第4話 真実
彩香「…ただいまー!」
自分の身に起きたことを誰にも悟られないよう平静を装いながら帰宅した彩香は、家族に顔を合わせることなく、すぐに浴室に向かいシャワーを浴びた。
屈辱に流れる涙をシャワーで隠しながら、未だ破瓜の痛みが残る自らの膣内に恐る恐る指を入れてみる。粘液に汚れる膣壁をわずかに触れるだけで激痛を伴ったが、それに耐えて何度も何度も掻き出すように指を挿入し、自らの膣内にある精液の一滴も…精子の一匹すらも残さないつもりで無我夢中むがむちゅうで洗った。
男たちに舐められ唾液が付着した部分は、消えない嫌悪感からボディソープで何度も何度も入念に洗い、ペニスを舐めさせられた口の中も三度も四度も歯磨きをして、何度もうがいしてゆすいだ。
しかし…何度洗っても身体の嫌悪感は彩香の中から消えることは無かった。
次第に押し寄せる精神的疲労、肉体的疲労により、食欲も出なかった彩香は、浴室から出た後は夕食も食べずにすぐに布団に入った。
(なんで…こんな目に……。)
いつもの家、いつもの自分の部屋…そんな日常が、彩香に残酷な現実を突きつける。
昨日までの自分にはもう戻れない。
輪姦されたこと、健人を避けてしまったこと。彩香は考えれば考えるほど悲しくなり、悔しさで涙が止まらなかった。
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次の日…彩香は学校を休んだ。
小学生の頃からほとんど休んだことが無い学校を彩香自ら休むと言い出したことには母親もひどく心配した。
母親には体調を崩したと説明したが、理由はもちろん、輪姦されたことによる身体の痛みと、精神的な原因が最も大きかった。
さらに、脳裏に張り付いては離れない妊娠への恐怖から、彩香は生まれて初めて排卵日について調べ、昨日はかろうじて生理直前の安全日だったということを知る。
次の日には幸い生理が起こり、一旦妊娠の可能性は限りなく低くなったが、性の知識にはまだまだ乏しい彩香にとって、それはそんなに簡単に拭いされる不安ではなかった。
それから3日…彩香は学校を休み続けていた。
外は晴々とした青空が広がり、窓からは眩しいほどの太陽の光が差し込むが、彩香はその光から逃げるように布団に包まり休んでいる。
ふと、スマートフォンが耳元で鳴り、画面を開きメッセージを確認する。受信したメッセージの差出人の名前を見て彩香は恐怖に青ざめた。
佐野剛さのつよし
佐野という名前から、あの日自分を犯したリーダー格の男だということはすぐにわかった。
佐野(おい、大丈夫か?)
(こんなことされて……大丈夫なわけない!)
彩香は苛立ちと恐怖からすぐに画面を閉じようとするが、既読無視をして返信しないことを見透かされたように、受信したメッセージが続けて下に表示される。
佐野(そろそろ彼氏のチンコが恋しくなってきた頃だろ!)
彩香の頭には佐野という男の姿が嫌でも思い浮かび、苛立ちと気持ち悪さがこみ上げてくる。
これ以上メッセージを見たくない、今度こそ画面を閉じようと電源ボタンを押そうとした直後、画像データが届き、彩香はそれを不本意にも見てしまった。
それはあの日…おそらく佐野が撮影させた、彩香が処女を失った瞬間…。男たちに掴まれカメラから逃げるように顔を背ける姿、タオルで口を縛られているが激痛と恥辱から横に顔を逸らし俯く彩香の泣き顔、無残に床に放り投げられたセーラー服、乱雑に捲り上げられたシャツから露わになった両乳房を鷲掴みにされた瞬間や、2人の男に両脚を左右に無理矢理開かされ股間に茶褐色のグロテスクな肉棒が女性器を割り拡げるように突き刺さっている結合部、嗚咽しながら男性器を咥えさせられ、口元から垂らした唾液が糸を引いている凄惨な瞬間にいたるまで、あの日撮影された何枚もの鮮明な写真が編集され、一枚の画像に収まっていた。さらにその一枚一枚の写真には何やら落書きが施されており、「初体験!生中出し超気持ちよかった」、「おちんちんが大好き」、「初フェラ記念、精子大好き」、「セックスって超気持ちいい」、「もっと激しく突いて」、「彩香の中にいっぱい出して」などという、いくつもの見るにも耐えない猥雑な言葉が、まるでプリクラの落書きのようなポップでカラフルな文字によって書かれていた。
彩香は思い出したくもない行為の画像を一瞬見てしまったことで改めて自分が汚されてしまったことを再確認させられ、枯れるほど流したはずの涙が再び瞳から溢れ出す。
自分をこんな風にした憎むべき男と連絡など一切取りたくなかったが、画像によって脅された彩香は仕方なく佐野に返信をした。
(もう…やめてください!)
