
なのに部屋中をついて回る理由に思い当たって、胸が苦しくなってしまった。
恐らく彼は一度、捨てられている………。
また置いていかれる…捨てられる…そんな不安に襲われるのではないか、そう考えれば合点がいく。
以来、外出するだけで、必ず戻ると報告することが習慣になった。理解して安心したらしい彼は、寝ていても尻尾を動かして……あいよ!…と返事を見せるようになった。もちろん帰宅時に拗ねて見せるなんてことは、もうなくなった。
カランッ…コロンッ…カランッ…
浴衣を着た若い女の子が下駄を鳴らす。彼氏なのか、手を引かれて玲子の前を歩いていた。
左手には金魚の入った透明な袋とウチワが握られている。
アップにされた髪の毛が白いうなじを見せて、涼しげな浴衣がいなせである。
カップルが通り過ぎた後にオレンジ色が鮮やかな鬼灯の鉢を見つけた。
鬼灯の鉢の隣りには涼しげな朝顔の鉢も置かれ、玲子は思わず足を止めた。
ーーーおっ!?姉さん…鬼灯に目をつけるたぁ粋だねぇ〜
白髪を角刈りにした、法被姿の店主が声をかけてきた。
ーーー日本の夏はこういうのがいいやな………そこをいうと姉さん、こういう風流なのが分かるたぁいいねぇ……気に入った!…今の人はこんなのが分かんねぇのが増えていけねぇや……
江戸ッ子気質の店主に気に入られて、通り過ぎることが出来なくなってしまった。
そうとなれば玲子は、本腰を入れて物色を始めた。
ネイビーのワイドパンツを履いたお尻に手を当てて、すぅ~っと膝裏まで滑らせながらしゃがみ込む。
その形の良い尻に、斜めに切れ上がるショーツのラインが浮かび上がった。
長く楽しみたいならこっちだと、まだ青みの残る鬼灯を店主に進められ、玲子は購入した。
それにしても、今日は暑いな…………
ノースリーブのブラウスに汗が滲んで、白いシンプルなブラジャーが浮き出ていた。
バス停までを近道しようと商店街に差し掛かる。
急に人の数が増えてきたと思ったら、賑わいのある音が聞こえてきた。
玲子は身動きが難しくなった体を建物の前に寄せた。
すると笛や太鼓の音と共に、御神輿がこちらに向かってやってくるではないか。
威勢の良いかけ声が飛び交い、人々の熱気が一気に上がった。
………これの影響だったのね……
滅多に見られない光景だが、身体がだるくて楽しむ余裕もなく、早く涼みたい気持ちを抑えて通り過ぎるのを待っていた。
………わっしょいっ!わっしょいっ!わっしょいっ!
目の前を通り過ぎる御神輿を担ぐ法被姿の男達。
なぜだかそのかけ声が遠くに感じた。
呼吸が苦しくて、頭痛もする。
手足が痺れ、膝に力が入らなくなってきた。
視界が急に暗くなり、次に見えた光景は横になった地面と人々の膝から下の脚だった。
おいおい…女が倒れたぞ……
うだつの上がらない町の産婦人科医が偶然、倒れる玲子に気づいた。
神輿に興奮してみんな前を見て、誰も後ろの事態に気づく者はいなかった。
酒好きが災いし、赤ら顔の産婦人科医に足を向ける人がいなくなるのは当然である。
気晴らしに祭りを見に来て、貧乏くじをも引いた気分になっていた。
腐ってもそこは医者、見て見ぬふりはできなかった。
畑違いだが、熱中症なのは産婦人科医でも分かる。
点滴をして休ませれば回復するとみて、玲子を連れ帰ることにした。
診察台に寝かせ、点滴の処置をする。
今さら気付いたが、えらい美女ではないか。
酒が飲みたかったが、昨夜飲んでしまってもうない。
玲子の胸元を摘み上げ、中を見た。
シンプルな白いブラジャーが見える。
下から持ち上げられるようにして、乳房の盛りあがりが凄いではないか。
良からぬ思いが止まらなくなった。
中年男は受話器を耳にあてていた。
ーーーもう…かんべんしてくださいよ~
呼び出された男が開口一番に、泣き言を漏らす。
ーーーツケをチャラにしてやると言ったろ?