すると、すぐに佐野から返信が来た。
佐野(とにかく学校に来い!仮にオレを訴えでもしてみろ!この写真を学校中にばらまいてやるからな!)
返信を見た彩香は、学校に行くのがもっと憂鬱になった。佐野が自分と交際しているとでも学校で吹聴すれば、いずれは健人もそれを知ることになる。
(そんなの…耐えられない…!)
彩香はあまりの絶望感に、ただ落胆することしか出来なかった…。
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その日の夕方、自宅のチャイムが鳴り、家に一人だった彩香は具合の悪い身体を起こしてインターホンで訪問者を確認した。
彩香(け…健人くん!??)
慌てて髪を整え、パジャマの上にジャンパーを羽織って玄関を開けた。健人に会いたいという気持ちもあったが、何より素っ気なく帰ってしまったことを謝りたかった。
健人「おう!杉崎、体の具合…大丈夫か?」
彩香「うん…。健人くん…どうしたの?」
健人「いや、これ。家が近いから届けてやってくれって。」
健人は彩香が休んでいた間の配布物を持ってきてくれていた。
(謝らないと…。)
彩香「あの…!」
健人「あのさ…!」
彩香の言葉を遮るように、健人が話を始めた。
健人「ごめんな。帰るとき無理に呼び止めたりして。あの時にはもう具合、悪かったのか…?」
彩香「え?…なんで健人くんが謝るの?…私の方こそ…ごめん…。」
健人「杉崎こそなんで謝るんだよ…。あ、そういえば、バスケ部のマネージャーになったんだってな!」
彩香「…え?あ…うん。マネージャー、やってみようと…思うよ…。」
健人「杉崎はテニスやると思ってたんだけど…マネージャーが杉崎ならオレもカッコ悪い姿見せてらんないな!」
バスケ部のマネージャーになったことを嬉しく思ってくれているのか、健人は照れくさそうに笑っていた。だが、彩香は逆にそんな健人の無垢な笑顔を見るのが辛かった。
健人「それじゃあ、これで土日挟んで月曜日からマネージャーも部活に参加するようになるみたいだから、元気になったら来てくれよ。待ってるから!」
彩香「う、うん!一緒に…頑張ろうね!」
健人「おう!あ、でも無理はすんなよ!」
健人はそう言うと爽やかに手を振って帰っていった。
彩香は健人に元気と勇気を貰えたが、それと同時に、健人とはもう住む世界が変わってしまったような気がしていた。
もう…健人の後ろ姿を追いかけ、どんなに手を伸ばそうと届かない…彩香はそんな気がしてならなかった。
翌週の月曜日…。
彩香は約1週間ぶりに学校に登校した。
真希「彩香大丈夫??…心配したよぉ~!」
彩香「うん、ごめん!もう大丈夫だから…。」
彩香はあくまで平静を装って学校生活を送る。しかし常に頭に付きまとう佐野の存在に怯えていた…。
最後の授業が終わると、生徒達はそれぞれの部活動の準備を始める。
一度自分で決めたことは最後までやる。
中学生の頃から彩香はそうして、部活や勉強を頑張ってきた。それは悩んだ末に入部を決めたバスケ部のマネージャー職とて例外ではない。
一旦辛い経験を忘れ、なんとか気持ちを切り替えようと自分を鼓舞しながら体操着に着替えて体育館に向かった。新入生はもう部活に参加していたが、今日から彩香がマネージャーとして入部する予定だったため、この日に合わせて1年の新入部員は全員で自己紹介をする予定だった。
彩香が体育館に入ると、すでに練習が始まっていた。健人の姿もあり、彩香は無意識に目で追ってしまう。
マネージャーの彩香が来たことで一旦集合がかかると、彩香と共に新入部員達と上級生が整列し、新入部員が順番に自己紹介を始めた。
しかし…彩香はその瞬間、目を疑った。
自己紹介を始めた新入部員の中に、彩香にとって忘れたくても絶対に忘れられない人物がいた…。
(佐野…剛…!)
そう…彼もバスケ部の新入部員だった。そしてそれだけではない。あの日、彩香の姿をカメラを撮っていた男…薄暗い中でも鮮明にその男の顔を覚えていたが、その男も新入部員として整列していた。さらには…反対側に並ぶ上級生の中に彩香をニヤニヤと見つめる、忘れるわけがない2人の男…。彩香の頭の中に数日前の残酷な出来事がフラッシュバックする…!
全ては佐野の計画通りだった。
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それは入学式から数日後のこと…。
?「剛、あんた彩香のこと、どう思ってる?ヤリたい?」
佐野「はぁ?…まぁ…そりゃあみんなそう思うかもな。学園のアイドルみたいな女だからな…。」
?「フフッ…実はね?あたしいいもん持ってるんだ!」
佐野「ん?…!!…これは…!」
佐野は見せられた写真を思わず凝視した。それはあの杉崎彩香の排泄後の瞬間を撮影したものだった。
?「どう…?あんたがその気なら…くれてやってもいいよ。その代わり…徹底的にヤって!2度と立ち直れなくなるくらい…!」
佐野「…なんでお前はそこまで…?」
?「うざいんだよ。健人くんに近づくのが…。じゃあ、よろしくね…。」
こうして佐野は入学当初から美人で有名な杉崎彩香を脅し、屈服させることが出来うる盗撮写真を手に入れたのだった。
もともと中学からバスケ部に入っていた佐野だが、素行が悪くほとんど部活に行くことはなかった。
だが、彩香がバスケ部のマネージャーになることを知り入部を決めた。そして中学時代の先輩であり、悪友でもあった飯塚、増田の二人を、この計画に誘ったのだった。この二人もバスケ部員の端くれで、レギュラーには程遠い存在だった。
飯塚「こいつめちゃくちゃかわいいって有名になった女じゃねぇか!」
増田「お前、たまには良いもん持ってんじゃねえか!持つべきものは後輩だな!」
佐野「ええ!写真で脅してヤッちゃいましょう!それに聞いた話だとこいつ、マネージャーとしてバスケ部に入部するらしいっすよ!」
飯塚「お!マネで入ってくんのかぁ!…ってことはマジで一度脅してヤッちまえば、これからずっとヤりまくれるかもしれねえな!」
増田「そりゃいいな!よし!じゃあ佐野、早速その写真で誘い出せ!あともう一人、撮影役に誰か用意しろ!」
佐野「わかりました!」
そうして佐野は同じ中学の山本を撮影役に誘い、あの日の4人が揃ったのだった…。
彩香を犯した4人組…それが健人と同じバスケットボール部員だという衝撃の真実。
彩香の呼吸は早まり、めまいに襲われたように視界がグラグラと揺れるような感覚に襲われた。
それでも気をしっかりと保ち、なんとか佐野を含めた新入部員の挨拶を聴き終えると、最後に彩香の順番が回ってきた。
彩香「…杉崎彩香です…。マネージャーとして、少しでも皆さんのお役に立てるよう頑張りますので、よろしくお願いします。」
美人マネージャーの入部にバスケ部全員から拍手が巻き起こる。しかし、その喝采の拍手の中にはどす黒い拍手が混ざっていることを彩香は知っていた。
彩香を貶おとしめた張本人、佐野剛を始め、上級生の飯塚直哉いいづかなおやと増田将太ますだしょうた、撮影していた山本充やまもとみつる。
彩香を照らす光と、彩香を飲み込む闇。
光と闇の狭間で揺れ動く、彩香の高校生活が始まる。
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