あれは持ってきたか?
呼び出された男は、中年男の後輩だった。
麻雀で散々負けて、借金が溜まっていたのだ。
それをチャラにする代わりにある薬剤を要求されたのだ、
ーーーまずいなぁ…まずいですよ…医師免許がなくなっちゃいますって…
泣き言を続ける後輩に、中年男は言った。
ーーーんじゃ今すぐ借金、払えほら
中年男は手を出して、後輩の顔の前でひらひらさせる。
ーーーわかりました…わかりましたよ……これっきりにしてくださいよ
中年男はしたり顔で言った。
ーーーじゃ、始めろや……お前しかできんからな
持ち出させた薬剤は、量を間違えられない。
間違えたら最後、考えたくもない結果になる。
だが、量を調節したら身体の自由を一時的に奪えるのだ。
ーーーもう知りませんよ?…ぼくのことはナイショにしてくださいよ
最後まで泣き言をいいながら、奇妙な泣き笑い顔で禁断の薬剤を投与していった。
ずいぶんと寝ていた気がする。
見慣れない天井が不思議だった。
平らなところに寝かされたはずなのに、身体が後ろに傾斜して下半身が開いていた。
玲子はハッとした………身体に力が入らない。
誰かがパンツを脱そうとしていた。
ーーーおぉ〜いいねぇ…サイドがヒモになってるじゃねぇか
玲子は腰骨の上を通るサイドが紐状になっているショーツを履いていた。
夏は薄手の服装になりがちなので、腰回りが特にタイトなパンツなら、横がすっきりしていたほうが綺麗に見える。
玲子は声をあげようとしたが、口も舌も上手く動かせないことに気付いた。
ーーーちっ!…目が覚めたか……おい、頼むわ
目隠しのカーテンが引かれた向日から誰かの指示する声がした。
いきなり目隠をされ、手首を縛られて固定されてしまった。
ーーーいいか?…じゃ、味見するか
中年男は玲子の下半身のそこに鼻を近づけて、鼻をわざわざ鳴らして匂いを嗅いだ。
ーーー洗ってないここの匂いは堪らんな……
中年男は我慢ならないといった感じで玲子の脚を片方づつ降ろし、ショーツを引き抜いた。
ーーーおいおい、またそそる濃さじゃねぇか………近頃は毛のない女が多くなったからな………こんな
いい女が………クリトリスも舐めがいがありそうだ
土手を左右に開き、また匂いを嗅ぐ。
臭い、我慢ならん!…独り言をいいながらしゃぶりつく……玲子の身体がピクリとした。
尿と汗、おりものの入り混じった芳香が鼻腔を貫く。
舌が割れ目を掻き分けて、通り過ぎると閉じていく。
塩味を楽しみながら、しっとり柔らかな粘膜と両側の壁の肉感を堪能させてもらった。
オーラルセックスにおけるメイン、クリトリスに取りかかる。
女性器を知り尽くした中年男は、見た目にそぐわずソフトに舌先を使った。
触れるか触れないか、繊細な攻め方に玲子の身体は準備を始めた。
徐々に膨張をはじめ、ぷるぷるした感触はツルンッとしたものに変わった。
玲子は論理的な思考が難しくなった。
部分麻酔でもかけられなければ、誰だって嫌でも感じてしまう。
せめてもの抵抗で呼吸を制御して、無理やり仕事のことを考えたが長くは保たなかった。
魅惑的な刺激に身体が反応し、足に力が入る。
視覚が奪われて、どうしても触覚に集中してしまう………だめだった。
中年男の舌が滑りを捉えた。
視界の隅で、足の指に力が入る様子が入ってくる。
舐めがいのある大粒が、舌先を押し返すような硬さを誇示する。
肛門に愛液が溜まり、小さな水たまりが現れた。
弄ぶのはこれぐらいにして、本格的に攻めることにした。
ーーー先輩、ぼくもいいですか?
後輩も、暴走をはじめる。
ーーーん?……なんだ、我慢できなくなったか?……
そっちで楽しめよ…
後輩は淫らな呼吸をする玲子を見て、ブラウスのボタンを外し始めた。
現れたブラジャーを上にずらすと、見るからにその気にさせる乳房がお目見えした。
白くてボリューミーな山には大きめの乳首が勃起して、見る者を誘っているように見える。
我慢できそうもなかった。
柔らかい乳房を自分のほうに寄せ、薄い茶色をした乳首を口に含んだ。
舌の動きに反発して動いてはすぐに戻り、ぷるぷると弾む。
舌を左右にスライドさせて、先端を愛撫する。
玲子が我慢しきれなくなったように、喘ぎ出した。
見えないカーテンの向こうから聞こえる水音に合わせ、反応を見せている。
呼吸する息が小刻みに震え、吐きだす息が苦しげに聞こえる。
切なげに出る玲子の声が、興奮に拍車をかけた。
いきなり玲子が胸を反らせ、口を開いた。
白い喉を見せ、顎を上げた。
ぷるぷると身体を震わせ、ゆっくり頭を振っている。
尋常ではない何かと戦っているようだった。
中年男は鬼頭の形をした濃いピンクの粒を惜しげもなく、ちゅうちゅう吸い込み舌を使った。
叩いてずらして擦って、強弱をつけて吸った。
薬剤の投薬量をびびって間違えたようだ。
もう腰が持ち上がっているではないか。
突然、顔に温かい液体が噴射されて、びっくりした。
そんなに気持ちいいなら、イッていただこう。
舌を押し当てて、細かくスライドさせる。
暴れる腰を押さえつけ、手を離さなかった。
ブリッジのように持ち上った腰が数秒ほど停止をし、力尽きたように落ちて、そのまま動かなくなった。
まだまだ楽しもうと思っていたが、我慢できなくなった。
年季が入ったペニスを取り出す。
赤黒く屹立して血管が浮かせ、カウパー汁を滴らせていた。
押し当てると拒絶され、体重をかけると少し埋没し………飲み込まれていった。
若い子でもないのに締めつけが思ったより凄い。
いや………普通じゃない。
絡みつくという表現そのままに、ペニスが抱きつかれるようではないか。
前に眠らせた女の子の中に入れたときも凄かったが、その比較にならない。
天国だった。
しゃぶる乳首が口から逃げた。
リズムを刻む揺れ方に乳房が波打つ。
始まったようだと思った。
次は自分だと、後輩は期待に股間を膨らませていた。
吸い付かれるような感覚に、早くも限界が近づいていた。
女が見たい、習慣で意味のない目隠しカーテンを引いてしまったが、それをどけた。
乱れる女の反応のしかたで、中の感じが露骨に変化する。
こんなに興奮させるいい女は久しぶりだった。
揺れる乳房を鷲掴みにして、突き入れる。
もう余裕なんか無い。
いい歳なのに、夢中になって必死に出し入れを繰り返した。
ーーーあっ………あっ……………むぅ~っ!!!
暴発という表現が正しい、そんな終わり方だった。
潔癖な後輩は、中に出す姿を見て諦めた。
数週間後、とある町の産婦人科医が無惨な姿になって発見されたと、そう風の噂に聞いた。
彼は謎の失踪をしていたらしい。
PTSDの診断を受けた彼は、人口肛門の手術を持ちかけられていて、頑なに拒否をしているという。
その後輩だと判明した男も失踪から同じように、数週間後の発見だったらしい。
彼は精神科に通った後、なぜか同性とラブホテルに入る姿を目撃されるようになったとか。
その真意は、誰にも言わないらしい………。
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